SDM(Shared Decision Making)- 定義やプロセス、ガイドラインや評価指標について

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医療における患者の意思決定で”SDM(Shared Decision Making)”が最近は特に重要視されています。
本記事ではSDMの定義やプロセス、インフォームドコンセントとの違いなどについて解説します。


SDM(Shared Decision Making)とは?


SDM(Shared Decision Making、共同意思決定)は、患者と医療提供者が共に参加して、患者の医療に関する意思決定を行うプロセスです。
このアプローチは、患者が自身の価値観や好み、ライフスタイルに基づいて、医療選択肢について理解し、その中から最適な選択をすることを支援します。

SDMは患者中心のケアの重要な要素であり、患者の自律性を尊重し、医療の質を向上させることを目指しています。

日本語では?


SDM(Shared Decision Making)は日本語では、「共同意思決定」や「協働的意思決定」などと訳されます。

SDMのプロセスについて


SDMのプロセスは、患者中心のケアを実現するための重要なステップを含みます。
このステップとして…

  1. 情報の共有
  2. 患者の価値観と好みの表明
  3. 選択肢の検討
  4. 意思決定
  5. 治療計画の実施
  6. 評価とフォローアップ

…があげられます。
各ステップについて解説します。

情報の共有

医療提供者は、診断結果、治療オプション、それぞれのオプションにおけるリスクと利点について、詳細かつ理解しやすい情報を患者に提供します。
この段階では、医療提供者は患者が自身の状態と治療選択肢について十分に理解できるように、専門用語を平易な言葉で説明することが重要です。

情報の共有により、患者は自身の健康に関する意思決定においてよりアクティブな役割を果たすことができるようになります。

患者の価値観と好みの表明

患者は、自分の価値観、好み、懸念事項を医療提供者と共有する機会を持ちます。
このプロセスを通じて、患者は自分自身の健康観や治療に対する期待を明確に表現することができ、医療提供者は患者の視点を理解し、それを治療計画に反映させることが可能になります。

患者の価値観と好みを尊重することは、患者が自身の治療に納得し、満足するための基盤を築きます。

選択肢の検討

患者と医療提供者は、提供された情報を基に、可能な治療オプションを一緒に検討します。
この段階では、それぞれの選択肢のメリットとデメリットを比較し、患者の健康状態、ライフスタイル、価値観に最も合致する治療法を探ります。

選択肢の検討プロセスは、患者が自らの治療に関する意思決定を行う上で、情報に基づいた選択ができるようにするために重要です。

意思決定

患者と医療提供者は、検討された情報と患者の価値観を基に共同で意思決定を行い、最適な治療計画を立案します。
このステップでは、双方の合意に基づく決定が重要であり、患者が自身の治療に対して責任を持ち、医療提供者はその選択をサポートします。

意思決定の過程で、患者の自律性を尊重し、患者が納得のいく選択をすることが重視されます。

治療計画の実施

合意に達した治療計画に従って、治療が開始されます。
この段階では、医療提供者は計画に基づいて治療を実施し、患者は計画に沿った治療を受けることになります。
治療の進行中には、患者と医療提供者が定期的にコミュニケーションを取り、必要に応じて治療計画の調整が行われます。

治療計画の実施は、患者の健康改善に向けた具体的な行動の段階です。

評価とフォローアップ

治療の効果を評価し、患者の健康状態の変化に応じて治療計画を調整します。
このプロセスでは、治療の結果が患者の期待と合致しているかを確認し、患者の満足度や治療に対する意見を聞きます。

評価とフォローアップは、治療が患者の健康と生活の質の向上に寄与しているかを保証するために重要です。

SDMのプロセスは、患者の自律性と医療提供者の専門知識を結びつけることで、患者中心のケアを実現し、治療結果の向上を目指す有効なアプローチなんだ!
このプロセスを通じて、患者さんは自身の治療においてよりアクティブな役割を果たし、医療提供者との信頼関係を深めることができるんですね!

SDMのガイドラインについて


SDMに関するガイドラインは、医療提供者と患者が共に意思決定に参加し、患者の価値観や好みに基づいた医療選択を行うための枠組みを提供します。
ここでは、SDMを促進するための主要なガイドラインとして…

  • 患者の意思決定支援ツールの使用
  • コミュニケーションスキルのトレーニング
  • 治療選択肢の透明性
  • 患者の価値観と好みの尊重

…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。

患者の意思決定支援ツールの使用

意思決定支援ツールは、患者が自身の健康に関する選択を理解し、情報に基づいた決定を下すのを助ける資料やリソースです。
これらのツールは、リスクと利益の透明な提示、治療選択肢の比較、患者の価値観に基づく選択肢の評価を可能にします。

