place-then-trainモデルとは? 【就労支援のモデルとしてのトップダウンアプローチ】

障害を有する人の就労支援を行う際、大きく分けると…

  • A:きちんとトレーニングを踏んだ上で就職する
  • B:就職をしてから必要なスキルをトレーニングしていく

…という2つの方法が考えられます。

要は“ボトムアップ”か“トップダウン”のどちらのアプローチかということです。
でも、結論から言えばBのトップダウンの方法が有効とされています。

これが今回のテーマである“place-then-trainモデル”と呼ばれているアプローチ方法になります。
本記事ではこの“place-then-trainモデル”について解説します。

place-then-trainモデルとは?

“place-then-trainモデル”とは、日本語に訳すと「早く現場に出て仕事に慣れる」になります。
つまり…
迅速に本人の好みや長所(ストレングス)を活かした職場に就職して、そこで必要となるスキルをトレーニングしたり、サポートを継続的に提供する就労支援のモデル
…ということです。

ちなみに、反対の意味である「保護的環境でトレーニングをして準備性を身につけてから就職する就労支援のモデル」は“train-then-placeモデル:早く現場に出て仕事に慣れる”になります。

“train-then-placeモデル”のエビデンスについて

そもそも、過去に考えられていた職業リハビリテーションの段階論的アプローチの方法である…

  • 症状がよくなってきてから就労につなげる
  • 職業前訓練を実施して、職業準備性が整ってきてから就労につなげる

…という“train-then-placeモデル”の考え方にはエビデンスがないと言われています。

つまり、職業前訓練を実施したからといって、それが就労達成率の向上には必ずしも影響しないということになります。

その理由としては…

  • そもそも、練習の場では意欲的になれない
  • 訓練メニューがニーズに合わないことが多い
  • 訓練で得たスキルを汎化しにくい

…などがあげられます。

こうして言われてみれば当たり前です。
でも、なぜかこの間違った方法が現場では当然のようにされていたのも悲しい事実です。

現在は“place-then-trainモデル”が主流

現在の職業リハビリテーションの考え方の主流としては、“place-then-trainモデル”になっています。
つまり、就労前のトレーニングはできるだけ最低限のものにし、まずは就職したうえで必要なスキルやトレーニングを積んでいく…という方法が有効とされています。

これに関して、個別就労支援(Individual Placement and Support:IPS)のモデルで有名な“Becker”によれば、施設内での職業前のアセスメントやトレーニングは次のような危険性を伴うとしています。

  • 本人の仕事へ取り組む意欲を減退させる
  • 適職を見つけ出すことの弊害となることがある

そのため、職業前のトレーニングは最小限にすることを推奨しています。
その上で、短期間や短時間のパートでも、一般雇用に就き、様々な仕事に従事することでこそ、仕事内容や自らの適性、何に興味を持っているかという関心、そしてニーズを知り得ることとなり、効果的であるとしています。

“train-then-place”と“place-then-train”の比較

両者のモデルの違いについて比較してみると、次のようになります。

  train-then-placeモデル place-then-trainモデル
依拠するモデル 医学モデル リカバリーモデル
一般就労への見方 ストレス源となる リカバリーの重要な要素
成果への期待 悲観主義的(おそらくだめだろう…) 楽観主義的(きっとうまくいく…)
対象者の除外規準 基本的生活習慣などの職業準備性が必要 除外規準はない(きぼうすればすべて対象となる)
アセスメント 広範な職業前アセスメント 職場で必要とされるスキルのアセスメント
アセスメントの視点 「できないこと」に着目 「できること」に着目
職場開拓 協力事業主などの都合を優先 利用者の好みに合わせたオーダーメイド

そうは言っても、「すぐに就職は怖い…」という意見に対して

就労前のトレーニングを長期間行うよりも、就職したうえで必要なスキルをトレーニングしていく“place-then-trainモデル”が有効ということは理解できたかと思います。
でも、そうはいっても、「すぐに就職するのは不安…」という意見も多く聞かれます。

“place-then-trainモデル”で重要なことは…

  • 就労前のトレーニングは最低限であること
  • 本人の好みや長所を明確にしておくこと
  • それらを活かせる職場環境下に置くこと
  • サポートを継続的に提供すること

…になります。

なにも準備をしないまま「すぐに就職をするべき!」ということではありません。
就労前の訓練は、最低限の準備程度に留めておき、自分の長所を生かせる環境に就職することが重要…という解釈になります。

職業前訓練を実施する際の注意点について

実際、就職をしてその環境で様々なトレーニングをしていくことは、雇用先の環境や状況もあるため難しい場合も多いかと思います。
ここでは、就労前の訓練をする際の注意点について解説します。

注意点としては…

  • 訓練の目的の明確化と長期化させない工夫
  • 実際の業務につながるトレーニング
  • スキルを汎化しやすいような環境の調整と開拓

…があげられます。
以下に詳しく解説します。

訓練の目的の明確化と長期化させない工夫

人はどうしても練習の場では意欲がわきにくく、訓練期間中はモチベーションが下がってしまうことが多くあります。
そのため、しっかりといま行っている訓練の目的を明確にすることと、必要以上に長期化させない工夫をすることが重要と言えます。

実際の業務につながるトレーニング

就労支援の訓練メニューやプログラムは様々な種類がありますが、実際に職場で必要となるスキルにつながらないということも多くあります。
実際に行うであろう業務で必要になるスキルを身につけれるような、多様かつ柔軟性のあるプログラムメニューとすることが重要です。

スキルを汎化しやすいような環境の調整と開拓

統合失調症のような、身につけたスキルを汎化しにくいという障害特性を持つ場合、なるべく早く実際の環境でそこで必要となるスキルをトレーニングできるように、環境を調整・開拓することが必要になります。

訓練場面で見える能力や可能性を考える

人間の潜在能力は固定したものではなく場面状況などによって変化するものです。
そのため、特定の仕事に必要となるスキルを別の環境で予測することは非常に困難とされています。
訓練場面でのアセスメントやトレーニング効果は、あくまでもその人の1つの側面にすぎず、それがすべてだと勘違いしないことが重要です。
そして、他の潜在能力や可能性を持つことを考え、見つける工夫も必要となります。

まとめ

本記事では、就労支援の方法の一つである“place-then-trainモデル”について解説しました。

“place-then-trainモデル”はあくまで就労支援のモデルですが、ADL訓練やAPDL訓練でも同じことが言えます。
作業療法で行う支援は、基本的にトップダウンアプローチを軸とすることから、この“place-then-trainモデル”に沿った方法が有効だと思うんです。

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