健康度(health Status)の評価、健康関連QOL(health-related QOL)の評価方法には様々なものがあります。
それぞれ視点や方法が異なりますが、構成する領域の項目を知ることで、健康関連QOLにおいて重要な項目が見えてきます。
今回は健康関連QOLの代表的な4つの方法について解説します。
健康関連QOLを評価する目的
“疾患や障害がその人の生活にどの程度影響を及ぼすのか”を測ることを目的としており、保険政策研究の分野で発展してきた評価と言われています。
SIP(Sickness Impact Profile)
1970年代にBergnerによって開発され、1981年に改訂された評価方法で、エビデンスの推奨グレードAの信頼性が高い評価方法です。
その評価項目としては、
- 睡眠と休息
- 食事
- 仕事
- 家庭管理
- レクリエーション
- 歩行
- 移動性
- 身体ケアと運動
- 社交
- 覚醒行動
- 情動行為
- コミュニケーション
…の12のカテゴリー項目から構成されています。
病気やその障害によって実際の行動や能力の変化に照準を合わせ、評価するのが特徴と言えます。
回答方法は「はい・いいえ」の二件法で、重みづけされた項目の下位尺度ごとの得点,合計得点,SIP パーセンテージ得点を算出することができます、
また、得点が低いほど健康関連 QOL が高いことを表しています。
30年以上前に作られた評価方法ですが、信頼性、妥当性においては非常に高い評価を得ていることからも、現代の臨床や現場でも有効な評価方法と言えます。
NHP(The Nottingham Health Pofile)
1981年にHuntによって発表された評価方法で、エビデンスの推奨グレードAの信頼性が高い評価方法です。
このNHPは、2つに大別でき、
- 身体的機能
- 痛み
- 睡眠
- 社会的孤立
- 情緒反応
- エネルギーレベル
…の6つのセクションから構成されている“NHP PartⅠ”と、
- 職業
- 家事
- 個人的関係
- 社会生活
- 性生活
- 趣味
- 休暇
…の7つのセクションからなる“NHP PartⅡ”で構成されています。
前述のSIPが行動の変化に照準を合わせて評価するのに対して、このNHPは評価対象者の間隔や情緒的状態を直接たずねているのが特徴と言えます。
つまり対象者の主観に注目することで、“満足度”といったものも評価することができます。
SF-36(The Short-Form-36 Health Survey)
SF-36は、健康関連QOLを評価する方法としては最も頻繁に使用されている方法のようです。
これもエビデンスの推奨グレードAの信頼性が高い評価方法です。
1990年にRAND CorporationとJE Wareによって発表され、1996年に改訂されています。
SF-36は…
- 身体機能
- 日常役割機能(身体)
- 身体の痛み
- 全体的健康感
- 活力
- 社会生活機能
- 日常役割機能(精神)
- 心の健康
…の8つの領域で構成されています。
SF-36はその名称の通り36の質問で構成されていますが、最近では12問に短縮されているSF-12も頻繁に使われているようです。
SF-36もSF-12も国際的な規模での調査が進んでいることからも、今後も健康関連QOL調査の評価方法の中心になっていく…と考えられています。
ただし、使用には版権元に使用許可願いをだし、契約を結んで初めて使用することができるため、やや敷居が高い印象を受けます…。
EQ-5D(The EuroQol EQ-5D Quality of Life Scale )
The EuroQol Groupによって1990年に発表された評価方法で、1993年に改訂されています。
EQ-5Dは、
- 移動
- セルフケア
- 通常活動
- 痛み/不快
- 不安/抑うつ
…の5つの領域で構成されています。
名称に「Euro」とついていることからも日本では適用外ではないか?と思ってしまいますが、異なる文化でも使用可能に作られているため問題はないようです。
健康を単一指標で表そうとしていること、90秒で回答可能という点からも簡単に使用できるのが特徴と言えます。
まとめ
今回は4つの代表的な健康関連QOLの評価方法の概要を紹介しました。
各評価方法の詳細については追って執筆しますが、クライアントの“健康”という課題を対象とするOTにとっては、使いこなす必要がある評価方法と言えます。