廃用症候群と認知症は、高齢者に多く見られる疾患で、原因や症状は異なるものの、どちらも生活の質の低下や社会的孤立といった共通の課題を抱えています。
それぞれに適した対策が必要です。
本記事では”廃用症候群”と”認知症”との違いと共通点について解説します。
廃用症候群とは
廃用症候群とは、病気や怪我などにより長期間身体を動かさないことで、筋肉が衰え、心身機能が低下する状態を指します。
具体的には、筋肉量の減少、筋力の低下、関節の拘縮、心肺機能の低下、血栓症、褥瘡(床ずれ)、肺炎、鬱状態などがみられます。
認知症とは
認知症は、脳の病気によって記憶力、判断力、思考力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。
アルツハイマー病が最もよく知られていますが、そのほかにも様々な種類の認知症があります。
“廃用症候群”と”認知症”との違い
廃用症候群と認知症は、どちらも高齢者に多く見られる疾患で、症状が似ている部分もあるため、混同されがちです。
しかし、両者は全く異なる病気です。
ここではその違いについて…
- 原因
- 主な症状
- 進行性
- 治療法
…という観点から解説します。
原因
廃用症候群と認知症は原因が異なります。
廃用症候群は、身体を動かさないことによる運動不足や長期の不活動が原因です。
一方、認知症は脳の変性や損傷による認知機能の低下が原因となります。
認知症の原因としてはアルツハイマー病などが代表的です。
このように、廃用症候群は主に身体的な活動の欠如から発生し、認知症は脳自体の問題に由来するのが特徴です。
主な症状
次に、主な症状の違いについてです。
廃用症候群は筋力低下、関節拘縮、心肺機能低下など、身体的な機能が中心の症状が現れます。
対照的に、認知症では記憶障害、判断力の低下、言語障害など、精神的・認知的な問題が主な症状です。
これにより、廃用症候群では身体的なリハビリが重視され、認知症では認知機能を支えるアプローチが必要になります。
進行性
進行性の違いも重要です。
廃用症候群は、早期に運動やリハビリを開始すれば進行を止めたり改善することが可能です。
一方で認知症は進行性の疾患であり、症状は徐々に悪化します。
認知症の場合、進行を完全に止めることは困難で、症状の進行を遅らせることが治療の目標となります。
治療法
治療法も異なります。
廃用症候群では、運動療法やリハビリ、身体機能の維持・改善を目的とした治療が行われます。
運動を促進し、日常生活の動作を増やすことで症状を改善できます。
一方、認知症では薬物療法や認知機能訓練が中心となり、アルツハイマー型認知症では抗認知症薬が用いられますが、根本的な治療はまだ確立されていません。
廃用症候群と認知症の共通点
廃用症候群と認知症の共通点には、以下のようなものがあります。
- 高齢者に多くみられる
- 生活の質の低下
- 他の疾患との合併症
- 介護が必要になる可能性がある
- 社会的な孤立
それぞれ解説します。
高齢者に多くみられる
廃用症候群と認知症の共通点としてまず挙げられるのは、高齢者に多く見られることです。
加齢に伴い、筋力や身体機能が自然に低下しやすく、どちらの疾患も発症リスクが高まります。
また、これらの疾患は高齢者の健康を損なう原因となり、特に日常生活の質に大きな影響を及ぼすことが多いです。
そのため、予防や早期介入が高齢者の健康管理において重要な課題となります。
生活の質の低下
次に、両疾患とも生活の質が低下する共通点があります。
身体機能が低下すると、日常生活動作が困難になり、自立した生活が難しくなります。
さらに、身体的不調や認知機能の低下が進むと、患者は精神的にも落ち込み、うつ状態を引き起こすことがあります。
このような身体的・精神的な状態は、両疾患が進行すると特に顕著になります。
他の疾患との合併症
さらに、廃用症候群と認知症は他の疾患と合併するリスクが高いという共通点もあります。
高齢者は一般的に複数の疾患を同時に抱えやすく、それにより治療が複雑化します。
例えば、糖尿病や高血圧といった慢性疾患を抱えながら、廃用症候群や認知症が進行することも珍しくありません。
これにより、治療計画の調整や介護の負担が増えることが課題となります。
介護が必要になる可能性がある
また、両疾患は進行すると、日常生活のサポートや介護が必要になる可能性が高まります。
廃用症候群では筋力低下により身体的な介助が必要となり、認知症では記憶や判断力の低下によって日常生活が困難になる場合があります。
家族や介護者の負担が増すため、介護体制の整備も重要です。
社会的な孤立
最後に、社会的な孤立の問題も共通しています。
身体機能や認知機能の低下により、患者の活動量が減り、社会との関わりが希薄になることが多くあります。
この孤立感は精神的な負担となり、さらなる症状の悪化を招く可能性があります。
したがって、社会とのつながりを維持することは、両疾患の予防や治療においても重要な要素となります。