ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)は、自閉症スペクトラム障害の診断を支援するための詳細な半構造化面接ツールです。
親やケアギバーからの情報を基に、社会性、コミュニケーション、行動パターンを評価します。
本記事ではADI-R日本語版について解説します。
ADI-R日本語版とは?
ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)日本語版は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断に使用される評価ツールです。
元々は英語で開発され、日本語版はそれを日本の文化や言語に合わせて翻訳・調整したものです。
ADI-Rは、主に親や保護者に対して行われる半構造化面接で、子供の行動や発達の歴史に関する広範囲な情報を収集します。
ADI-Rの主要な3つの領域
ADI-Rは以下の3つの主要な領域をカバーしています。
社会的相互作用
子どもの社会的関わり方や他人との関係について評価します。
コミュニケーション
言語的・非言語的コミュニケーションの能力や特性を評価します。
限定的、反復的な行動パターン
特定の興味や行動の固定化、反復的な行動などを評価します。
開発について
ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)の開発は、もともと自閉症の診断と研究のためのツールとして行われました。
このインタビュー手法は、自閉症の特徴とされる行動パターンを詳細に調査するために設計されています。
開発の経緯は以下のような流れです。
初期の開発
ADI-Rは、1980年代にMichael Rutter, Ann Le Couteur、そしてCatherine Lordによって開発されました。
このツールは、もともとは「Autism Diagnostic Interview (ADI)」として知られていました。
改訂版の開発
初期バージョンの経験とフィードバックに基づき、このインタビューは改訂され、「Revised」(改訂)版として知られるようになりました。
この改訂版では、質問項目が精緻化され、診断基準との整合性が高められました。
主要な領域の特定
ADI-Rは、自閉症の診断において重要とされる三つの主要な領域、つまり社会的相互作用、コミュニケーション、限定的・反復的な行動パターンに焦点を当てています。
国際的な展開
ADI-Rは英語版から多数の言語に翻訳され、世界中で使用されています。
日本語版を含む各翻訳版は、元の英語版の概念と構造を保ちつつ、各国の文化的・言語的特性に適応させています。
臨床と研究での使用
ADI-Rは、臨床的診断のためのツールとしてだけでなく、自閉症スペクトラム障害に関する研究においても広く使用されています。
目的
ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)の主な目的は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断と研究を支援することです。
このツールは、特に以下の目的で使用されます。
詳細な行動歴の収集
ADI-Rは、対象者の社会的相互作用、コミュニケーション、限定的・反復的な行動の詳細な歴史を収集することを目的としています。
これには、早期の発達、家族の歴史、以前の診断、そして現在の行動パターンに関する情報が含まれます。
ASDの診断基準の確認
ADI-Rは、DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)やICD(International Classification of Diseases)など、主要な診断基準に合わせて設計されています。
このツールを使用することで、診断専門家はこれらの基準に沿った詳細な情報を得ることができます。
診断の一貫性と精度の向上
ADI-Rは、診断の一貫性と精度を向上させることを目的としています。半構造化面接を通じて、臨床家は標準化された方法で情報を収集し、ASDの特徴に関するより深い洞察を得ることができます。
研究用データの提供
ADI-Rは、自閉症に関する研究においても重要なツールです。
このインタビューから得られるデータは、ASDの特徴、原因、治療法に関する研究に貢献しています。
個別化された介入計画の支援
ADI-Rによる詳細な評価は、個々の患者に適した教育的、治療的介入を計画する際の基盤を提供します。
国際的な標準化
さまざまな言語で利用できることにより、ADI-Rは世界中で一貫した診断基準を提供し、国際的な研究や臨床実践におけるコミュニケーションを促進します。
対象
ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)の主な対象は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断が疑われる子供や成人です。
具体的には、次のようなグループが対象となります。
ASDの可能性がある子供たち
早期の発達段階で自閉症の特徴が見られる子供たちが主な対象です。
これには、社会的相互作用の難しさ、言語的・非言語的コミュニケーションの遅れ、限定的・反復的な行動パターンなどの特徴が含まれます。
成人
自閉症は一生を通じて続くため、成人期に自閉症スペクトラム障害の診断を受けることもあります。
ADI-Rは、成人におけるASDの診断にも使用されることがあります。
幅広い知的能力を持つ個人
ADI-Rは、知的障害の有無にかかわらず、幅広い知的能力を持つ個人に対して用いられます。
自閉症スペクトラムには、知的能力が高い個人から重度の知的障害を持つ個人まで幅広い範囲が含まれるためです。
方法
ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)の実施方法は、以下のステップに従って行われます。
専門家による実施
ADI-Rは通常、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断や研究に経験がある心理学者、精神科医、または関連分野の訓練を受けた専門家によって実施されます。
面接官は、この特定の評価ツールの使用に特化したトレーニングを受けることが一般的です。
半構造化面接
ADI-Rは半構造化面接の形式をとり、特定のガイドラインに沿って行われます。
これには、対象者の行動、発達の歴史、および家族の背景に関する一連の詳細な質問が含まれます。
主要な領域の評価
面接では、自閉症の診断に重要な…
- 社会的相互作用
- コミュニケーション
- 限定的・反復的な行動パターン
…の3つの主要な領域に焦点を当てます。
情報の収集
面接は、対象者の親や主要なケアギバーから情報を収集することを目的としています。
質問は対象者の幼少期から現在に至るまでの行動や発達に関するものが多く、可能な限り具体的な例や詳細を求めます。
スコアリング
面接が終了したら、面接官は収集した情報を基にして、特定のスコアリングシステムに従って結果を評価します。
このスコアリングは、ASDの診断基準と整合性を持たせるために用いられます。
診断への貢献
ADI-Rの結果は、自閉症スペクトラム障害の診断プロセスの一環として使用されます。
ただし、ADI-R単独で診断を下すものではなく、他の臨床的評価や行動観察と併用されることが一般的です。
個々のニーズに基づいた対応
評価結果は、対象者に適した支援や介入プログラムを計画するための重要な情報を提供します。