第6脳神経(外転神経)の麻痺は、眼球を外側に向ける機能に障害をもたらす状態です。
本記事では、定義や原因、症状や治療法について解説します。
第6脳神経とは?
第6脳神経は”外転神経”とも呼ばれ、脳神経の6番目に位置します。
この神経は外転神経核から眼球の外側直筋まで伸びるもので、左右に1本ずつ存在します。
第6脳神経(外転神経)麻痺の原因
この麻痺は、次のような様々な病気によって起こります。
- 糖尿病
- 頭部外傷
- 腫瘍
- 多発性硬化症 (Multiple Sclerosis:MS)
- 脳動脈瘤
- 脳の感染症
- 耳または眼の感染症の合併症
- 脳内出血
- ウェルニッケ脳症(一般的には慢性アルコール中毒による)
- 特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)
- 高血圧
- 上気道感染症(小児の場合)
以下にそれぞれ簡単に解説します。
糖尿病
糖尿病は高血糖が長期間持続することで、神経にダメージを与える可能性があります。
外転神経はこのダメージを受けやすい神経の一つであり、外転神経麻痺の原因となります。
頭部外傷
頭部への外傷により外転神経が損傷を受けることがあります。
転倒や交通事故などが原因となり、神経の機能が一時的または永久的に失われることがあります。
腫瘍
脳やその周辺組織に生じる腫瘍が外転神経を圧迫することで、神経の機能に影響を与える可能性があります。
腫瘍が神経に圧迫を及ぼすことで外転神経麻痺が引き起こされることがあります。
多発性硬化症 (Multiple Sclerosis:MS)
多発性硬化症は中枢神経系を攻撃する自己免疫疾患であり、外転神経にも影響を及ぼす可能性があります。
炎症が神経の髄鞘を破壊し、神経伝達が阻害されることで外転神経麻痺が生じることがあります。
脳動脈瘤
頭蓋内の動脈に異常な膨らみである脳動脈瘤が生じることで、周囲の神経組織に圧迫を及ぼすことがあります。
この圧迫が外転神経に影響を与え、外転神経麻痺が引き起こされる可能性があります。
脳の感染症
脳内に感染症が生じると、神経組織が損傷を受ける可能性があります。
外転神経が感染によって影響を受け、麻痺を引き起こすことがあります。
耳または眼の感染症の合併症
耳や眼の感染症が重症化し、周囲の組織に影響を及ぼす場合、外転神経にもダメージを与える可能性があります。
外転神経が受けた損傷により、目の外側直筋の運動が制御できなくなります。
脳内出血
脳内で出血が起こると、周囲の神経組織にダメージを与える可能性があります。
脳内出血が外転神経を巻き込んだ場合、外転神経麻痺が発生することがあります。
ウェルニッケ脳症(一般的には慢性アルコール中毒による)
一般的には慢性アルコール中毒により引き起こされる疾患で、神経障害をもたらすことがあります。
ウェルニッケ脳症が外転神経に影響を与える場合、外転神経麻痺が生じることがあります。
特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)
頭蓋内圧が亢進する疾患で、脳の圧迫を引き起こす可能性があります。
外転神経が圧迫を受けることで、外転神経麻痺が発生することがあります。
高血圧
持続的な高血圧が神経に悪影響を与えることがあります。
外転神経が血流の問題によって機能障害を起こすことがあります。
上気道感染症(小児の場合)
子どもの上気道感染症が進行すると、周囲の神経にも影響を及ぼすことがあります。
特に小児では、外転神経麻痺が上気道感染症の合併症として発生することがあります。
第6脳神経(外転神経)麻痺の症状
外転神経麻痺の症状としては…
- 両眼性水平複視
- 眼球の外転運動障害
- 眼球の内側偏位
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
両眼性水平複視
外転神経麻痺が起こると、麻痺側を見たときに両眼が水平方向にずれて見える現象が生じます。
これは、片方の外転筋が適切に機能せず、眼球の運動に不均衡が生じるためです。
眼球の外転運動障害
外転筋が麻痺するため、麻痺側の眼球を外側に向けることが難しくなります。
この結果、外向きの視線運動が制限されます。
眼球の内側偏位
麻痺が生じた側の眼は、十分に外側に向けることができず、まっすぐ前を見ようとすると内側に向いてしまうことがあります。
これによって、二重視が起こることがあります。
第6脳神経麻痺への治療法
第6脳神経麻痺の治療法は、原因によって異なります。
原因に対する治療を行えば、通常は麻痺も消失します。
第6脳神経麻痺の予後について
原因不明の麻痺や、血管の閉塞による麻痺は、治療しなくても通常は2カ月以内に消失することがあるようです。