作業療法場面で、クライアントの就労支援を考えたときにきちんと体系化されパッケージングされた評価、訓練ツールって少ない気がします。
既存の評価バッテリーを組み合わせて数値化していく。
もちろん多角的に評価できるのでメリットはありますが、評価するセラピストにもよるので属人的な方法で根拠に弱いかなと。
そこで今回は、職場適応促進のためにパッケージングされた評価バッテリー「トータルパッケージ」について。
働くことを支援する「独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構」が開発した評価バッテリーです!
トータルパッケージとは
そもそもこの「トータルパッケージ」とは、支援対象であるクライアントが…
- 作業遂行力
- 対処行動
- 補完手段
- 補完行動
…を獲得し、個々の力に応じたセルフマネジメントスキルを身につけられるようにするための方法になります。
この「セルフマネジメントスキル」って部分がポイントでしょうね。
もちろん支援者が、個々に必要な指導・支援を総合的に提供することができるようにも開発されています。
トータルパッケージを構成している6つの項目
“トータルパッケージ”は以下の6つの項目で構成されています。
- WCST(Wisconsin Card Sorting Test)
- M-メモリーノート
- MWS(簡易版):ワークサンプル幕張版(簡易版)
- MWS(訓練版):ワークサンプル幕張版(訓練版)
- MSFAS:幕張ストレス疲労アセスメントシート
- グループワーク
各検査項目の詳細内容と実施上のポイントは次のとおりになります。
内容 | 目的 | 活用上のポイント |
---|---|---|
WCST | ・遂行機能障害等の有無 ・補完手段の有効性の評価 ・効果的な支援方法の評価 |
・支援者は補完方法の手がかりを観察する ・クライアントが補完方法の有効性を体験できるよう配慮する。 |
M-メモリーノート | ・基本的な情報整理スキルの獲得 | ・スケジュールや行動の管理、行動記録、情報共有のツールとして、クライアントのニーズに合わせて使用する |
MWS(簡易版) | ・ワークサンプルの体験 ・作業における生涯の現れ方や作業の実行可能性、作業耐性等の評価 |
・ワークサンプルを体験し、興味のあるものや取り組みたいもの、苦手なものを特定する ・作業への障害の影響を予測する。 |
MWS(訓練版) | ・作業能率の向上と安定 ・補完方法の特定と使用の訓練 |
・原則としてクライアントとの相談によりワークサンプルを決定する ・難しすぎる課題は除外し、できる課題から取り組み、段階的に訓練をすすめる |
MSFAS | ・障害理解、障害受容の状況、ストレスや疲労の現れ方等の情報収集と整理 これらの情報共有、計画立案 |
・対象者主体に作成し、相談の中で、ストレス/疲労マネジメントへの支援を計画する。 ・ストレス/疲労マネジメント訓練を段階的に実施する |
グループワーク | ・ピアモデルの観察や討議による障害認識、対処行動に関する検討 ・認知、行動、感情面の変化の把握 |
・作業開始時や終了時等に、情報交換や討議を行うグループ活動の機会を設定する ・M-メモリーノート、MWS、MSFASの活用状況を踏まえて相互のコミュニケーションが深まり、自己理解が促進されるよう配慮する。 |
前述したように、このトータルパッケージの目的は「セルフマネジメントスキル」の有無や程度、種類の明確化になります。
ただその課題ができるorできないではなく、「できない」ときにどう反応するか?という視点が評価者にとっても必要なのかなと思います。
まとめ
病院や施設での作業療法士にとって、就労支援に関わっていないとWCST以外はあまり馴染のないツールかもしれません。
トータルパッケージは、ICFにおける“心身機能・身体構造”や“活動”の範囲での評価・訓練というよりは、“参加”の範囲でのツールに位置すると思います。
就労を目的としたクライアントに使用することで、包括的な支援をおこなうことができると思います。