障害を有する人への就労支援事業の一つとして、『就労継続支援B型』があります。
でも実際には深く関わっている人でない限り、どんなところなのかはっきりとわからない場合が多いようです。
そこで今回はこの就労継続支援B型の特徴や対象、作業内容から平均工賃について調べてまとめてみました。
就労継続支援B型とは
“就労継続支援B型”とは…
一般企業に雇用されるのが難しく、かつ雇用契約による就労が困難な障害を有する人に就労機会を提供し、生産活動を通じて知識や能力の向上に必要な訓練といった障害福祉サービスを提供することを目的としている就労支援
…になります。
以前は「福祉工場」なんてよばれていた施設が該当します。
就労継続支援B型の特徴としては、生産活動(作業)は行いますが、あくまで雇用契約を結ばないという点があげられます。
利用者が作業分のお金を工賃としてもらいますが、非雇用型のため比較的自由に働けるというのも特徴の一つと言えます。
対象について
就労継続支援B型を利用対象としては、次の通りになります
- 就労経験がある方であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった方
- 就労移行支援事業を利用(暫定支給決定での利用を含む)した結果、B型の利用が適当と判断された方
- 上記に該当しない方であって、50歳に達している方または障害基礎年金1級受給者
また、障害者支援施設に入所している方については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画の作成の手続きを経た上で、市区町村が利用の組み合わせの必要性を認めた方が対象となります。
支援内容
就労継続支援B型においての支援内容としては、
- 生産活動、その他の活動機会の提供(非雇用)
- 就労に必要な知識,能力の向上のために必要な訓練の実施
- その他利用者の就労にとって必要な支援の提供
…となります。
作業活動や集団生活をとおして、言葉遣いや約束事といった社会のルールやマナー、基礎的な体力づくりから作業に向う集中力や協調性、さらには対人スキルや責任感といった総合的な能力…就労能力を高めることを目的とした支援を行います。
全国の事業所数について
全国にある就労継続支援B型の事業所数についてですが、次のような統計データがあります。
年度 | 事業所数 |
---|---|
平成26年度(2014) | 8722 |
平成27年度(2015) | 9431 |
平成28年度(2016) | 10214 |
平成29年度(2017) | 11041 |
出典:平成29年度社会福祉施設等調査の概況
就労移行支援事業所や就労継続支援A型と比較すると3倍以上の事業所数になります。
利用者数
就労継続支援B型を利用している人数は、平成30年3月の段階で、約24.0万人になるようです。
参考:社会福祉施設等調査、国保連データ、学校基本調査、障害者雇用状況調査、患者調査、生活のしづらさなどに関する調査
平均工賃(賃金)について
平成29年度の厚生労働省から発表された就労継続支援A型事業所の平均工賃(賃金)についての報告によると、就労継続支援B型での作業工賃(賃金)については、
- 月額:15,603 円円(102.0%)
- 時間額:205円(103.0%)
*()内は対前年比
…となっています。
都道府県別での平均工賃(賃金)ランキングについて
平成29年度の就労継続支援B型事業所の都道府県別平均賃金の順位ですが、次のようなデータがあります。
- 1位:福井県(22,312円)
- 2位:徳島県(21,465円)
- 3位:高知県(19,694円)
- 最下位:山形県(11,016円)
利用料金について
就労継続支援B型によるサービスを利用する際、原則1割自己負担してもらう「利用者負担料」と呼ばれるものがあります。
利用者負担額はサービス提供費用の1割を上限としたうえで、世帯所得に応じて負担上限が設けられています。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(*1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(*2)未満) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
*1:3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯
*2:収入が概ね600万円以下の世帯
*入所施設利用者(20歳以上)やグループホーム、ケアホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合は“一般2”となるので注意が必要です。
就労移行支援事業所、就労継続支援A型と同様、この利用料金は行政で定められているため、どの事業所でも基本的には同じ料金になります。
交通費について
B型事業所の様々な案内やホームページをみても、基本的には交通費は利用者の自己負担としている事業所が多いようです。
しかし、市区町村や事業所によっては交通費の助成を行っている場合もあるので市区町村の障害福祉課などの窓口へ問い合わせるとよいかもしれません。
送迎について
平成30年4月に改定された障害福祉サービス等の報酬によると、B型事業所に限っては送迎の加算請求を行えるようになったことから、送迎を積極的に行う事業所が増えてきているようです。
就労継続支援B型の作業内容について
就労継続支援B型事業所での作業内容についてですが、その事業所によって様々ですが、よくみられる内容の例としては、
- パッケージングや値付け
- ボールぺン等の組み立て
- 手工芸の製造(ミシン作業・工作等)
- 調理補助(喫茶店やレストラン)
- 簡単なパソコンの入力作業
- パンやお菓子の製造と販売
- クリーニングや廃品回収
- 農作業
…などがあげられます。
就労継続支援B型のメリット・デメリットについて
では、就労継続支援B型によるサービスを利用するメリットとデメリットとはどのようなものがあげられるでしょうか?
