DENVER-Ⅱ(デンバー発達判定法)は、乳幼児の発達を評価するためのスクリーニングツールです。
このテストは、早期発見と介入を目的とし、子どもたちの成長を支援します。
本記事ではこの目的、特徴、方法や注意点などについて解説します。
DENVER-Ⅱとは?
DENVER-II(デンバー第二版発達スクリーニング検査)は、乳幼児から幼児期にかけての子どもの発達を評価するためのスクリーニングツールです。
この検査は、子どもの発達上の遅れや問題を早期に発見し、必要に応じて早期介入を促すことを目的としています。
DENVER-IIは、様々な発達領域(粗大運動、細かい運動・適応、言語、社会的)における子どものスキルを観察し、評価するための具体的なアイテムが含まれています。
目的
DENVER-Ⅱの検査目的として…
- 乳幼児の発達障害の早期発見
- 発達診断の質の向上
- 発達遅延のスクリーニングとしての利用
- 集団検診や個人健診での活用
- 療育施設での経過観察
乳幼児の発達障害の早期発見
DENVER-Ⅱは乳幼児期における発達障害や遅延を早期に発見するためのスクリーニングツールです。
このテストを用いることで、言語発達、細かな運動技能、大まかな運動技能、社会性の各領域における発達の遅れを評価できます。
早期に問題を特定することで、必要な介入やサポートを迅速に開始でき、子どもの将来的な発達を促進することが可能になります。
早期介入は、長期的な学習障害や社会的適応の問題を減少させる効果があるため、DENVER-Ⅱは重要な役割を果たします。
発達診断の質の向上
従来の小児科診断が疾病中心であったのに対し、DENVER-Ⅱは発達の側面に焦点を当てます。
これにより、乳幼児の健康診断の質が向上し、発達に関する問題を総合的に評価することができるようになります。
健診や発達相談において、DENVER-Ⅱを用いることで、医師や保健専門家は子どもの発達状況を客観的かつ包括的に評価し、適切なアドバイスや介入計画を立案することが可能です。
発達遅延のスクリーニングとしての利用
DENVER-Ⅱは、特に小児科外来や保健所、保育所、幼稚園などで「ちょっと気になる」と思われる子どもの発達遅延をスクリーニングするために利用されます。
この手法を使うことで、専門家は短時間で子どもの発達状況を概観し、必要に応じてより詳細な評価や専門的な支援を推奨できます。
スクリーニングとしての役割は、問題の早期発見と早期介入への道を開くことであり、子どもの発達可能性を最大限に引き出すことに貢献します。
集団検診や個人健診での活用
DENVER-Ⅱは集団検診や個人健診の際にも広く活用されます。保健センターや学校、地域社会で行われる健康診断において、このツールを使用することで、多くの子どもたちの発達状況を効率的に評価することが可能です。
このような広範なスクリーニングを通じて、発達に問題がある可能性のある子どもを早期に特定し、適切なフォローアップやサポートを提供することができます。
療育施設での経過観察
療育施設においては、DENVER-Ⅱが療育の経過を評価するために定期的に使用されます。
このツールを用いることで、療育プログラムの効果を定期的に評価し、子どもの発達進捗を客観的に追跡することができます。
療育施設でのこのような利用は、個々の子どもに最適な支援や介入を継続的に提供し、その発達を促進することを目的としています。
特徴
ではこのDENVER-Ⅱの特徴とはなにがあげられるでしょうか?
ここでは…
- 発達の4つの主要領域をカバー
- 早期スクリーニングとしての役割
- 簡易性と利便性
- 二段階スクリーニングプロセス
…について解説します。
発達の4つの主要領域をカバー
DENVER-Ⅱは、乳幼児と幼児の発達を評価する際に、社会性(社会的接触)、細かな運動技能(手先の技術)、大まかな運動技能(大きな筋肉の運動)、言語発達の4つの主要な領域を包括的にカバーします。
この広範なアプローチにより、子どもの発達過程を多面的に観察し、遅延や特異性がある領域を特定できるため、適切な介入や支援が可能になります。
各領域は子どもの成長において重要な役割を果たし、全体的な発達状態を理解する上で不可欠です。
早期スクリーニングとしての役割
DENVER-Ⅱは、特に乳幼児期の子どもを対象とした早期スクリーニングツールとして設計されています。
このツールは、発達上の問題を早期に識別し、必要な場合には追加の評価や専門的な介入を推奨するためのものです。
早期発見により、子どもが発達の重要な時期を最大限に活用し、将来的な困難を減らすための支援を受けることができます。
簡易性と利便性
DENVER-Ⅱは、使用が簡単であり、基本的な訓練を受けた保健専門家や教育者によって広く利用されることができます。
スクリーニングに必要な用具は一般的で、簡単に入手できるものばかりであり、記録票や判定用具を用いて客観的な判定が可能です。
この手軽さは、多忙な臨床環境やコミュニティベースの設定での使用を促進します。
二段階スクリーニングプロセス
DENVER-Ⅱは、初期スクリーニングとしての役割を果たすと同時に、より詳細なフォローアップ評価のための基準も提供します。
予備判定票を使用して初期のスクリーニングを行い、その結果に基づいて、一部の子どもたちに対してより詳細な評価を行うことが推奨されます。
このアプローチにより、リソースを効率的に使用し、より深刻な支援が必要な子どもたちに焦点を当てることが可能になります。
