アキレス腱反射 – 定義・目的・検査方法などについて

アキレス腱反射 - 定義・目的・検査方法などについて 用語

アキレス腱反射は、アキレス腱を叩打することで足が底屈する反射で、S1およびS2神経を介して起こります。
この反射は神経系の健康状態を評価する重要な診断手段です。

本記事ではアキレス腱反射の定義や目的、検査方法などについて解説します。


アキレス腱反射とは?

アキレス腱反射(アキレスけんはんしゃ)は、腱反射の一つで、アキレス腱を軽く叩打することによって足が底屈(足のつま先が下向きに動く)する反射です。
この反射は、脊髄から分枝したS1およびS2神経によって起こります。
反射の経路は、アキレス腱からの刺激が感覚神経を通じて脊髄に伝わり、そこから運動神経を介してふくらはぎの筋肉に信号が送られ、筋肉が収縮するという流れです。

目的

アキレス腱反射を検査する目的として…

  • 神経系の機能評価
  • 脊髄の健康状態の確認
  • 末梢神経障害の診断
  • 筋肉疾患の検出
  • 全身的な神経筋機能のチェック

…があげられます。
それぞれ解説します。

神経系の機能評価

アキレス腱反射の一つの重要な目的は、神経系の全体的な機能を評価することです。
この反射が正常に起こるかどうかは、脳と脊髄を通じた神経経路が正常に働いているかの指標となります。
アキレス腱を軽く叩くと、感覚神経がその刺激を脊髄に伝え、そこから運動神経が筋肉に信号を送り返します。
この一連の過程が円滑に行われることで、足が底屈する反射が見られます。
この反射が正常であることは、脊髄のS1およびS2レベルの神経経路が適切に機能していることを示しています。

異常な反射は、神経経路のどこかに問題があることを示唆し、さらなる詳細な検査や診断が必要となる場合があります。

脊髄の健康状態の確認

アキレス腱反射は、脊髄の健康状態を確認するための有用な手段です。
特に、脊髄の下部(仙骨部、S1およびS2)の機能を評価するのに役立ちます。
反射が弱い、または欠如している場合、脊髄の損傷や圧迫が疑われる可能性があります。
例えば、椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍などが脊髄を圧迫している場合、この反射は低下したり消失したりすることがあります。
また、逆に反射が過剰に強い場合は、中枢神経系の障害、例えば脳卒中や多発性硬化症などが原因である可能性があります。

このように、アキレス腱反射は脊髄の異常を早期に発見し、適切な診断と治療に導く重要な手がかりを提供します。

末梢神経障害の診断

末梢神経障害の診断においてもアキレス腱反射は重要な役割を果たします。
末梢神経が損傷または病変によって影響を受けると、反射の伝達経路が妨げられることがあります。
その結果、アキレス腱反射が低下したり消失したりすることが観察されます。
糖尿病性ニューロパチーやギラン・バレー症候群などの末梢神経障害では、神経の伝達能力が損なわれ、反射が正常に機能しなくなることがあります。
医師はアキレス腱反射の評価を通じて、末梢神経の損傷の有無やその程度を判断し、適切な治療計画を立てることができます。

これにより、早期の介入が可能となり、患者の予後を改善することが期待されます。

筋肉疾患の検出

アキレス腱反射は筋肉疾患の検出にも役立ちます。
筋肉の反射が正常に機能するためには、筋肉自体の健康状態も重要です。
筋肉が萎縮していたり、病変がある場合、反射は弱くなるか、完全に消失することがあります。
例えば、筋ジストロフィーや多発性筋炎などの筋肉疾患は、筋肉の収縮能力に影響を与え、反射が正常に起こらない原因となることがあります。
アキレス腱反射の検査を通じて、医師は筋肉の異常を早期に発見し、さらに詳しい検査を行う必要性を判断します。

これにより、早期の診断と治療が可能となり、患者の生活の質を向上させるための適切な管理が行われます。

全身的な神経筋機能のチェック

アキレス腱反射の評価は、全身的な神経筋機能をチェックする手段としても重要です。
反射が正常であることは、神経系と筋肉系が適切に連携して機能していることを示します。
全身的な神経筋機能の障害は、運動能力や日常生活の動作に影響を及ぼす可能性があるため、アキレス腱反射を評価することで、全体的な健康状態の確認ができます。
特に高齢者や神経筋疾患のリスクが高い人々においては、この反射の評価は重要なスクリーニング手段となります。

早期に異常を発見することで、適切なリハビリテーションや治療を行うことができ、患者の生活の質の向上や疾患の進行を遅らせることが期待されます。

アキレス腱反射の評価は、神経系と筋肉系の健康状態を総合的に確認するための重要な診断手段なんだ!
この反射テストを通じて、脊髄や末梢神経の障害、筋肉疾患の早期発見が可能となり、適切な治療やリハビリテーションを迅速に開始できるんですね!

アキレス腱反射の異常はどんな症状を引き起こすか?

