作業療法士の強みの一つとして“作業分析”があります。
でも上手に臨床で使っている作業療法士は少ないんじゃないでしょうかね?
養成校の教育プログラムでも“基礎作業学”で習うのですが、案外使えてなかったりします。
今回はこの作業分析の目的や方法、そして動作分析や活動分析との違いについて考えてみます。
そもそも作業分析とは?
作業分析を英語でいうと…
- work analysis
- operations analysis
…などが意味としては当てはまります。
定義について
ではまず、作業分析の定義について考えてみます。
“基礎作業学”の教科書には…
作業分析とは、作業と人間の作業行為を生物的、心理的、社会的、文化的関係のなかで、構成する要素に分け、またその相互関係を明らかにするプロセス
…とあります。
作業分析は作業療法士の専売特許?
作業療法士は…
作業分析を活用することで、クライアントが願う作業への思いやニードと、それを妨げる障害や課題を取り除き、実際にその個人が持つ能力を上手に結び付ける
…ということに貢献できる職業と言えます(回りくどいかもしれませんが)。
これは様々な国家資格において、作業療法士のみの強みでもあり、専売特許ともいえる特質です!
作業分析の目的
では、そもそも作業分析を行う目的ってなんでしょうか?
教科書的には…
作業の持っている多面的な特徴とそれが健康にどのような影響を与えるかについて、作業と人間の作業行為を生物的、心理的、社会的、文化的関係のなかで、構成する要素に分け、またその相互関係を明らかにすること。
引用:基礎作業学
…とあります。
つまり、食事や更衣、入浴動作といったADL動作から、料理や掃除、洗濯といったAPDL動作、さらには編み物やスポーツ、釣りや旅行といった趣味や余暇活動といったあらゆる“作業”を、それを構成する各要素それぞれに分けたうえで分析をしていく…のが作業分析の基本であり目的といえます。
包括的、限定的作業分析について
作業療法士による臨床的な作業分析については、大きく分けると…
- 包括的作業分析
- 限定的作業分析
…の二つに分ける事ができます。
包括的作業分析とは?
包括的作業分析とは…
その作業それぞれの特徴を分析し、それを理解する方法であるOTが教育の中で発展してきた基本的な技能。
…という特徴になります。
ただし、この包括的作業分析を行うには、その作業がどんな作業であれ非常に分析項目が多く、臨床で使用するためには広範囲すぎて実用的ではない…との意見もあるようです。
ちなみに対象は特別な治療目標やクライアントを想定していないってのも特徴です。
限定的作業分析とは?
また、限定的作業分析とは…
作業のある特別な側面(神経発達学的治療アプローチor感覚統合的アプローチ)を強調し、その強調された各側面の理論的立場によって分析法が異なる方法で、作業療法の臨床のなかで発展してきた方法。
…という特徴になります。
つまりこの限定的作業分析を行うには、分析する対象の作業についてはもちろん、その分析法である理論的治療について熟知していて、かつその治療技術を持っている…ということが前提となります。
対象は特別な治療目標やクライアントを想定しているという点からも「臨床的」な作業分析と言えます。
活動分析、動作分析、課題分析との違いは?
作業分析を考えていくにあたって…
- 活動分析
- 動作分析
- 課題分析
…との違いについても疑問がでてきます。
なんだか似たような意味合いですから、改めて考えてみます。
活動分析
活動分析は英語では“activity analysis”と呼ばれています。
作業療法業界での活動分析っていうと環境適応やボバース寄りの領域の印象を受けますが、そもそもはクライアントのその活動が物理的および時間的な観点から目標を達成できるかどうかを分析していく…と解釈しています。
その要素も身体機能、精神機能、感覚といったものがあげられます。
動作分析
動作分析は英語では、“motion analysis”になります。
理学療法士による歩行分析は、動作分析のひとつに位置するでしょうね!
課題の作業活動をそれを構成する“動作”に分析し、相互関係を明らかにしていくこと…と言えます。
課題分析
課題分析は英語では“task analysis”になります。
作業療法における課題分析とは、クライアントが決定した目標に対しての弊害因子(=課題)を本人の能力、取り巻く環境などの要素に分け、分析していくこと…と解釈しています。
ただMTDLPやケアマネのケアアセスメントにおける“課題分析”もあるのでかなり広義の解釈です。
作業分析の歴史について
ちなみに、この作業分析の歴史的背景についてですが、どうやら過去に『作業療法は科学か?』という医学界からの批判に対して“還元的主義的方法論”を用いて「科学的装い」を凝らした時期に取り入れられた方法…が作業分析のようです。
なんだか小難しい話になるので詳細はまた別の機会にまとめることにしますが、ざっくり言うと…
医学界に「作業療法は医療的行為だ!」って主張するために科学的な作業分析を取り入れてみた!
ってことって現段階では解釈しています(…あくまで個人的にですけど。。)
ただ、この作業療法を科学的にするために作業分析を取り入れた結果、臨床で大事な個別性、多様性、主観性を無視してしまいがちな要素を無視してしまうことになり、“作業療法士という専門職としてのアイデンティティの喪失”を招いてしまった、、、という歴史的なミスもあったようです。
もちろん現在での作業分析、作業科学の分野ではクライアント個人の特性をしっかり踏まえた上で行われているので、歴史的な失敗の上で改善された分野なんでしょうね!
まとめ
今回は作業分析の目的や方法、そして動作分析や活動分析との違いについて解説しました。
少ない資料を基に調べながら記事を執筆したので、非常に個人的な解釈が入っていますのでご了承ください。
ただ多くの作業療法士がなんとなく無意識で行っていた作業分析を、その用語や背景といった点からもしっかりと把握し顕在化することで、改めて臨床に役立てることができるのだと思います。
作業分析は作業療法士の持つ特性であり、強みでもあるのですから!!!