WMFT(ウルフ・モーター・ファンクション・テスト) – 目的・項目・方法・採点について

用語

ウルフ・モーター・ファンクション・テスト(WMFT)は、脳卒中や上肢障害を持つ患者の運動能力を評価するための標準化されたテストです。
本記事ではその目的・項目・方法・採点について解説します。

WMFT(ウルフ・モーター・ファンクション・テスト) とは?

WMFT(ウルフ・モーター・ファンクション・テスト)は、上肢機能を評価するためのテストで、15の課題(運動6項目・物品操作9項目)から構成されています。
各課題の遂行に要した時間を測定し、その合計を最終得点として扱います。

また、動作の質についてはFunctional Ability Scale(FAS)を用いて各項目について6段階(0~5)で評価し、その合計点を最終得点とします。
得点が高いほど上肢運動機能が高いことを示します。

このテストは、CI療法の前後で上肢機能を評価する目的で開発され、臨床や研究の場で広く使われているね!

目的

WMFTの主な目的は、時間を計りながら実用的な動作を行うことで、腕の動きの能力を測ることです。
このテストは、特に脳卒中を経験した人や腕の動きに問題がある人の動きの能力を評価するために使われます。

WMFTは、患者がいくつかの特定の動作をどれくらい上手に、そして効率的にできるかを測るために作られています。
これにより、患者の回復の進み具合や治療の成果を知ることができます。

対象

WMFTの対象は、主に以下の二つのグループになります。

  • 脳卒中を経験した人々: 脳卒中により影響を受けた上肢の運動能力を評価し、リハビリテーションの進行を追跡するために使用されます。
  • 上肢機能障害を持つ人々: 事故や病気などにより上肢の動きに制限や障害がある人々の動作能力を測定するために使用されます。

必要な時間

約30-35分とされています。

検査項目

WMFTの検査項目は以下の15項目になります。

  • 前腕を机へ:肩の外転を用いて前腕を机の上に乗せる。
  • 前腕を箱の上へ:肩の外転を用いて前腕を箱の上に乗せる。
  • 肘の伸展:肘を伸展させ机の反対側へ手を伸ばす。
  • 肘の伸展・負荷あり:肘の伸展により重錘(450g)を机の反対側へ移動させる。
  • 手を机へ:机の上に麻痺手を乗せる。
  • 手を箱の上へ:箱の上に麻痺手を乗せる。
  • 前方の引き寄せ:肘や手首の屈曲を用いて机の反対側から重錘(450g)を引き寄せる。
  • 缶の把持・挙上:開封していない缶(350ml)を円筒握りにて口元まで挙上する。
  • 鉛筆の把持・挙上:鉛筆を3指つまみでつまみ上げる。
  • クリップの把持・挙上:クリップを2指つまみでつまみ上げる。
  • ブロックの積み重ね:ブロック(コース立方体組み合わせテスト)を3つ積み上げる。
  • トランプの反転:3枚のトランプを1枚ずつ指尖つまみで裏返す。
  • 鍵の操作:鍵穴にさしてある鍵をつまんで左右に回す。
  • タオルの折りたたみ:タオルを4分の1に折りたたむ。
  • 重錘の持ち上げ:椅子に置かれた重錘(1kg)の輪をつかんで持ち上げ側方にある台の上に置く。
オリジナル版では21の活動が含まれていましたが、現在広く使用されているバージョンでは17項目に縮小されているんだ!
日本語版ではさらに縮小した15項目で標準化されているんですね!

方法

WMFTの実施方法として、ここでは…

  • 評価の机の設定
  • 被検者の準備
  • 実施方法の説明とデモンストレーション
  • 計測の開始
  • 課題遂行中の声かけ
  • 計測ミスの対応

…について解説します。

評価の机の設定

評価に使用する机は高さ70cmに設定します​​。
検査を実施する際には、標準化された環境を整えることが重要です。
机の高さを一定にすることで、課題を実施する際の被検者の体位や動作範囲が一定に保たれ、正確な評価が可能になります。

被検者の準備

被検者が長袖を着用している場合は、上腕部まで袖をまくります​​。
袖をまくることで、上肢の動きが制限されず、また検査者が被検者の肢位や動作を明確に観察できるようになります。これにより、より精確な評価が行えるようになります。

実施方法の説明とデモンストレーション

実施方法を口頭で説明した後、デモンストレーションを行います(各課題2回まで)。
注意が向いていない場合は、3回目の説明を行います​​。
被検者に対して、課題の実施方法を明確に理解してもらうことが必要です。
口頭説明とデモンストレーションを行うことで、被検者が課題の要点を把握し、正確に実施できるようになります。

計測の開始

「よーい、どん」の掛け声で計測を開始します。
フライングした場合は、やり直しをします​​。
正確な時間計測はWMFTの重要な部分です。
一貫したスタートの合図を使用することで、被検者は課題の開始タイミングを明確に認識でき、一定の条件下で課題に取り組むことができます。

課題遂行中の声かけ

被検者が課題を遂行している間、10秒に1回のペースで「あきらめないで、いいですね、がんばって」と声をかけます​​。
課題遂行中の被検者に対する励ましやサポートは、モチベーションを維持し、最善の努力を引き出すために重要です。
このような声かけは、被検者が課題に集中し、最大限のパフォーマンスを発揮するのを助けます。

計測ミスの対応

評価者が計測を誤った場合は、やり直します​​。
時間計測の正確性はWMFTの信頼性に直接関連します。計測ミスがあった場合には、課題を再度実施することで、正確かつ公平な評価を保証します。
これらの手順はWMFTを実施する際の基本的なガイドラインを提供し、検査の標準化と正確性を確保するために重要です。

採点

WMFTの採点は…

  • 各課題の遂行に要した時間
  • Functional Ability Scale(FAS)を用いた6段階評価

…になります。

各課題の遂行に要した時間

それぞれの課題に必要な時間を記載します。
120秒かかる場合や動作が不可能な場合は中断し、120秒として記録します。

Functional Ability Scale(FAS)を用いた6段階評価

またWFMTは各課題に対しての動作の質をFASを使用してスコアリングします。

  • 0点: 被検者が全く動かせない場合。
  • 1点: 機械的に動かすことは困難だが、随意的な動きが見られる。片手で行う課題でも、健側の支持が相当量必要な場合。
  • 2点: 課題の参加は可能だが、動きの微調整や肢位の変更には健側による介助が必要。課題は完結であるが、動作スピードが遅く、120秒以上必要。両手で行う課題では、健側の動きを補助する程度の動きが可能な場合。
  • 3点: 課題の遂行は可能だが、痙性の影響が大きい、動作スピードが遅い、あるいは努力性である場合。
  • 4点: ほぼ健常に近い動作が可能だが、動作スピードがやや遅く、巧緻性の低下、動線の拙劣さが残存している場合。
  • 5点: 健常に近い動作が可能な場合。
このスコアリングシステムは、被検者の上肢機能のレベルを詳細に評価するために使用され、各課題の実行能力を定量化するんだ!
低いスコアは、限定的な運動能力または機能的な参加の難しさを示し、高いスコアは、より正常に近い動作の能力を示すんですね!

関連文献

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

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