睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?【診断基準や症状、検査方法などについて】

社会的な問題にもなっている睡眠時無呼吸症候群(SAS)。
健康生活の支援を考えるうえではこのSASもリハビリセラピストである作業療法士にとっては支援対象だと考えています。

そこで今回は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の…

  • 診断基準
  • 潜在患者人口
  • 好発年齢
  • 発生機序
  • 症状や合併症
  • 検査方法
  • 治療方法

…などについて解説します。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に何回も呼吸が止まり、ぐっすり眠ることができない病気です。

  • 大きないびき
  • 起床時の頭痛
  • 夜間の呼吸停止
  • 日中の強い眠気

…などの症状があります。
また就寝中のことなので、本人自身には自覚がないのが特徴です。

2003年2月26日の山陽新幹線での居眠り運転から世間的に認知度が広まったと言われています。

略語について

睡眠時無呼吸症候群は英語で、「Sleep(睡眠時) Apnea(無呼吸) Syndrome(症候群)」
…通称“SAS”と略されます。

診断基準

SASの診断基準ですが、
10秒以上続く無呼吸が7時間以上の睡眠中に30回以上もしくは睡眠1時間に平均5回以上起こること
…とされています。

原因により3タイプに分けられる

同じSASでもその原因によって3つのタイプに分けられます。

  • 閉塞型:空気の通り道である上気道が閉塞する
  • 中枢型:呼吸中枢の一過性の活動停止による
  • 混合性:無呼吸のはじめは中枢型、次に閉塞型

以下に解説します。

閉塞型

上気道の閉塞により気流が停止するものです。
無呼吸でも胸や腹の動きは認められ、いびきも生じます。
SAS患者の多くはこの閉塞型SASになります。
太った人に多いと思われがちですが、日本人の特徴である…

  • 短く平らな顔
  • 小さなアゴ
  • 喉が咽頭近くにある

…などにより起こることも多いようです。

太っていないから大丈夫…とはいえないんですね。

中枢型

脳からの呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の機能異常によるもので、SAS患者の数%といわれています。
閉塞性SASとは異なり気道は開存していますが、胸や腹の呼吸努力がみられません。

原因はさまざまですが、心臓の機能が低下した方に多くみられるとされています。

混合型

閉塞型、中枢型が混合しているものです。
中枢型の無呼吸からはじまり、次いで閉塞型に移行するのが特徴です。

好発年齢

SASは、男性では40~50歳代が半数以上、女性では閉経後に急増するというデータがあります。

潜在患者人口

SASの潜在患者は人口の2~3%といわれており、約200万人いるようです。
また男性3.3% 女性0.7%というデータから男性の方が多いとされています。

日中の眠気などの症候を認める割合

また、SASをはじめとする睡眠障害で日中の眠気などを感じる割合としては男性11.2% 女性2.0%というデータがあります。

重症度について

睡眠中に10秒以上呼吸が止まることを「無呼吸」といい、呼吸が浅くなることを「低呼吸」といいます。
SASの定義は一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間あたりの無呼吸や低呼吸が5回以上の場合を言います。
また睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計をAHI(無呼吸低呼吸指数)と呼び、この指数によって重症度を分類します。

無呼吸低呼吸指数(AHI)

重症度 正常 軽症 中等度 重症
無呼吸・低呼吸数/時 0~4回 5~14回 15~29回 30回以上

SASの発生機序

では、このSASはどのような原因で発生するのでしょうか?
その原因、発生機序としては…

  • 機能的異常
  • 形態的異常
  • …の2つに大きくわけられます。
    それぞれ解説します。

    機能的異常

    機能的異常を原因とした場合…

    • 上気道開大筋の緊張低下:飲酒、睡眠薬服用、脳障害など
    • 口呼吸による口腔内乾燥

    …があげられます。

    形態的異常

    形態的異常を原因とした場合は…

    • 肥満による上気道軟部組織への脂肪沈着
    • 扁桃肥大、口蓋垂肥大、巨舌
    • アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、咽頭炎など
    • 頭蓋顔面骨の形態
    • 体位:仰臥位、頚部の屈曲

