CRISPRi(CRISPR interference) – CRISPR/Cas9技術から派生した遺伝子発現調節技術

CRISPRi(CRISPR interference) - CRISPR/Cas9技術から派生した遺伝子発現調節技術 用語

CRISPRiは、特定の遺伝子の活性を抑制する画期的な遺伝子編集技術です。
本記事ではCRISPRiについて解説します。


CRISPRi(CRISPR interference)とは?

CRISPRi、またはCRISPR interferenceは、CRISPR/Cas9技術から派生した遺伝子発現調節技術です。
CRISPRiは、遺伝子の活性を抑制するために使用され、特定の遺伝子の発現を下げることができます。

この技術は、DNAを切断する能力を失ったCas9酵素の変異体であるdCas9を利用します。
dCas9は、ガイドRNA(gRNA)と結合して特定のDNA部位を標的にすることはできますが、DNAを切断することはありません。
この特性を利用して、CRISPRiは遺伝子の転写を阻害し、その結果として遺伝子の発現を抑制します。

CRISPRiの特徴

CRISPRiの主な特徴として…

  • dCas9の利用
  • 遺伝子ノックダウン
  • アレル系列の作成とゲノムローカスのイメージング
  • 幹細胞研究と遺伝子スクリーニング
  • 遺伝子発現の安定した抑制

…があげられます。
それぞれ解説します。

dCas9の利用

CRISPRiは、DNAを切断する能力を失ったCas9酵素の変異体であるdCas9を活用します。
dCas9は、ガイドRNA(gRNA)と結合し、特定のDNA部位を標的としますが、DNAを切断することはありません。
この特性を利用して、CRISPRiは特定の遺伝子の転写を阻害し、遺伝子の発現を抑制することができます。
この抑制作用により、遺伝子の機能を無効化せずにその活性を調節することが可能になります。

遺伝子ノックダウン

CRISPRiを用いた遺伝子ノックダウンは、遺伝子の機能を部分的に抑制する手法として用いられます。
この技術は、遺伝子の完全なノックアウトではなく、遺伝子発現のレベルを調整することにより、その遺伝子の機能を減弱させます。
これにより、遺伝子が持つ役割をより詳細に解析することができ、病気モデルの作成や機能的スクリーニングに非常に有用です。

アレル系列の作成とゲノムローカスのイメージング

CRISPRiは、異なる遺伝的背景を持つ細胞株において、特定の遺伝子のアレルを特異的に抑制するために使用されます。
また、融合タンパク質を介してdCas9をフルオレセンスタグと結合させることで、特定のゲノムローカスを実時間で視覚化することも可能です。
これにより、遺伝子の発現ダイナミクスを直接的に観察し、細胞内での遺伝子の挙動を理解するのに役立ちます。

幹細胞研究と遺伝子スクリーニング

CRISPRiは、幹細胞の特定の遺伝子を標的にしてその発現を制御することで、幹細胞の分化や自己更新を研究するために利用されます。
また、大規模な遺伝子スクリーニングにも適用され、多くの遺伝子の機能を一度に調べることができるため、新たな生物学的経路や疾患関連遺伝子を同定する手助けとなります。

遺伝子発現の安定した抑制

CRISPRiは、RNA干渉(RNAi)と比較して、遺伝子発現を転写レベルで制御するため、より長期的で安定した遺伝子発現の抑制が可能です。
DNAレベルで直接作用することにより、転写前の段階で遺伝子の発現を阻害するため、一時的なmRNAの分解とは異なり、より持続的な効果が期待できます。
この特性により、CRISPRiは生物学的プロセスの長期的な研究や病理学的状態の模倣に特に適しています。

CRISPRiは、その能力を遺伝子の活性を調節することに活かし、遺伝子の発現を特異的かつ安定的に抑制するための有効な技術なんだ!
この特性により、病気の研究や新しい治療法の開発において非常に有益なツールとなり得ますね!

関連文献

タイトルとURLをコピーしました