効果的な意思決定支援ツールは、患者と医療提供者間の対話を促進し、患者が自身の治療においてより積極的な役割を果たすことを支援します。

コミュニケーションスキルのトレーニング

医療提供者向けのコミュニケーションスキルトレーニングは、患者との効果的な対話を促進するために不可欠です。
このトレーニングは、医療提供者が患者の懸念を理解し、治療選択肢に関する情報を明確かつ平易な言葉で伝え、患者の価値観や好みを尊重する方法を学ぶことを目的としています。

良好なコミュニケーションは、信頼関係を構築し、患者の不安を軽減し、満足度を高めるために重要です。

治療選択肢の透明性

治療選択肢の透明性は、患者が自身の健康に関する意思決定において情報に基づいた選択を行えるようにするために不可欠です。
このガイドラインは、医療提供者に対して、可能な治療オプションすべてを提示し、それぞれのオプションの利点、リスク、および結果について患者に説明することを要求します。

透明性は、患者が自分自身に最も適した選択をするための信頼と理解の基盤を築きます。

患者の価値観と好みの尊重

患者の価値観と好みを尊重することは、SDMの中心的な原則です。
このガイドラインは、医療提供者に対して、患者の生活状況、文化的背景、個人的価値観、および治療に対する好みを理解し、これらを治療計画に統合することを求めます。

患者が自身の価値観に基づいて意思決定に参加することを促すことで、治療への満足度と遵守率が向上します。

これらのガイドラインは、患者さんと医療提供者が共に参加する意思決定プロセスの質を向上させ、患者中心のケアを促進するために設計されているんだ!
医療提供者がこれらのガイドラインに従って行動することで、患者の治療結果と満足度の向上につながる可能性があるんですね!

SDMの評価指標について


SDMの評価指標は、このプロセスが患者と医療提供者間で効果的に実施されているかを判断するための重要なツールです。
主なものとして…

  • 患者の知識の増加
  • 患者満足度
  • 意思決定のコンフリクト
  • 患者と医療提供者の対話
  • 治療選択に対する患者の関与度

…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。

患者の知識の増加

患者の知識の増加は、患者が治療選択肢及びそれらの潜在的影響についてどれだけ理解しているかを測定する指標です。
この指標は、情報提供の質と患者が提供された情報をどの程度吸収し、理解しているかを示します。

患者が自身の治療オプションについて十分に知識を持っていることは、情報に基づいた意思決定を行う上で不可欠であり、SDMプロセスの成功に直結します。

患者満足度

患者満足度は、患者が意思決定プロセス全体にどれだけ満足しているかを評価する指標です。
この満足度は、プロセスの透明性、患者の参加度、および最終的な治療選択に対する納得感から影響を受けます。

患者が意思決定プロセスに満足している場合、治療計画への遵守率が高まり、医療結果が改善する可能性が高くなります。

意思決定のコンフリクト

意思決定のコンフリクトは、患者が治療選択を行う際に経験する不安や迷いの度合いを測定します。
この指標は、患者が自身の選択に自信を持っているか、または選択プロセス中にストレスを感じているかを示します。

低いコンフリクトレベルは、患者が情報を理解し、自身の価値観に基づいて意思決定を行えていることを反映し、SDMの質の高さを示します。

患者と医療提供者の対話

患者と医療提供者の対話の質は、意思決定プロセスにおけるコミュニケーションの効果性を評価します。
この指標は、双方が意見を自由に交換し、相互理解と尊重の基盤の上で情報を共有できているかを測定します。

良好なコミュニケーションは、患者が自身の意思決定においてよりアクティブな役割を果たし、満足する治療計画に至るための鍵です。

治療選択に対する患者の関与度

治療選択に対する患者の関与度は、患者が自身の治療選択にどれだけ積極的に参加しているかを測定する指標です。
この指標は、患者がプロセスにおいて情報を提供し、意見を表明し、最終的な意思決定に貢献している程度を反映します。

患者が治療選択プロセスに深く関与していることは、SDMが効果的に実施されていることの証であり、患者の満足度と治療への遵守を促進します。

日本語で患者側と専門職側の双方向に使用できるペアの評価指標として、ドイツのハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターが開発したSDM-Q-9/SDM-Q-Docというものもあるんだ!
世界で最も汎用している共有意思決定支援 (SDM) 評価指標で、30言語以上に翻訳されているんですよね!

SDMの課題とは?


