疼痛の評価には様々な種類が必要であり、それらを適切に選択し、組み合わせ、包括的に評価する必要があります。
本記事では、疼痛の評価とその種類について解説します。
疼痛の評価は包括性と客観性が必要
疼痛の評価には、患者の主観的感覚だけでなく、包括性と客観性が必要です。
そもそも疼痛は非常に主観的であり客観的な評価は難しいです。
しかし、治療上では患者の痛みをできるだけ客観的に評価し、分析する必要があります。
そのため、痛みの強さ、心理社会的要因、および活動性などを多面的に評価する必要があります。
疼痛の恐怖回避モデルでも触れたように、疼痛は多面的な性質を持ち、各患者にとって複雑に絡み合って疼痛関連障害が形成されます。
そのため、疼痛に苦しむ患者の疼痛関連障害を包括的かつ客観的に評価する必要があります。
患者ごとに疼痛の意味を確認しながら、多面的かつ包括的なリハビリテーションアプローチが重要です。
疼痛の包括的評価の一覧
では、包括的な疼痛の評価を行うためには、具体的にどのような評価方法が必要になるのでしょうか?
ここでは…
- 疼痛の主観的評価
- 理学療法的検査
- 疼痛の生理学的評価
- 身体機能評価
- 行動評価
- 心理評価
- 包括評価
…について解説します。
これらの結果を統合することで、疼痛および疼痛患者の包括的な評価が可能になります。
疼痛の主観的評価
疼痛の主観的評価とは、患者自身が感じる痛みの強さや痛みの程度を表現することです。
痛みは主観的なものであり、客観的に評価することは非常に困難ですが、痛みの治療を行う上では患者の痛みをできるだけ客観的に評価し、分析する必要があります。
疼痛強度
疼痛性質
- マクギル疼痛質問表 (MPQ)
- 短縮版マクギル疼痛質問表(SF-MPQ)
理学的検査
疼痛における理学的検査理学検査では、痛みの強さだけでなく、痛みの質も評価することができます。
頸部
- スパーリングテスト
- ジャクソンテスト
腰部
- 下肢伸展挙上 (SLR) テスト
- ケンプテスト
上肢
- ペインフルアークテスト
- ヤーガソンテスト
下肢
- パトリックテスト
- マックマレーテスト
疼痛の生理学的評価
疼痛の生理学的評価とは、痛みの生理学的機序を評価することです。
疼痛は、末梢の痛覚受容器とそれに対応するAδおよびC線維で構成される感覚神経線維(侵害受容器)が活性化することによって発生します。
疼痛の評価には、主観的評価や神経生理学的機構の評価など、多面的な評価が必要です。
定量的感覚検査
- 疼痛閾値
- 疼痛耐性値
- 電流知覚閾値
自律神経機能検査
- 心拍変動
- 心拍数
- 血圧
- サーモグラフィー(皮膚血流測定)
- 皮膚交感神経反射
- 唾液αアミラーゼ活性
身体機能評価(疼痛特異的ADL評価)
疼痛における身体機能評価とは、疼痛が患者の身体機能に及ぼす影響を評価することです。
その中でも特に、疼痛特異的ADL評価とは、疼痛によって影響を受ける身体機能について評価することになります。
ADLの評価には、主観的評価や神経生理学的機構の評価など、多面的な評価が必要です。
そのため、疼痛特異的ADL評価には、疼痛が影響を与える身体機能についての評価が含まれます。
疼痛全般
- 疼痛生活障害評価尺度 (PDAS)
- 簡易疼痛評価表 (BPI)
腰痛
- ローランド・モリス機能障害質 問表 (RDQ)
- オズウェストリー腰痛障害質問(ODI)
- 日整会腰痛評価質問表 (JOABPEQ)
頸部痛
- 頸部機能障害質問表 (NDI)
- 日整会頸髄症治療成績判定基準
行動評価
疼痛における行動評価とは、疼痛によって引き起こされる行動を評価することです。
疼痛の評価には、主観的評価や神経生理学的機構の評価など、多面的な評価が必要です。
パフォーマンステスト
- timed up and go (TUG) test
- 5分間歩行テスト
身体活動性
- 活動量モニタリング
- 疼痛-行動日誌
心理評価
疼痛における心理評価とは、疼痛によって引き起こされる心理的な反応を評価することです。
疼痛の評価には、主観的評価や神経生理学的機構の評価など、多面的な評価が必要です。
- pain catastrophizing scale (PCS)
- hospital anxiety and depression score (HADS)
- state trait anxiety inventory(STAI)
包括評価(QOL評価)
疼痛における包括的な評価、特にQOL評価は、身体的、心理的、社会的な側面を含めた全体像を評価することになります。
- SF-36