幅広い設定での活用可能性
DENVER-Ⅱは、小児科外来、保健所、保育所、幼稚園、療育施設、集団検診、個人健診など、さまざまな環境での使用に適しています。
このユニバーサルな設計により、多様なニーズに対応し、広範囲にわたる子どもたちの発達状況を評価することができます。
社会的、教育的、医療的なコンテキストでの発達スクリーニングの重要性が高まる中、DENVER-Ⅱは貴重なツールとしての地位を確立しています。
方法
DENVER-Ⅱの実施方法は、簡潔かつ体系的なアプローチを特徴としています。
ここでは…
- 準備
- 評価の開始
- テスト項目の実施
- 記録と評価
- フォローアップ
…のステップで解説します。
準備
まずDENVER-Ⅱの実施に必要な用具(毛糸、鉛筆、小さな人形、小さなベル、コップ、積み木など)を準備します。
その上で静かで、乳幼児がリラックスし、集中できるような環境を整えます。
そして評価者は、子どもの年齢に応じた記録票を用意し、テストを実施する前に確認します。
評価の開始
子どもの正確な年齢(月齢)を計算し、それに基づいて評価を開始します。
そして社会性、細かな運動技能、大まかな運動技能、言語発達の4つの領域から、評価を始めます。
テスト項目の実施
各テスト項目について、子ども(または親に対して)何をするかを明確に説明します。
その後子どもが各テスト項目を実施できるように支援します。
各項目は、子どもの興味を引き、達成可能でなければなりません。
テスト中は子どもの反応と遂行能力を観察し、記録します。
評価は、成功、試み、不成功の3つのカテゴリーに基づいて行います。
記録と評価
テスト後は実施したテスト項目ごとに、子どものパフォーマンスを記録票に記入します。
記録されたデータを分析し、子どもの発達が年齢に適しているか、または遅れがあるかを判断します。
フォローアップ
全てのテスト項目に対する子どものパフォーマンスを総合的に評価し、発達の遅れが認められる場合は、さらなる評価や専門的な介入が必要かどうかを判断します。
そして評価結果と、必要であれば推奨される次のステップについて保護者に説明します。
発達の遅れが認められる場合、適切な介入計画を立て、専門的な支援を導入します。
注意点
DENVER-Ⅱの検査上の注意点として…
- 正確な年齢の確認
- 適切な環境設定
- 評価者の姿勢
- テスト指示の明確化
- 結果の正確な解釈
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
正確な年齢の確認
DENVER-Ⅱを実施する際、最も基本的で重要なステップの一つは、子どもの正確な年齢(月齢)を確認することです。
この年齢がテスト結果の解釈に直接影響を及ぼすため、正確な計算が不可欠です。
誤った年齢の入力は、評価結果の誤解釈につながり、不適切な介入や無用な心配を引き起こす可能性があります。
したがって、テストを開始する前に、子どもの生年月日から正確な月齢を計算し、それを記録票に記入することが重要です。
このプロセスは、子どもが特定の発達段階にあるかどうかを正確に評価するための基礎を築きます。
適切な環境設定
子どもがリラックスして最大限の能力を発揮できるように、静かで快適な環境を整えることが重要です。
騒がしい場所や子どもが不慣れな環境では、テストの結果に影響を及ぼす可能性があります。
評価を行う部屋は適度に温かく、十分な照明があることを確認し、必要な用具がすぐに手に入るように準備しておくことが望ましいです。
また、評価中は、子どもが集中できるように外部からの干渉を最小限に抑えることが求められます。
適切な環境設定は、子どもが安心してテストに取り組むことを助け、より正確な評価結果を得るために不可欠です。
評価者の姿勢
評価者は、子どもに対して忍耐強く、支持的な態度を取ることが必要です。
子どもがテスト項目に対して不安を感じたり、興味を示さない場合でも、評価者は積極的に励まし、関心を引き出すよう努めるべきです。
評価者の言葉遣い、声のトーン、身体言語は、子どもの反応に大きく影響を及ぼします。
評価者が温かく、受容的な態度を示すことで、子どもはテストに対する抵抗感を減らし、より自然な行動を示すようになります。
これにより、評価者は子どもの真の能力と発達状況をより正確に把握することができます。
テスト指示の明確化
各テスト項目を実施する際には、子どもが理解できるように指示を明確かつ簡潔に伝えることが重要です。
指示が不明瞭だと、子どもは課題の要求を正しく理解できず、その結果、能力を正確に評価することができなくなります。
特に言語発達が進んでいない幼児に対しては、視覚的な示示や身振りを用いることが有効です。
指示を与えた後は、子どもが課題に取り組むのを静かに見守り、必要に応じて適切な支援を提供することが望ましいです。
結果の正確な解釈
DENVER-Ⅱの結果を解釈する際には、単一のテスト項目の結果に過度に依存しないことが重要です。
子どもの発達は複雑で多面的なため、全体的なパターンや傾向を見て評価する必要があります。
また、文化的背景や家庭環境など、子どもの発達に影響を与える可能性のある要因も考慮することが重要です。
不確実な結果や発達の遅れが疑われる場合には、専門家によるさらなる評価やフォローアップが推奨されます。
正確な解釈と適切なフォローアップにより、必要な場合には早期介入が可能となり、子どもの発達を最大限に支援することができます。