運動負荷試験終了の理由 – 症状・徴候・血圧・心電図

運動負荷試験を行っていると、場合によっては患者の状態が変化し、早急に終了を判断することがあります。
本記事では、この運動負荷試験の終了の理由、目安について解説します。

運動負荷試験終了の理由

では、運動負荷試験中に患者がどのような状態になったら終了する目安にするべきなのでしょうか?
ここでは患者の…

  • 症状
  • 徴候
  • 血圧
  • 心電図

…について解説します。

症状

運動負荷試験を終了すべき、患者の症状ですが…

  • 狭心痛
  • 呼吸困難
  • 失神
  • めまい
  • ふらつき
  • 下肢疼痛 (跛行)

…があげられます。

狭心痛(Angina Pectoris)

運動中に胸部や上腕に圧迫感や痛みの症状が現れたら、終了を判断します。
これは心臓の冠動脈が狭窄し、酸素供給が不足するため起こります。

呼吸困難(Dyspnea)

運動中に呼吸が困難になる症状が確認できても、運動負荷を中止します。
この背景には、心臓や肺の疾患、肺血栓症、喘息などがあるかもしれません。

失神(Syncope)

運動中に突然意識を失う状態が確認できたら、安全な位置で横になり、早急な対応が必要になります。
低血圧、不整脈、心停止、脳血管障害などが原因が考えられます。

めまい(Dizziness)

運動中にめまいやふらつきを感じても運動を中断し安静にする必要があります。
内耳のバランス感覚の障害、血圧低下、低血糖などが原因となることがあります。

ふらつき(Lightheadedness)

運動中に頭がクラクラする感覚がある場合は、休息を取り、必要に応じて医師や看護師の対応を依頼します。
低血糖、低血圧、脱水症状、運動時の血液循環の変化などが関与することがあります。

下肢疼痛(跛行)

運動中に下肢の疼痛や歩行困難が生じる症状が確認できたら、運動負荷を中止し、患者の状態を評価する必要があります。
動脈疾患や神経の障害が原因となります。

徴候

運動負荷試験を終了すべき、患者の徴候ですが…

  • チアノーゼ
  • 顔面蒼白
  • 冷汗
  • 運動失調
  • 異常な心悸亢進

…があげられます。

チアノーゼ(Cyanosis)

運動中に皮膚や粘膜が青紫色に変色するチアノーゼが現れた場合は、運動負荷を中止し、十分な酸素供給と循環の回復を図る必要があります。
これは、酸素供給不足や循環障害によって起こります。

顔面蒼白(Pallor)

運動中に顔面が著しく白くなる顔面蒼白が生じた場合も、運動を中断し、適切な医療評価と処置を行います。
血流の低下や貧血、血管収縮などが原因と考えます。

冷汗(Diaphoresis)

運動中ん患者に冷汗が現れた場合は、適度な休息と水分補給が必要です。
交感神経系の活動亢進や体温調節の異常が原因となります。

運動失調(Ataxia)

運動中に協調性や運動の正確性が乱れる症状である運動失調が現れた場合は、安全を確保し運動を中断する必要があります。
これには神経障害や脳血流の異常が関与することがあります。

異常な心悸亢進(Palpitations)

運動中に心臓の鼓動が異常に速く感じられる心悸亢進が生じた場合も、運動を中断し、医師や看護師の対応を依頼します。
不整脈や心血管疾患、過剰な身体へのストレスが原因となることがあります。

血圧

運動負荷試験を終了すべき、患者の血圧の状態ですが…

  • 収縮期血圧の上昇不良、もしくは進行性低下
  • 異常な血圧上昇

…があげられます。

収縮期血圧の上昇不良、もしくは進行性低下

運動中に収縮期血圧(最高血圧)が適切に上昇しないか、逆に低下してしまう状態です。
正常な血圧上昇が期待される中での低下は、循環系や心臓の機能障害を示唆し、十分な酸素供給や血液循環が確保されていないことを意味します。
この徴候が現れた場合は、運動を中断し医師の評価を受ける必要があります。

異常な血圧上昇

運動中に異常な高い血圧(収縮期血圧が225mmHg以上)が観察されても運動を中断します。
極度の血圧上昇は、心血管系や血管の病態によるものであり、循環への負担が増加していることを示唆します。

心電図

運動負荷試験を終了すべき、患者の心電図の状態ですが…

  • 明らかな虚血性ST-T変化
  • 調律異常
  • Ⅱ~Ⅲ度房室ブロック

…があげられます

明らかな虚血性ST-T変化

運動負荷中に心筋虚血が生じると、心電図上でSTセグメントやT波に異常が現れます。
STセグメントの抱き上げやT波の逆転、平坦化などが観察されることがあります。

これらの変化は心筋の血液供給不足や冠動脈疾患を示唆し、運動を中断し、十分な評価と治療を行う必要があります。

調律異常

心電図における調律異常としては、著明な頻脈ないし徐脈、心室性頻脈、頻発する不整脈、心房細動、R on T 心室期外収縮などがあげられます。
運動負荷中に心拍のリズムや頻度に異常が生じることがあります。
心拍数の急激な増加や減少、異常なリズムの出現は、心臓の電気的な異常や不整脈の存在を示唆します。

これらの調律異常が現れた場合は、安全を確保するために運動を中断し、心電図の評価と適切な対処を行う必要があります。

Ⅱ~Ⅲ度房室ブロック

運動負荷中に心臓の伝導系に問題が生じ、房室ブロックが現れることがあります。
ブロックの程度によって心室への信号伝達が妨げられ、心拍数やリズムに異常が生じる可能性があります。
特に高度なブロック(III度房室ブロック)では、心室のリズムが独立してしまうため、適切な治療が必要となります。

運動負荷中にブロックが現れた場合は、安全を確保するために運動を中断し、心電図の評価と適切な管理を行う必要があります。

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