    …があげられます。

    睡眠時無呼吸症候群の症状について

    SASによる症状ですが、覚醒時と睡眠時それぞれに以下のような症状がみられます。

    覚醒時

    • 日中の眠気、記憶力、集中力低下
    • 起床時の頭痛・頭重感
    • 性格変化・抑うつ状態
    • 性欲低下、ED
    • 全身倦怠感

    睡眠時

    • 交互に繰り返されるいびきと呼吸停止
    • 体動(無呼吸関連)
    • 不眠・中途覚醒
    • 夜間頻尿

    …これらは代表的なSASの症状とされています。

    合併症

    上記の症状はSASが原因のいわゆる直接的な症状ですが、以下のような合併症を併発するリスクも高まることがわかっています。

    • 起床後の頭痛
    • 脳卒中
    • 突然死
    • 夜間不整脈
    • 狭心症
    • 胃食道逆流炎
    • 高血圧
    • 多血症
    • 右心不全
    • 頻尿
    • 性的不能(ED)
    • 知的機能低下
    • 異常行動の頻発
    • 糖尿病
    • 高TG血症
    • 高尿酸血症

    SASによる睡眠中の低酸素血症や高炭酸ガス血症は、生活習慣病と密接な関係があるため、このような合併症を高率に引き起こすことになります。

    睡眠時無呼吸症候群のリスクについて

    SASは決してそれ自体が直接的に命を奪う病気ではありません。
    しかし、放っておくと高血圧や心臓循環障害、脳血管障害などの重篤な障害を引き起こすリスクが高くなります。
    また、日中の眠気などのために仕事に支障をきたしたり、居眠りによる事故の発生率を高めたりするなど、社会生活に重大な悪影響を引き起こします。

    睡眠時無呼吸症候群と生命予後について

    研究データによるSASとそれをきっかけに引き起こす障害のリスクの確立についてですが、

    • 虚血性心疾患:健常者の約3倍
    • 脳血管障害:健常者の約4倍
    • 高血圧症:健常者の約2倍
    • 糖尿病:健常者の約1.5倍

    …という報告があります。

    睡眠時無呼吸症候群と交通事故

    最近では、SASが関連する交通事故や居眠り運転が原因の交通事故がマスコミ等でも多く取り上げられています。
    改正された道路交通法では、自動車の運転に支障を及ぼす恐れがある病気として免許の拒否ないし取り消し等の事由となる疾患の中に「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」が含まれていることからも、社会的な問題としてSASが扱われ始めていることがわかります。

    ちなみに、SASが関連する自動車運転障害のリスクの割合ですが…

    • 運転中の眠気:健常者の約4倍
    • 居眠り運転:健常者の約6倍
    • 交通事故:健常者の約7倍

    …という研究データがあります。

    危険ないびきについて

    SASの代表的な症状のひとつである“いびき”ですが、その特徴としては…

    • 仰向けになると大きくなる
    • 強弱がある
    • 最近急に大きくなり音も変わった
    • 朝までずっと続く

    …があげられます。

    習慣性いびき症の人口

    SASの診断はつかなくても、習慣性いびき症といわれる段階の人口は約2000万人というデータがあります。
    男女の割合としては、男性24.6% 女性5.1%というデータからも明らかに身近な問題であることがわかります。

    SASの治療に至るまでの人は少ない?

    また、このうちSASと診断される人が約300万人、治療に至るまでの人でも6万人程度とされています。
    潜在患者人口が非常に多い反面、本人に自覚症状がないこと、現時点で早急な治療対応の必要性を感じにくいことからも治療段階に至るまでの人が圧倒的に少ないことがわかります。

    睡眠時無呼吸症候群の検査から治療までの流れ

    では、実際にSASの検査から治療までをどのような流れで行うのでしょうか?
    おおまかには、

    • 1.問診、スクリーニング
    • 2.基本的な検査(簡易型による自宅検査)
    • 3.確定診断(精密型による入院検査)
    • 4.検査結果により治療法の決定
    • 5.治療の効果判定検査

    …の流れで行います。

    1.問診、スクリーニング

    問診では、自他覚症状や同室者(ベッドパートナー)からの指摘の有無、眠気評価(ESS)を使用して現在の睡眠の状態把握を行います。
    また、咽頭所見として、扁桃肥大、口蓋垂肥大、巨舌の有無もみるようです。

    ESS(エプワース眠気尺度)では、以下の8つの状況での眠気を0~3の4段階で評価します。

    • 座って読書しているとき
    • テレビを見ている時
    • 会議や劇場などの公の場で座って何もしていないとき
    • 1時間続けて車に乗せてもらっている時
    • 状況が許す場合で、午後に横になって休息をとっているとき
    • 座って人と話しているとき
    • アルコールを飲まずに昼食をとった後、静かに座っている時
    • 車を運転中、交通渋滞で2~3分停止しているとき

