WAIS-Ⅲ- 特徴・対象・方法・結果解釈について

WAIS-Ⅲ- 特徴・対象・方法・結果解釈について 検査

知能検査のひとつであるWAIS-Rの改訂版であるWAIS-Ⅲは様々な改訂項目があり、現在多くの医療機関などで使用されています。
今回はこのWAIS-Ⅲの特徴や対象、方法、結果解釈について解説します。


WAIS-Ⅲとは?

WAIS-Ⅲとは?
WAIS-Ⅲとは知能検査の一つで、現在の日本において最もよく使われる知能検査のひとつになります。
もともと1938年に刊行された“ウェクスラー・ベルビュー知能検査”を起源としています。

その後WAIS、WAIS-Rと改訂を繰り返し、1997年に改訂第3版であるWAIS-Ⅲが刊行されました。

WAIS-Ⅲは何の略称?

WAIS-Ⅲは何の略称?
WAIS-Ⅲは、”Wechsler Adult Intelligence Scale-Third Edition”の略称になります。

WAIS-Ⅲの特徴について

WAIS-Ⅲの特徴について
WAIS-Ⅲの特徴についてですが…

  • 4つの“群指数”からの解釈が可能になった
  • 新しく3つの下位検査が加わった
  • 目的に応じて下位検査が選択可能になった
  • ディスクレパンシー分析が可能になった
  • 下位検査レベルでのSとWの判定が可能になった
  • 「符号」と「数唱」の精査が可能
  • 絵画検査から開始されるようになった
  • 適応年齢が拡大された

…といった点がWAIS-Rとの違いや特徴としてあげられます。
以下にそれぞれ解説します。

4つの“群指数”とからの解釈が可能になった

WAIS-Rでは、被験者の検査結果を主に言語性IQ(VIQ)、動作性IQ(PIQ)、全検査IQ(FIQ)に算出して解釈していました。
その3つのIQに、WAIS-Ⅲでは、

  • 言語理解(VC):単語・類似・知識
  • 知覚統合(PO):絵画完成・積木模様・行列推理
  • 作動記憶(WM):算数・数唱・語音整列
  • 処理速度(PS):符号・記号探し

…の4つの群指数とよばれる項目が追加されました。
この群指数の導入によって、被験者の個人内差や認知的特徴を詳細かつ多面的に把握することができるようになりました。
ちなみにこの群指数は、「絵画」「配列」「理解」「組合せ」の課題には使用されません。

新しく3つの下位検査が加わった

WAIS-Ⅲでは…

  • 行列推理
  • 記号探し
  • 語音整列

…の3つの下位検査が加わり、7言語性検査、7動作性検査の合計14の下位検査で構成されています。

目的に応じて下位検査が選択可能可能になった

基本的にWAIS-Ⅲは14項目の下位検査で構成されています。
しかし、被験者によってはIQを検査したいのか、もしくは課題に対しての認知的特徴を把握したいのか、その検査目的が異なる場合があります。

そのような場合、検査目的がIQなのか、群指数なのか、もしくはその両方なのかといった検査目的に応じて、実施する下位検査を選択できるようになりました。

ディスクレパンシー分析が可能になった

“ディスクレンパシー”とは、知能検査結果の表示方式の一つで、VIQとPIQとの差を言います。
このディスクレンパシーが大きい場合、ADHDや学習障害(LD)といった発達障害の疑いがでてきます。

下位検査レベルでのSとWの判定が可能になった

14の下位検査項目において、その結果が…

  • 平均値より3点以上高い場合:S
  • 平均値より3点以上低い場合:W

…と表記されます。

「符号」と「数唱」の精査が可能になった

符号に関しての精査ですが、対再生・自由再生・視写があります。

絵画検査から開始されるようになった

ウェクスラー知能検査はその下位検査の多さと実施時間の長さから、被験者にとってもやや負担が大きい検査でもありました。
そういった課題への配慮として、WAIS-Ⅲは動作性下位検査の一つである“絵画検査”から開始することで、少しでも検査に取り組みやすくする工夫がされています。