メリット
就労継続支援B型事業所を利用することのメリットとしては、次のようなものがあげられます。
- 生活習慣をつけることができる
- 無理なく就労することができる
- 自分に向いている作業を選べる
- 工賃がもらえる
以下に詳しく解説します。
生活習慣をつけることができる
家で過ごす時間が長いと、どうしてもメリハリのない生活になりその結果昼夜逆転したりと不規則な生活リズムになってしまいがちです。
心身ともに健康な状態を維持するためにも、規則正しい生活習慣を身につけることが重要です。
B型事業所を利用することで、決められた時間に起床し、朝の準備をし、事業所へ行き作業を行い、夕方に帰宅する…という毎日の日課は、実は非常に健康維持には必要なことだったりします。
無理なく就労することができる
B型事業所は就労移行支援事業所や就労継続支援A型事業所と同様、”一般就労”を目的にしています。
しかしA型と異なり事業所とは雇用契約を結んでいるわけではない非雇用型になるため、比較的自由に、利用者本人の体調や特徴に合わせることができるというのもメリットとしてあげられます。
自分に向いている作業を選べる
B型事業所の作業内容や支援プログラムとして、様々な特徴や障害を有した利用者に対応できるよう数多くの種類がある事業所がほとんどになります。
自分の特性に向いている作業を選ぶことができますし、自分の得意不得意な作業を見極める機会を得ることもできます。
工賃がもらえる
B型事業所ではその作業に応じて工賃を受け取ることができます。
一般就労やA型事業所と比較すれば安い工賃かもしれませんが、金額そのものよりも「働くこと」「働いて賃金を受け取ること」という経験をするには非常にメリットがある環境と言えます。
デメリット
就労継続支援B型を利用することでのデメリットとしては次のとおり。
- 作業内容が簡単すぎる
- 一般就労につながりにくい
- 人間関係で疲弊してしまう場合がある
- 工賃が安すぎる
以下に詳しく解説します。
作業内容が簡単すぎる
B型事業所での作業内容はどうしても簡単で単純で、繰り返しの多い作業になりがちです。
どのような利用者にとっても取り掛かりやすいような作業内容が選ばれるためでもありますが、利用者にとっては簡単すぎて逆に苦痛な作業になってしまうケースもあるようです。
一般就労につながりにくい
B型事業所もあくまで目的は一般就労ですが、実際B型事業所から直接一般就労に繋がるケースはかなり稀のようです。
B型支援事業所から一般就労を目指すよりも、A型事業所や就労移行支援事業所にステップアップするための準備期間…という捉え方で利用する方が建設的なのかもしれません。
人間関係で疲弊してしまう場合がある
就労移行支援事業所やA型事業所に比べるとどうしても障害の程度が重めの利用者が多くなりがちのようです。
そのため利用者同士の距離感の撮り方やトラブルも多くなり、人間関係で疲弊してしまう…というケースも多いようです。
工賃が安すぎる
B型事業所で受け取ることができる月額平均が約1万~1万5千円程度のことからも、工賃が安すぎる!という不満を持つ利用者は多いようです。
これは非雇用型という点からも発生する工賃は最低賃金以下になる場合が多いということがあげられます。
そのため「就労によって自立した生活」を送ることは経済面からも困難であり家族からの支援を必要とするのが前提となります。
そのB型事業所をどのような目的で利用するか?という部分にもよりますが、どうしても「工賃が安い!」と感じてしまう場合は、作業内容や利用のしやすさと自身の障害や体調のバランスをみた上で、A型事業所への変更などを検討する必要があるかもしれません。
就労継続支援B型の平均工賃は向上している?
非雇用型であるため就労継続支援B型での作業工賃は最低賃金よりも非常に少ないものとなっています。
しかし「工賃向上計画支援事業」(平成19年~平成23年)の実施によって、以下のような平均工賃の向上につながっています。
対象事業所 | 平均工賃(賃金) |
---|---|
工賃向上計画の対象施設(※)の平均工賃 | 12,222 円(H18) →15,033円(H27) <122.9%> |
就労継続支援B型事業所で、平成18年度から継続して工賃倍増5か年計画・工賃向上計画の対象となっている施設の平均工賃 | 12,542 円(H18) →16,598円(H27) <132.3%> |
*<>内は増減率
データ引用:厚生労働省
まとめ
障害の有無に関わらず、就労し生産活動に関わるということはその人に「役割」を与える事になります。
就労継続支援B型のような非雇用型であることでの作業や生産活動の場を提供する…ということも、その利用者の能力に合わせた場の提供という点ではICFやノーマライゼーションの観点からも非常に必要なことといえますね!