呼吸の異常 – 呼吸量・呼吸のリズム・呼吸音

臨床でみられる呼吸の異常状態について知ることは、患者の全体状態の把握に必須な知識です。
本記事では、呼吸の異常について解説します。

呼吸の異常について

では、臨床でみられる呼吸の異常とはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは…

  • 呼吸量
  • 呼吸のリズム
  • 呼吸の音

…について解説します。

呼吸量の異常

呼吸量の異常は、呼吸回数と1回換気量の変化を指します。
以下にそれぞれ解説します。

呼吸回数の異常

呼吸回数の異常とは、通常の呼吸回数の範囲を逸脱した状態を指します。

頻呼吸(tachypnea)
呼吸回数が通常よりも多く、一般的には25回/分以上と定義されます。
頻呼吸は、体内の酸素供給不足や二酸化炭素排出の過剰な状態を示す場合があります。
例えば、発熱や肺疾患などが原因となることがあります。

徐呼吸(bradypnea)
呼吸回数が通常よりも少なく、一般的には9回/分以下と定義されます。
徐呼吸は、通常の呼吸過程が遅くなることで生じることがあります。
麻酔中や薬物の影響、神経系の疾患などが原因となることがあります。

無呼吸(apnea)
呼吸運動が停止し、一時的に呼吸が止まる状態を指します。
無呼吸は通常、通常の呼吸パターンの中断として認識され、睡眠時無呼吸症候群や中枢神経系の問題によって引き起こされることがあります。

クスマウル呼吸(Kussmaul’s respiration)
異常に深く大きな呼吸が連続する状態を指します。
代謝性アシドーシス(例:糖尿病性ケトアシドーシスや腎不全に伴う尿毒症)の補正の一環として発生することがあります。

1回換気量の異常

1回換気量の異常とは、1回の呼吸で取り込まれる空気の量が通常よりも増加または減少している状態を指します。
1回換気量は、吸気時に肺に取り込まれる空気の量を示します。

低呼吸(低換気)
1回の呼吸で取り込まれる空気の量が通常よりも少ない状態を指します。
低換気は肺機能の低下、呼吸筋の制限、気道の閉塞などによって引き起こされることがあります。

過呼吸(過換気)
1回の呼吸で取り込まれる空気の量が通常よりも多い状態を指します。
過換気は通常、急性の感情的な状態や不安、高地での酸素不足、肺機能障害などによって引き起こされることがあります。

浅頻呼吸(rapid shallow breathing)
呼吸回数が増加し、各呼吸の深さが浅い状態を指します。
浅頻呼吸は通常、呼吸の制限や肺の狭窄、心不全、神経系の問題などによって引き起こされることがあります。

呼吸のリズムの異常

呼吸のリズム異常には、呼吸のパターンや特定の呼吸運動に関連しています。
以下にそれぞれ解説します。

チェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration)
一回換気量が徐々に増加し、次いで徐々に減少する呼吸が周期的に繰り返されます。
しばしば心臓や脳の機能の低下に伴って現れることがあります。
睡眠時無呼吸症候群や心不全などの状態で見られることがあります。

ビオー呼吸(Biot’s respiration)
過性に無呼吸と深呼吸を繰り返す呼吸パターンです。
中枢神経系の障害や脳幹の損傷によって引き起こされることがあります。
脳外傷や脳腫瘍、中毒などが原因となることがあります。

鼻翼呼吸(鼻翼が動く呼吸)
呼吸困難が著しくなり、鼻の両側の鼻翼が拡張・収縮する呼吸です。
通常は気道の閉塞や肺の病気によって引き起こされます。
呼吸困難や喘鳴音などの症状が見られることもあります。

下顎呼吸
努力性に下顎だけを動かして呼吸するパターンです。
一般的には上気道の閉塞や筋力の低下によって引き起こされます。

シーソー呼吸(Seesaw respiration)
胸部と腹部の動きが逆になる呼吸パターンであり、通常は呼吸筋の異常や胸部の圧迫によって引き起こされます。

陥没呼吸(陥没する呼吸)
鎖骨の上の部分が凹む呼吸パターンであり、通常は呼吸筋の機能低下や制限された気道によって引き起こされます。

呼吸音の異常

呼吸音の異常には、以下のようなパターンがあります。
これらの異常な呼吸音は、特定の病態や疾患に関連して現れることがあります。

気管呼吸音(bronchial breath sounds)
頸部気管上で強く長い呼気音が聴取され、吸気に比べて若干長いのが特徴です(2:3)。
吸気と呼気の間には休止期があり、その間には呼吸音が聴こえない休止期があります。
気管呼吸音が他の部位で聴取される場合、それは無気肺や湿潤病変の存在を示唆する可能性があります。

気管支呼吸音(broncho-vesicular breath sounds)
前胸部の胸骨上や肩甲骨の間で中程度の大きさの呼気音が聴取され、吸気と呼気の割合は同じことが特徴です。
この呼吸音が他の肺野で聴取される場合、それは肺組織の硬化、胸水、間質水分の貯留、無気肺、肺炎などの肺実質の含気低下を示唆する可能性があります。

肺胞呼吸音(vesicular breath sounds)
胸壁の正中部や肺尖区以外の肺野で、吸気時に大きく聴取されるのが特徴です。
吸気は呼気に比べて長く、気管支呼吸音よりも静かな音が聴取されます。
肺胞呼吸音が小さい場合、その肺野の換気量低下、肺炎、肺気腫、胸水、胸膜の肥厚などを示唆する可能性があります。
気管支炎や肺炎などの疾患では、肺胞呼吸音は粗く鋭利な音に変化することがあります。

呼吸の異常も、臨床のなかでチェックしやすいバイタルサインといえるね!
セラピスト側が患者さんの呼吸の小さな異常にも気付く力も求められますね!

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