作業分析といってもその対象技能の要素は複数あります。
本記事では作業分析の対象技能について解説します。
作業分析の対象技能
作業療法において、患者の作業分析を行う際”患者のどの技能を分析するか?”という目的を意識しないといけません。
そもそも作業分析での分析対象となる技能は…
- 運動要素技能
- 感覚要素技能
- 認知要素技能
- 心理・情緒要素技能
- 対人・社会的要素技能
…の5つがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。
運動要素技能
運動要素技能の分析は、作業療法において重要な部分になります。
その手順としてここでは…
- 作業の観察
- 要素技能の特定
- 分析の方法を選択
- 分析の観点を絞る
- 水準の決定
- 具体的な行為者の分析
- 分析のポイントを整理
…について解説します。
作業の観察
実際の作業を観察し、どのような運動が含まれているかを把握します。
これには姿勢、動作、手の動き、体の動きなどが含まれます。
要素技能の特定
作業中に必要な要素技能を特定します。
これには筋活動、関節運動、身体部位の使用などが含まれます。
分析の方法を選択
目的に応じて適切な分析方法を選択します。
目視による観察や機器による測定など、さまざまな方法があります。観察には主観的な側面がありますが、機器による測定は客観的なデータを提供します。
分析の観点を絞る
筋活動、関節運動、関連する身体部位、他の系との関係など、分析の観点を絞ります。
水準の決定
作業を実行するために最低限必要な水準を決めます。
これにより、作業を達成するために必要な要素技能のレベルを把握します。
具体的な行為者の分析
具体的な作業を行う人の機能や動きを確認し、実際に使用されている機能を把握します。
分析のポイントを整理
運動要素技能分析のポイントを整理し、重要な観点をまとめます。
これにより、作業療法士が重点を置くべきポイントを明確にします。
感覚要素技能
また作業分析における感覚要素技能の分析ですが…
- 感覚の特定
- 精度の確認
- 実践的な視点での分析
- 感覚要素技能の分析用紙
- 臨床的利用の観点からの分析
…について解説します。
感覚の特定
作業中にどのような感覚が関与しているかを特定します。
視覚、聴覚、触覚、運動感覚など、様々な感覚が関連する場合があります。
精度の確認
作業を正常に行うために必要な感覚や知覚の種類、その程度を確認します。
作業に必要な感覚の種類とその精度を理解することが重要です。
実践的な視点での分析
実際の作業を行う際にどの感覚がどのように使われているかを確認し、治療的な効果や作業への工夫の可能性を検討します。
感覚要素技能の分析用紙
感覚要素技能の分析用紙を使用して、必要な感覚やその程度を詳細に記録し、把握します。
臨床的利用の観点からの分析
必要に応じて、臨床的な観点から分析を行います。
患者の実際の日常生活や作業における感覚の使用状況や治療的に使える項目を考慮します。
認知要素技能
認知要素技能の分析ですが、これは作業療法において患者の認知能力を理解し、適切な支援や介入を設計する上で重要になります。
ここでは次のような手順で解説します。
- 認知能力の特定
- 認知能力の評価
- 臨床的利用の観点からの分析
- 適応年齢水準の確認
- 分析の主観的判断
- Piagetの認知発達段階の参考
認知能力の特定
認知能力には、記憶、問題解決能力、言語理解、理論的思考、推論能力などが含まれます。
患者の作業中にどのような認知能力が関与しているかを特定します。
認知能力の評価
作業を遂行するためにどのような認知能力が必要かを評価します。
作業中にどの程度の認知能力が必要か、そのレベルを把握することが重要です。
臨床的利用の観点からの分析
患者の日常生活でどの認知能力が重要であり、その認知能力を高めるための方法や治療的な利用の観点から分析します。
適応年齢水準の確認
患者の作業中における認知発達の水準を確認し、適切な支援や介入を設計する際に役立ちます。
分析の主観的判断
分析は分析者の主観的判断に基づいて行われます。
各認知能力の必要性やレベルを、分析者の判断によって高度から低度、あるいは有無を判断します。
Piagetの認知発達段階の参考
Piagetの認知発達段階を参考にして、患者の認知能力の特定の発達段階を把握し、評価に活用することができます。
心理・情緒要素技能
心理・情緒要素技能の分析は、患者の心理的状態や情緒的側面を理解しする上で重要になります。
ここでは手順として…
- 心理・情緒要素の特定
- 必要な技能とその程度の判断
- 臨床的利用の観点からの分析
- 主観的判断による分析
- 個々の技能の詳細な観察
- 技能の治療的利用の検討
以下にそれぞれ解説します。
心理・情緒要素の特定
作業中に関与する心理・情緒要素を特定します。
自律性、ストレスへの対処、防衛機制、動機づけ、自己評価、統合性など、様々な要素が含まれます。
必要な技能とその程度の判断
作業を遂行するために必要な心理・情緒要素技能と、その程度を主観的に判断します。
例えば、自己統制やストレス管理の程度などを考慮します。
臨床的利用の観点からの分析
患者の日常生活でどのような心理的スキルが重要であり、そのスキルを高めるための方法や治療的な利用の観点から分析します。
主観的判断による分析
分析は主観的な判断に基づいて行われます。
各技能の必要性やレベルを、分析者の判断によって高度から低度、あるいは有無を判断します。
個々の技能の詳細な観察
必要に応じて、患者の特定の心理的スキルや情緒的な側面をより詳細に観察し、分析の深化を図ります。
技能の治療的利用の検討
分析された心理・情緒要素技能を治療的に活用できる方法や介入策を検討します。
患者の改善や適応を促進するためのアプローチを設計します。
対人・社会的要素技能
対人・社会的要素技能の分析は、患者の人間関係や社会的な能力を理解し、適切な支援や介入を計画する上で重要です。
以下はその基本的な手順です。
- 対人関係の特定
- 対人関係に必要な技能の評価
- 臨床的利用の観点からの分析
- 対人関係技能の主観的判断
- 技能の治療的利用の検討
それぞれ解説します。
対人関係の特定
患者が持つ対人関係や人間関係の種類を特定します。
1対1の関係や集団関係、役割行動などが含まれます。
対人関係に必要な技能の評価
作業や日常生活で必要な対人関係の技能を評価します。
コミュニケーション能力、協調性、対象関係などが考慮されます。
臨床的利用の観点からの分析
患者の日常生活でどのような対人関係が重要であり、その関係を改善するための方法や治療的な利用の観点から分析します。
対人関係技能の主観的判断
分析は主観的な判断に基づいて行われます。
各対人関係技能の必要性やレベルを、分析者の判断によって高度から低度、あるいは有無を判断します。
技能の治療的利用の検討
分析された対人関係技能を治療的に活用できる方法や介入策を検討します。
患者の人間関係や社会的適応を促進するためのアプローチを設計します。