そもそもアキレス腱反射の異常とは、どんな神経系の問題を示しているのでしょうか?
ここではその具体的な症状として…

  • 反射の消失
  • 反射の減弱
  • 反射の亢進
  • クローヌ病
  • 糖尿病

…について解説します。

反射の消失

アキレス腱反射が全く認められない場合、これは末梢神経の損傷や脊髄損傷を示唆する重要な兆候です。
例えば、坐骨神経の損傷や圧迫は、下肢への神経信号の伝達を妨げ、アキレス腱反射の消失を引き起こすことがあります。
また、脊髄損傷の場合、脊髄の特定の部位が圧迫されたり損傷されたりすることで、反射の経路が途絶え、反射が消失することが報告されています。

このような症状が見られる場合、MRIや神経伝導速度検査などの追加の診断が必要となり、適切な治療やリハビリテーションが早急に求められます。

反射の減弱

アキレス腱反射が弱い場合、これは神経伝導速度の低下や部分的な神経損傷を示す可能性があります。
例えば、糖尿病性ニューロパチーでは、慢性的な高血糖が末梢神経にダメージを与え、神経伝導速度が遅くなることがあります。
これにより、アキレス腱反射が減弱することがあります。また、老化による神経機能の低下も反射の減弱を引き起こす一因です。

反射が減弱している場合、神経機能を改善するための治療や生活習慣の見直しが必要となり、定期的なフォローアップが推奨されます。

反射の亢進

アキレス腱反射が過敏になる(亢進する)場合、中枢神経系の問題を示す可能性があります。
脳卒中や脊髄損傷、または脳腫瘍などが原因で中枢神経の制御が失われると、抑制されるべき反射が過剰に現れることがあります。
例えば、脳卒中では脳の特定の部分がダメージを受けることで、反射の制御が失われ、反射が過敏になることがあります。

亢進した反射は、患者の日常生活に支障をきたす可能性があり、リハビリテーションや薬物療法が必要です。

クローヌ病

クローヌ病は消化管に慢性の炎症を引き起こす疾患であり、栄養不足が神経機能に影響を与えることがあります。
クローヌ病の患者さんでは、特にビタミンB12やその他の栄養素の不足が神経の健康を損ない、アキレス腱反射が消失することが報告されています。
このような栄養不足による神経機能低下は、適切な栄養補給やサプリメントの摂取によって改善されることがあります。

早期の栄養管理と医療的介入が、クローヌ病患者の神経機能の維持に不可欠です。

糖尿病

糖尿病患者では、神経障害(ニューロパシー)が一般的であり、これがアキレス腱反射の消失につながることがあります。
糖尿病性ニューロパチーは、持続的な高血糖が神経を損傷し、手足の感覚や運動機能に影響を与えることがあります。
この結果、アキレス腱反射が消失することが観察されます。糖尿病患者においては、血糖管理とともに、定期的な神経学的評価が重要です。

早期発見と適切な治療により、ニューロパチーの進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能となります。

アキレス腱反射の異常は、末梢神経や脊髄、中枢神経系の問題を示す重要な兆候であり、神経機能の低下や損傷、過敏性などを評価するための手がかりとなるんだ!
これらの異常は、糖尿病やクローヌ病などの特定の疾患とも関連しており、早期診断と適切な治療が患者の予後に大きく影響するんですね!

アキレス腱反射の検査方法

アキレス腱反射の検査方法として、ここでは…

  • 臥位での検査
  • 膝立位での検査
  • 増強法

…について解説します。

臥位での検査

臥位でのアキレス腱反射の検査は、患者が横になった状態で行われます。
検査者は、患者の片脚を軽く外転させ、膝を屈曲させて反対側の脚の上にのせるようにします。
次に、検査者は足の裏を持ち、足関節を背屈させてアキレス腱を露出させ、反射槌でアキレス腱の中央部を軽く叩打します。
この方法は、特に入院患者に対して簡単に実施できるため、広く使用されています。
ただし、臥位では健常人でも反射が出現しないことがあるため、検査結果の解釈には注意が必要です。

このため、臥位で反射が見られない場合でも、必ずしも神経機能の異常を示すものではありません。

膝立位での検査

膝立位でのアキレス腱反射の検査は、ベッドや椅子の上で患者を膝立ちさせ、両足が宙に浮くようにすることで行われます。
患者は背部と腰部をまっすぐにし、両手を壁につけて肘関節を伸ばします。
検査者は、患者に足関節の力を抜くように伝え、足底を軽く押しながらアキレス腱をやや進展させ、反射槌でアキレス腱の中央部を叩打します。
この方法は臥位よりもアキレス腱反射が認められやすいため、臥位で反射が出現しなかった場合に有用です。

膝立位での検査により、より正確な神経機能の評価が可能となり、特に疑わしい症例に対しては信頼性の高い結果が得られます。

増強法

膝立位での検査でもアキレス腱反射が認められない場合、増強法を試みることが推奨されます。
増強法では、患者を膝立位にさせた状態で、さらに両手で強く拳を握らせ、その間にアキレス腱を叩打します。
この方法により、神経筋反射を増強させ、微弱な反射も確認しやすくなります。
増強法で反射が認められれば「アキレス腱反射の減弱」と判断され、反射が全く認められなければ「アキレス腱反射の消失」と評価されます。
増強法は特に、初見で反射が確認できなかった場合に重要であり、神経学的評価の精度を高めるために不可欠な手法です。

この方法を適用することで、より詳細かつ正確な診断が可能となり、適切な治療方針の決定に役立ちます。

アキレス腱反射の検査は、臥位、膝立位、増強法を用いて行われ、それぞれ異なる方法で神経機能を評価するんだ!
これにより、末梢神経や脊髄の問題を正確に診断し、適切な治療計画を立てることが可能なんですね!

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