三宅式記銘検査 – 検査目的・評価方法・評価点・判断基準について

三宅式記銘検査 - 検査目的・評価方法・評価点・判断基準について 検査

記銘力や記憶について評価する方法は様々ですが、“三宅式記銘検査”もその中の一つで有名な方法といえます。
そこで今回は、三宅式記銘検査のやり方や教示方法、点数平均、カットオフ値について解説します。


三宅式記銘検査とは?

三宅式記銘力検査(みやけしききめいりょくけんさ)とは聴覚性言語の記憶検査の一つになります。
原法は1923年に精神医学者である三宅紘一らによって開発されました。

東大脳研式記銘力検査…とも呼ばれています。

目的

三宅式記銘力検査を行う目的ですが、短期記憶障害や対連合記憶、注意障害の評価を目的としています。
クライアントの記憶の形成、保持、再生と注意機能を総合的に評価する…と解釈してよいようです。

対象

成人を対象としています。

所要時間

約15分

特徴

三宅式記銘力検査の特徴としては“簡単”に行えること、“聴覚性言語”の記憶検査であることがあげられます。
簡単に行える点からもスクリーニング検査として有用的とされています。

質問項目について

三宅式記銘力検査の質問項目は、

  • a)意味的関連の深い名詞(有関係対語)10対
  • b)意味的関連の希薄な名詞(無関係対語)10対

…の2種類から構成されています。

あくまで聴覚性言語の記憶検査って認識をしていないといけないね!
包括的な記憶の検査を行う場合は、RBMTを行うとよいでしょうね!

検査方法について

検査方法としては、

  1. 有関係対語、無関係対語それぞれ10対の語を読み上げ、被験者に記銘してもらう
  2. その後、対語の一方を提示し、被験者にはもう一方の語を想起させる
  3. これを3回繰り返す

…になります。

教示方法について

教示方法にはいくつかのポイントがあります。

1.まず被験者にはこれから“記憶の検査”を行うことを伝え、了承してもらう。

2.「○○と△△」というように二つの言葉を続けて言うので、よく聞いて覚えてください。10組繰り返した後に、二つの言葉の前の方の言葉を言いますので、後の言葉がなんだったかよく思い出して答えてください。
*ここでの例題では、本検査のリストには含まれていない有関係対語を用いて、2,3回練習させることが推奨されます。

3.本検査では有関係対語のリストから開始します。
リストにある有関係対語を一つずつ、ゆっくり一定のペースではっきりと読み上げることがポイントです(検査要綱には読み上げの間隔は2秒程度とあります)。

4.10対全て読み上げが終了したら、「それではお聞きします。○○…?」と最初の対語の前の方の単語を言い、後ろの単語を答えさせます。
この際正解、不正解に関わらず検査用紙に被験者が回答した単語を記載していくこと、回答までの時間も記入することが重要です。
10秒待っても回答がない場合は、“忘却”とみなして次の質問に移ります。
(文献によってはこの待機時間を30秒にしている場合もあるようです)。

5.これらの検査を合計3回繰り返します。ちなみに1回目or2回目に全問正解となった場合は移、以降の検査も同様を考え有関係対語試験を打ち切ります。

6.有関係対語試験が完了した後に、無関係対語試験を実施します。
方法としては有関係対語試験の時と同じになりますが、今度は互いに関係がない単語の組み合わせになることを被験者にしっかりと伝えておかないと混乱してしまう場合があります。
また有関係対語試験と無関係対語試験の間には10分程度の休憩を挟むことを推奨している論文もあります。

対語のリスト

有関係 無関係
煙草-マッチ 少年-畳
空-星 雷-虎
命令-服従 入浴-財産
汽車-電車 兎-障子
葬式-墓 水泳-銀行
相撲-行司 地球-問題
家-庭 嵐-病院
心配-苦労 特別-衝突
寿司-弁当 ガラス-神社
夕刊-号外 停車場-真綿

評価のポイントについて

三宅式記銘力検査における評価ポイントとしては、被験者の正答数、誤答数、回答時間などから記銘力を評価することが求められます。

平均点とカットオフについて

平均点については以下のようになっています。

成人前期(31.4±9.2歳)

回数 有関係 無関係
1回目 9.1点 3.9点
2回目 9.8点 7.5点
3回目 9.9点 8.6点

中年期(46.7±5.2歳)

回数 有関係 無関係
1回目 7.7±1.6点 2.9±1.8点
2回目 9.1±1.1点 6.2±2.1点
3回目 9.4+±0.3点 7.9±2.5点

老年期(68.1±6.5歳)

回数 有関係 無関係
1回目 8.3±1.2点 1.3±1.1点
2回目 9.7±0.7点 3.1±2.2点
3回目 10.0+±0点 4.6±2.5点

カットオフ値についてですが、特に設定されてはおらず、あくまで年齢平均値と比較して判断する…ようです。

注意点

三宅式記銘検査は被験者が記憶障害を有している場合は特にストレスがかかりやすい試験です。
ちゃんと正答できずに自信をなくしてしまうような場合も考えられるため、被験者の性格にも配慮してなるべく精神的な不安を増強しないような工夫が必要になってきます。

三宅式記銘検査や保険点数について

三宅式記銘検査は保険診療が可能な検査の一つであり、

  • 区分:D285-2
  • 点数:280点

…となっています。
つまり3割負担の場合は840円、高齢者の場合は1割の場合で280円、2割の場合でも560円の支払いが発生します。

三宅式記銘検査の検査用紙について

三宅式記銘検査はその方法や対語リストなどもいくつかのバージョンがあるようなので、
インターネット上のpdfファイルを利用するよりは、正規のものを購入して実施することが望まれます。

サクセスベル

三宅式記銘検査は認知症のみならず高次脳機能障害、精神疾患のクライアントにも非常に有用な手段といえるね!
記銘力という生活上必須な能力の評価をしっかりと行うことで、作業療法士として提供できる支援もより具体的なものになってくるのでしょうね!

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