VRS(verbal rating scale) – 目的・方法・メリット・デメリットなどについて

VRS(verbal rating scale) - 目的・方法・メリット・デメリットなどについて 検査

VRS(Verbal Rating Scale)は、痛みの強度を言葉で評価するスケールで、0から4までの段階で患者が自ら痛みを表現する方法です。
簡便で理解しやすく、医療現場で広く使用されています。

本記事ではこの目的や方法、メリット・デメリットなどについて解説します。


VRSとは

VRS(Verbal Rating Scale)は、痛みの評価方法の一つで、被験者が痛みの強度を言葉で表現する尺度です。
主に0から4までの5段階で痛みを評価し、0が「痛みなし」、4が「激しい痛み」となります。
この方法は、数値ではなく言葉を用いることで、患者が感じる痛みをより感覚的に評価できる点が特徴です。

また、VRSは感覚的な痛みの程度や質を表すため、数値的に評価するのが難しい場合でも活用されるんだ!
痛みの管理において重要なツールの一つですね!

VRSによる評価方法

VRS(Verbal Rating Scale)による評価方法は、被験者に痛みの強度を言葉で表現してもらうことで行います。
以下の手順で評価を行います。

  • 説明
  • 質問
  • 評価
  • 記録

それぞれ解説します。

説明

VRS(Verbal Rating Scale)の評価方法を導入する際、まず被験者にその目的と評価方法を説明することが重要です。
痛みの強度を言葉で評価する目的は、数値では表現しにくい感覚的な痛みを正確に把握するためです。
説明時には、痛みを0から4の5段階で評価することをわかりやすく伝えます。
また、この評価が治療や痛みの管理に役立つことを強調し、被験者の協力を求めます。

正確な評価が得られるよう、評価の意図と痛みの程度の違いを具体的に説明することが必要です。

質問

痛みの評価を行う際、具体的に「現在感じている痛みは0から4の中でどの程度ですか?」と尋ねるのが適切です。
この質問により、被験者は自分の痛みを言葉で表現しやすくなります。
質問の際には、評価スケールの内容を再確認し、痛みの強度が何を意味するのかを明確にしておくことが大切です。
また、被験者が答えにくい場合には、痛みを感じる具体的な状況や体験に基づいて説明を補足することも有効です。

こうした質問を丁寧に行うことで、信頼性の高い評価が可能となります。

評価

VRSの評価では、被験者が痛みの強度を以下のような言葉で表現します。
0は「痛みなし」、1は「少し痛い」、2は「痛い」、3は「かなり痛い」、4は「我慢できないくらい痛い」といった具合です。
このように言葉で痛みを表現することで、被験者は自分の痛みをより具体的に伝えることができます。
また、痛みの強度だけでなく、痛みの質や頻度も併せて確認することが重要です。

このプロセスにより、痛みの状況を詳細に把握でき、治療計画の基礎となります。

記録

被験者の回答は、治療や対策を検討する際に重要な情報となるため、正確に記録します。
記録された痛みの評価は、治療の効果を測定したり、状態の変化を追跡するために使われます。
また、評価の結果に基づいて、痛みを軽減するための具体的な治療やケアプランが検討されます。
この段階では、被験者の感じている痛みがどの程度改善されているかを確認し、次のステップを適切に進めることが求められます。

記録は痛みの管理において継続的に重要な役割を果たします。

この方法は簡便で、被験者にとって理解しやすいという利点があるんだ!
さらに、痛みを数値で表すことが難しい場合でも、言葉による表現が可能なため、被験者の主観的な痛みの状態を的確に評価できる点も特徴だろうね!

VRSのカットオフ

VRS(Verbal Rating Scale)のカットオフ基準は特に定められていませんが、痛みの変化を追跡するために有効な方法です。
VRSは、治療前後の痛みの強度を比較する際に使用され、痛みの経時的な変化を把握するために役立ちます。

たとえば、入院時と退院時の痛みの変化を評価し、治療の効果を確認する際に用いられます。
また、VRSは患者が感じる主観的な痛みを簡便に評価でき、治療やケアプランの調整に活用されます。

このように、VRSは痛みの評価において重要なツールであり、医療現場で広く使用されているんだ!
さらに、患者の主観的な痛みを簡便かつ迅速に評価できるため、日常的なケアから緊急時の対応まで幅広い場面で有効ですね!