SDMは、医療において患者中心のケアを促進する有効なアプローチでありながら、実施に際していくつかの課題が存在します。
主なものとして…

  • 情報過多
  • 時間とリソースの制約
  • 医療提供者のスキルと態度
  • 患者の参加意欲と能力
  • 文化的および社会経済的要因

…などがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。

情報過多

現代の医療環境では、治療選択肢や医療情報が膨大にあり、患者がこれらの情報を理解し、処理することは圧倒的になりがちです。
情報の質と量のバランスを取ることは難しく、医療提供者が患者に適切な量の情報を提供し、それを平易な言葉で説明する必要があります。

情報過多は、患者が情報を完全に理解せず、不安を感じる原因となり、意思決定プロセスを複雑にします。

時間とリソースの制約

医療提供者は日々、時間とリソースの制約に直面しています。
十分なSDMを行うには、患者一人ひとりとの対話に相応の時間を割く必要がありますが、実際には診療時間に限りがあり、多くの患者を診なければならない場合が多いです。

この時間の制約は、SDMプロセスを十分に行うことを困難にし、患者と医療提供者間のコミュニケーションを妨げる可能性があります。

医療提供者のスキルと態度

SDMを成功させるには、医療提供者が適切なコミュニケーションスキルを持ち、患者の意見を尊重する態度を持つことが重要です。
しかし、すべての医療提供者がこれらのスキルや態度を自然に備えているわけではありません。

医療提供者のトレーニングや教育プログラムが不十分であると、SDMのプロセスが妨げられることがあります。

患者の参加意欲と能力

患者が自身の治療に関する意思決定に積極的に関与することは、SDMの中心的な要素です。
しかし、患者の中には、自分の医療に関する決定を下すことに不安を感じたり、医療提供者に全てを委ねたいと考える人もいます。

また、認知能力の低下や健康リテラシーの不足は、患者がSDMプロセスに効果的に参加することを難しくします。

文化的および社会経済的要因

患者の文化的背景や社会経済的状況は、SDMプロセスに大きく影響します。
異なる文化では、病気や治療に対する見解が大きく異なる場合があり、これがコミュニケーションの障壁となることがあります。

また、社会経済的地位が低い患者は、医療情報へのアクセスが限られているか、医療提供者と対等にコミュニケーションを取ることが難しい場合があります。

これらの課題は、SDMを実践する上で克服すべき重要な障壁といえるんだ!

これらの問題に対処するためには、医療提供者の教育とトレーニングの改善、患者の健康リテラシーの向上、診療プロセスの再構築など、多面的なアプローチが必要ですね。

SDMとインフォームドコンセントとの違いについて


SDMとインフォームドコンセントは、患者が自身の医療に関して意思決定を行う過程において重要な概念です。
しかし、その目的とプロセスには明確な違いがあります。

ここでは…

  • 目的の違い
  • プロセスの違い

…について解説します。

目的の違い

インフォームドコンセントは、患者が治療を受ける前に、その治療に関する重要な情報(リスク、利益、代替治療法など)を理解し、同意するプロセスです。
目的は、患者が自身の治療に関する情報に基づいた同意を与えることを保証することにあります。
このプロセスでは、情報の提供と同意の取得が中心となります。

一方SDMは、患者と医療提供者が治療選択に関する情報を共有し、患者の価値観と好みに基づいて最適な治療選択を共同で行うプロセスです。
SDMの目的は、患者が自身の医療においてよりアクティブな役割を果たし、両者が合意に達した治療選択を行うことです。

このプロセスでは、対話と協力が重視されます。

プロセスの違い

インフォームドコンセントでは、医療提供者が治療に関する必要な情報を患者に伝え、患者はその情報を理解した上で同意するか否かを決定します。
このプロセスは比較的一方的な情報の提供と受容に重点を置いています。

その点SDMでは、情報の共有は双方向のプロセスであり、医療提供者と患者が共に情報を交換し、患者の価値観と好みに基づいて治療選択について議論します。
このプロセスは、患者と医療提供者の間の対等な関係と協力に基づいています。

特徴 インフォームドコンセント SDM(Shared Decision Making)
目的 患者が治療に関する重要な情報を理解し、その治療に同意することを保証する。 患者と医療提供者が治療選択に関する情報を共有し、患者の価値観と好みに基づいて最適な治療選択を共同で行う。
プロセス 医療提供者が治療に関する情報を提供し、患者はその情報を基に同意するか否かを決定する。情報提供は比較的一方的。 情報の共有が双方向であり、医療提供者と患者が共に情報を交換し、治療選択について議論する。対話と協力が重視される。
情報の役割 患者が治療のリスクと利益を理解し、知識に基づいて同意を提供するために重要。 患者と医療提供者が共に理解し、患者の価値観と好みを反映した意思決定を支援するために重要。
患者の参加 患者は情報を受け取り、同意するか否かを決定する受動的な役割が主。 患者は意思決定プロセスに積極的に関与し、自身の価値観と好みに基づく決定を行う。
関係の性質 医療提供者が主導し、患者は情報を受ける一方的な関係が特徴。 患者と医療提供者が対等なパートナーとして協力し、共同で意思決定を行う関係が特徴。
どちらも患者さんが自身の医療に関する意思決定を行う上で重要な役割を果たすけど、そのアプローチと目的には顕著な違いがあるんだ!

インフォームドコンセントが患者の同意に焦点を当てるのに対し、SDMは患者と医療提供者の間の共同作業と対話を通じて、患者の個々の価値観に基づいた最適な治療選択を目指すって解釈でしょうね!

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