作業療法のアクティビティとして“陶芸”という作業も典型的な方法といえます。
昔から治療としての作業活動として用いられてきた陶芸ですが、いま改めて振り返ってみると様々な効果があることがわかります。
そこで今回は『陶芸の治療効果と作業療法としての有用性』について!
陶芸とは
陶芸(とうげい、英: Pottery)とは、粘土を成形して高温で焼成することにより陶磁器などをつくる技術のこと。
引用:wikipedia
陶芸の歴史について
陶芸の歴史は非常に古く、紀元前1500年頃をはじまりとしているようです。
日本でも縄文時代の“縄文土器”なども“焼き物”ですから陶芸の一つと言えます。
陶芸×作業療法の歴史
作業療法への陶芸の導入に関してですが、「理学療法士法及び作業療法士法」の施行前より実施されていますので非常に歴史も古い作業といえます。
もともと労災病院では“職能療法”として、精神病院では生活療法として実施されていたという背景があります。
その後、陶芸の成型方法自体にも身体機能面へのリハビリテーションとしての効果も期待できることから、身体障害領域にも広がってきたようです。
陶芸の目的や治療的効果について
陶芸という作業を用いる目的には、
- 基本的能力の向上
- 応用的能力の向上
- 社会的適応能力の向上
…といった治療的効果を期待することができます。
しかし、敢えて作業療法場面において“陶芸”という作業活動を選択する理由を考えると、
単純な身体機能面の能力向上のためというよりは、社会的能力の向上や生きがいづくりといった効果を狙っての導入が多くなっているようです。
陶芸の成型の方法について
その目的はどんなものであれ、作業療法士がクライアントに陶芸を治療的作業活動として導入するなら、基本的な成型の方法、プロセスについて知っておかないといけません。
基本的な陶芸の成型の方法は…
- 練り
- 成型
- 乾燥
- 窯づめ(素焼き)
- 施釉
- 窯づめ(本焼き)
- 完成
以下に基礎的な陶芸の成型の方法を説明します。
1.練り
材料である粘土を練る…いわゆる“土練り”の段階です。
焼き物のなかでも非常に重要な工程であり、粘土の硬さにムラができたり気泡が入ったりするとその後の完成度に支障をきたしてしまいます。
練りには“荒練り”と“菊練り”がありますが、脳卒中による片麻痺や高齢のクライアントには、比較的容易な“荒練り”が導入しやすいです。
2.成型
その後、作品の形を作る“成型”の段階に移ります。
成型の方法にも“たま作り”や“ひも作り”、“たたら作り”といった方法がありますが、この中でも“たま作り”が工程が少なく、初心者や障害を有する人でも導入しやすい方法になります。
3.乾燥
水分を含んだ状態で窯入れしても、せっかく成型した作品にひびが入ってしまい台無しになってしまうことから、まずはしっかりと“乾燥”させます。
急激に乾燥させることも禁忌なので、直射日光の当たらない場所で1週間程度乾燥させるのがコツのようです。
この段階では作業療法において直接的になにかするわけではないですが、毎日「ひびが入っていないか」「ちゃんと乾燥しているか」と自分の作品を気にする、意識する…という工程が重要になってきます。
4.窯づめ(素焼き)
しっかり乾燥した作品を一度窯づめし“素焼き”を行います。
この工程で作品の強度と吸水性を高め、釉掛けや絵付けなどの次の工程がスムーズに進行するように作品を整える段階と言えます。
ちなみに釉掛けや絵付けをせずに、この段階でしっかりと高温で焼き上げる“焼き締め”という方法もあります。
代表例では『備前焼』や『信楽焼』にみられる手法のようです。
5.施釉
この“施釉”の段階前には素焼き作品の表面を拭く工程を挟みます。
その後に釉薬をかけるなどして仕上げていきます。
両手動作だと非常にスムーズではありますが、釉薬が入った入れ物に作品を沈めて漬ける“どぶづけ”といった方法や、施バサミや霧吹きを使用する方法だと片手でも十分可能なので、
脳卒中による片麻痺のクライアントにも導入可能と言えます。
6.窯づめ(本焼き)
最後に再度窯づめし、本焼きを行います。
7.完成
そして完成となりますが、重要なのはこの作品が出来上がったことに対しての達成感や満足感、そして作品を通してのコミュニケーションや社会的交流といった部分にまでつないでいくことが作業療法しとしての役割になります。
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まとめ
今回は作業療法における陶芸について解説しました。
陶芸って土を練る感じや、自分の作品が自分の手で仕上がっていく工程、出来上がったときの出来栄えなど非常に作業療法としても治療的な効果を多く含んだ作業活動と言えます。
古典的な作業療法のアクティビティかもしれませんが、それ故に非常に治療的効果としては有効的なものなんだと思うので、臨床や現場で活用してみるのもいいかもしれないでしょうね!