VRSのメリット

VRSのメリット、利点としては以下のようなものがあげられます。

  • 簡便性
  • 理解しやすさ
  • 迅速な評価
  • 比較可能性
  • 患者の参加

それぞれ解説します。

簡便性

VRS(Verbal Rating Scale)は短時間で評価が可能で、特別な機器や高度な訓練を必要としないため、医療現場で非常に使いやすいツールです。
評価者は痛みの強度を言葉で尋ねるだけで良く、シンプルな手順で実施できます。
特に多忙な医療環境やリソースが限られた現場では、この簡便性が大きなメリットとなります。
また、複雑な測定機器を導入する必要がないため、コストの面でも効率的です。

このように、VRSの簡便性は医療従事者と患者双方にとっての利便性を高めます。

理解しやすさ

VRSは、痛みを数字ではなく言葉で表現するため、被験者にとって非常に理解しやすい評価方法です。
痛みの程度を直感的に表現できるため、特に言葉で感覚を伝えることに慣れていない患者でもスムーズに評価が進みます。
例えば、言葉の壁がある外国人患者や、数値を理解しにくい高齢者にも適応しやすい点が評価されています。
また、患者が自分の痛みを自分の言葉で説明できるため、痛みの実感に寄り添った適切な治療が可能になります。

こうした理解しやすさが、患者の負担を軽減し、医療従事者とのコミュニケーションを円滑にします。

迅速な評価

VRSは痛みの強度を瞬時に評価できるため、緊急時や多忙な医療現場でも非常に有用です。
時間をかけずに患者の痛みを把握できるため、迅速な判断が求められる場面で即座に対応が可能となります。
特に、急性の痛みや外傷を負った患者に対しては、速やかに痛みを評価し、必要な治療を開始することができます。
迅速な評価により、患者の苦痛を最小限に抑え、迅速な処置や対策に繋がります。

この特長により、VRSは救急医療や集中治療の現場でも重宝されています。

比較可能性

VRSは、治療前後や異なる時点での痛みの変化を比較するのに適しており、痛みの経過を追跡する上で非常に効果的です。
例えば、入院時と退院時、または治療開始前とその後の痛みの強度を比較することで、治療の効果を具体的に把握することができます。
こうした比較可能性により、医師は患者の状態を定量的に把握し、治療方針を適切に調整できます。

また、経過を視覚化することで、患者自身も自分の改善具合を理解しやすくなり、治療へのモチベーションが向上することが期待されます。

患者の参加

VRSでは、患者自身が痛みを言葉で評価するため、自己管理や治療への参加意識が高まるというメリットがあります。
自分の痛みを自分で評価することで、患者は治療に対してより積極的な姿勢を持つようになり、自分の状態をしっかりと把握できるようになります。
これにより、患者は医療従事者とのコミュニケーションが深まり、治療計画の策定にも積極的に関与できます。
また、患者のフィードバックを元に治療内容を調整することができるため、より個別化されたケアが提供されます。

このように、患者の主体的な関与が治療効果の向上に繋がります。

VRSのメリットは、簡便で理解しやすく、患者が自ら痛みを評価することで治療への参加意識が高まる点にあるんだ!
また、治療前後の痛みの変化を比較するのに適しており、医療現場で迅速な判断をサポートする有用なツールなんだね!

VRSのデメリット

VRSには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは…

  • 主観性
  • 詳細な情報不足
  • 言語の制約
  • 文化的差異
  • 痛みの変動

…について解説します。

主観性

VRS(Verbal Rating Scale)は被験者自身の主観に基づいて痛みを評価するため、個人差が大きい点がデメリットです。
同じ痛みでも、痛みの感じ方や表現が人によって異なるため、客観的な比較が難しくなります。
また、痛みの閾値や耐性が個々に異なるため、同じ痛みの強度であっても、異なる評価がなされる可能性があります。
この主観性が、医療従事者が正確な痛みの状態を把握する際に障害となる場合があります。

特に、痛みの感じ方が大きく異なる患者同士を比較する場合、診断や治療の基準が曖昧になる恐れがあります。

詳細な情報不足

VRSは痛みの強度を評価するシンプルなツールであるため、痛みの具体的な性質や場所、持続時間などの詳細な情報を提供しません。
例えば、鋭い痛みや鈍い痛み、痛みが断続的か持続的かなどの重要な情報はVRSでは把握できません。
これにより、痛みの原因を特定する際や、効果的な治療法を選定する際に十分な情報が得られない場合があります。
詳細な痛みの評価が求められる場面では、VRSだけでなく、他の評価方法との併用が必要となることが多いです。

このため、VRSは単独では限界があり、補完的なツールとしての使用が適しています。

言語の制約

VRSは言葉による評価を行うため、言語の理解や表現が難しい被験者には適用が難しい場合があります。
小児、高齢者、言語障害を持つ患者や異なる言語を話す患者にとっては、痛みを適切に表現することが難しく、評価の信頼性が低下することがあります。
また、精神的な状態が不安定な患者や認知機能が低下している患者の場合も、正確な痛みの評価が困難です。