    合計点が11点以上の場合は日中の眠気が強いと考えられます。

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    2.基本的な検査(簡易型による自宅検査)

    次に、スクリーニングとしての基本的な検査を行います。
    この基本的な検査では…

    • パルスオキシメータ:酸素飽和度の低下測定
    • 簡易睡眠検査:鼻呼吸による呼吸状態、酸素飽和度の低下測定

    …を行います。
    この検査は簡易型の検査機器をレンタルし、自宅で行う場合がほとんどのようです。

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    3.確定診断(精密型による入院検査)

    1.問診、2.基本的な検査を経て、その結果によっては終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)による確定診断のため1泊入院による検査を行います。

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    4.検査結果により治療法の決定

    1泊入院による終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)の結果によって、今後の治療方針を主治医と検討していきます。
    その治療法はSASの重症度によって口腔内装置を使用する場合やCPAP療法での対応など様々になります。

    もちろん生活習慣の改善も同時に行っていかなければなりません。

    5.治療の効果判定検査

    SASの診断後、口腔内装置でもCPAP療法での治療でも、定期的に受診をし、治療の効果判定を行います。
    CPAP療法に関してですと、毎月の受診で主治医から睡眠状態のデータ、眠気の状態、体調について、健康管理についてなどのアセスメントを行います。

    …おおまかなですが、ここまでがSASの診断から治療までの流れになります。

    睡眠時無呼吸症候群の治療について

    SASの治療についてですが、どのようなものがあるのでしょうか?

    現在国内で行われているSASへの治療法としては、

    • CPAP療法
    • 手術的治療法:アデノイド、扁桃肥大のあるSAS 手術成績は大規模研究が少なく検討が必要
    • 口腔内装置(OA):軽症~中等症のSASに有効
    • 生活習慣の改善:減量、側臥位での就寝、アルコール・睡眠薬の禁止
    • 増悪因子の除去:鼻閉に対する薬物、手術治療
    • 薬物療法:無効

    …などがあげられます。

    CPAP療法

    CPAPとは持続用圧呼吸療法でSAS、特に閉塞性SASの治療として先行的に選択される“鼻マスク式持続用圧呼吸”を利用した呼吸療法になります。

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    手術的治療法

    SASに対しての手術的治療法ですが、上下顎前方移動術や軟口蓋形成術、扁桃腺摘出術などがこれにあたります。
    アデノイドや扁桃肥大といった形態的異常を原因としたSASに適用されますが、国内での手術成績は大規模研究が少なく検討が必要とされています。

    口腔内装置(OA)

    SASに対しての口腔内装置(OA:oral appliance)は、下顎を前方に移動させ、舌根部での気道の拡大を図り無呼吸を軽減させる治療法です。
    軽症~中等症のSASに有効とされています。

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    生活習慣の改善

    SASの機能的、形態的異常を起因とする面からみても、生活習慣の改善は必須となります。
    体重の減量による肥満の改善、アルコール・睡眠薬の禁止といったものから、仰臥位ではなく側臥位での就寝環境の調整なども行われます。

    薬物療法

    SASに対しての薬物療法は現在のところ無効とされています。

    睡眠時無呼吸症候群に関するよくある疑問

    ここでは睡眠時無呼吸症候群に関するものでよくある疑問について解説します。

    無呼吸になりやすい人の特徴って?

    SASになりやすい人の特徴としては、一般的に…

    • 大きなおなか
    • 小さな顎
    • 短い首

    …といったものがあげられます。

    肥満だと無呼吸患者になりやすい?

    前述したように、たしかに肥満傾向の人は上気道の軟部組織への脂肪新着が原因で無呼吸を起こしやすくはなりますが、
    3割は肥満が原因ではないため、無呼吸=肥満とは絶対的には言えないようです。

    まとめ

    そこで今回は睡眠時無呼吸症候群(SAS)について解説しました。

    社会問題ともなっているこの睡眠時無呼吸症候群ですが、その原因や治療、改善方法などをみても作業療法士や理学療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションセラピストが支援することで改善できる例が増えるような印象を持っています。
    SASの症状や合併症をみても、様々な身体的、精神的疾患と相関性があるので、改めてその改善方法も見直される必要があると考えています。

    睡眠の時間はもちろん、睡眠の質の重要性も高いからね!
    生活の質にもつながることだから、セラピストが支援する分野とも言えますね。

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