適応年齢が拡大された

WAIS-Rは16歳~74歳が適応年齢でしたが、今後の高齢化社会に対応できるようにするため、WAIS-Ⅲでは適応年齢を16歳~89歳と大幅に拡大しています。

実施時間

WAIS-Ⅲの検査を全て実施するには、60分~95分…の時間が必要とされています。

WAIS-Ⅲの検査項目と目的について

では、WAIS-Ⅲの下位検査項目とそれぞれの検査目的はどのようなものになるのでしょうか?
以下に詳しく解説します。

絵画完成

方法:一部が欠けたイラストが描いてある絵カードを見せ、そのなかで欠けている重要な部分を指摘するという課題です。
目的:視覚刺激に素早く反応する能力・視覚的長期記憶の検査

符号

方法:簡単な記号を見本通りに書き写すという課題です
目的:指示に従う能力・動作のスピード・処理スピードと正確さ・視覚的短期記憶

積木模様

方法:提示された模様と同じように積木を並べるという課題です
目的:全体を部分に分解する能力・非言語的概念・空間認知

行列推理

方法:一部が空欄の図に、法則性に従った当てはまる選択肢を探して当てはめるという課題です
目的:類似点の探索能力と推測能力

絵画配列

方法:絵をストーリー順に並べかえるという課題です
目的:結果の予測能力・時間的概念

記号探し

方法:グループの中に見本と同じ記号があるかを判断するという課題です
目的:視覚的探索のスピード

組合せ

方法:バラバラのピースを組み合わせて、具体的なものをつくる課題です
目的:思考の柔軟性・視覚分析力

知識

方法:一般知識について答えるという課題です
目的:一般的な知識の量

理解

方法:日常的なことや社会のルールについて答えるという課題です
目的:実際的知識の表現力・経験を扱う能力

算数

方法:簡単な算数の問題について口頭で答えるという課題です
目的:計算力

類似

方法:2つの言葉に共通することについて答えるという課題です
目的:抽象言語理解・論理的なカテゴリー的思考力

単語

方法:単語を口頭で指示し、その意味を答えるという課題です
目的:単語に関する知識・言語的発達の程度

数唱

方法:聞いた数字を順唱、逆唱する課題です
目的:聴覚的短期記憶

語音整列

方法:数字と仮名の組み合わせを聞き、それぞれ順に沿って復唱する課題です
目的:五十音の数字の順序を扱う能力・作動記憶

WAIS-Ⅲの検査結果と解釈について

WAIS-Ⅲの検査結果と解釈について
WAIS-Ⅲの結果解釈についてですが、IQ、群指数、下位検査項目の数字を算出し解釈に役立たせます。

IQと知的発達水準について

IQ 知的発達水準
130 以上非常に高い
120 ~ 129 高い
110 ~ 119 平均の上
90 ~ 109 平均
80 ~ 89 平均の下
70 ~ 79 境界域
69 以下 知的障害

群指数の差について

上述したIQの数字によって判断するだけでなく、
群指数の差がどの程度なのかにも注目する必要がある。
群指数の差が30以上ある場合は、多くは何かしらの発達障害と診断されます。

また下位検査項目の高低差が極端に大きい場合も、社会生活上での生きにくさを感じるケースが多いようです。

WAIS-Ⅲはどこで受けられる?

WAIS-Ⅲはどこで受けられる?
基本的にはWAIS-Ⅲ病院の心療内科、精神科で受けることができます。
その際、精神科医や臨床心理士によって検査が行われます。

WAIS-Ⅲの料金は?

WAIS-Ⅲの料金は?
WAIS-Ⅲは診療報酬点数は450点ですから、保険内診療で自己負担額3割の場合は、1350円になります。
また、個人クリニックなどでも受けることができる場合があるようですが、その際ほとんどは実費(1万~2万円)で受けることになるようです。

「大人の発達障害」という言葉が一般的になり、「もしかして自分も?」と思い、WAIS-Ⅲの検査を受けるためにクリニックや病院に行くという流れができているようだね!
小さい時は「ちょっと変わった子」として扱われてきた人が大人になり社会生活を営むにあたっての生きにくさ、仕事のしづらさを感じるケースが多くなってきているようですね!

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