こうした場合、非言語的な痛みの評価方法や補助的なコミュニケーション手段が必要となるため、VRSの汎用性には限界があります。

文化的差異

痛みの表現や評価は文化的背景によって異なるため、異なる文化圏の患者同士での比較が難しいというデメリットもあります。
ある文化では痛みを表現することが奨励される一方、別の文化では痛みを我慢し、表現を控えることが美徳とされる場合があります。
このような文化的違いは、痛みの強度を正確に把握する上で障害となり得ます。
また、異文化間での治療の比較や研究においても、VRSの結果を直接的に比較することが困難です。

このため、国際的な研究や多文化環境での痛み評価には、文化的要因を考慮する必要があります。

痛みの変動

痛みは時間とともに変動することが多く、VRSによる一時的な評価がその全体像を正確に反映しないことがあります。
例えば、急性の痛みが短時間で増減する場合や、慢性痛が波状的に現れる場合、単一の評価ではその変動を捉えることが難しいです。
また、治療の効果を追跡する際にも、瞬間的な痛みの評価ではなく、長期間にわたる経過観察が必要となる場合があります。

このように、痛みが変動する患者に対しては、VRSだけでは不十分で、他の評価方法や継続的なモニタリングが求められます。

VRSだけでは痛みの主観性や詳細な情報が不足するため、他の評価方法と組み合わせることで痛みの性質や持続時間を含めた包括的な評価が可能となるだろうね!
複数の評価を併用することで、治療方針をより正確に決定でき、患者の痛みを総合的に理解することが重要でしょうね!

VRSの信頼性と妥当性

VRS(Verbal Rating Scale)の信頼性と妥当性については、以下のような点が確認されています。

信頼性

VRS(Verbal Rating Scale)は、異なる時点で評価を行った際に一貫性のある結果が得られることが確認されており、テスト・再テスト信頼性が認められています。
ただし、他の評価スケール、例えばVAS(Visual Analog Scale)と比較すると、若干信頼性が低いと報告されています。
特に、痛みの感じ方が日によって変動しやすい患者に対しては、VRSの結果が一貫しないことがあるため、使用には注意が必要です。

また、被験者が言葉で痛みを表現する際の個人差が信頼性に影響を与えることがあります。
このため、信頼性を補完するためには、他の評価方法と併用することが推奨されます。

妥当性

VRSは、痛みの強度を評価するために有効な手段であり、妥当性が高いとされています。
言葉を使って痛みを評価するため、被験者にとって直感的に理解しやすく、特に痛みの度合いを自分の言葉で説明できる利点があります。
痛みの強度を数値化する他の評価法と比べ、VRSは患者の主観的な感覚を反映しやすいため、治療やケアの基礎として役立ちます。
また、痛みが急激に変化する場合や慢性的な痛みに対しても、VRSは効果的に使用されています。

このように、VRSは痛みの強度を測るための妥当な評価ツールです。

このように、VRSは信頼性と妥当性が確認されている一方で、使用する際にはいくつかの注意点もあるんだ!
特に、痛み以外の要因が評価に影響を与える可能性や、個人差が大きい点を考慮しながら、他の評価方法と併用して総合的に判断することが重要なんだろうね!

慢性痛患者への適用

VRSは慢性痛患者に対しても有効であり、痛みの強度を正確に評価できるとされています。
慢性痛患者は痛みが長期間続くため、日常生活への影響が大きく、痛みの評価が特に重要です。
VRSを使うことで、慢性痛の患者でも自分の感じている痛みを言葉で表現しやすく、医療従事者が治療計画を立てる際の貴重な情報源となります。
また、定期的にVRSで痛みの強度を評価することで、治療の効果を追跡することも可能です。

このため、慢性痛患者に対するVRSの適用は広く推奨されています。

非痛み要因の影響

VRSの評価結果は、痛みの強度以外の要因にも影響を受ける場合があります。
例えば、痛みの不快感や痛みが日常生活に与える干渉が、痛みの強度評価に反映されることがあります。
これにより、VRSの結果が痛みそのものを正確に反映していない可能性があるため、解釈には注意が必要です。
特に、患者が痛みに対する感情的な反応や心理的なストレスを強く感じている場合、評価が過大になる可能性があります。

このため、VRSを使う際には、痛みの強度以外の要素も含めた総合的なアプローチが必要です。

参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/5/42_KJ00010032615/_pdf/-char/ja

関連文献

もしこの記事に修正点やご意見がございましたら、お手数ですがお問い合わせまでご連絡ください。 皆様の貴重なフィードバックをお待ちしております。
アバター画像

THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

1TOCをフォローする
検査
タイトルとURLをコピーしました