ADLにおいて“排泄”は当事者も介護をする側にとっても非常にプライベートな問題から早急な対処が必要といえます。
しかしどの現場でも十分な排泄ケアが取り組めていないというのが現実です。
そこで今回は『排泄ケアが十分に取り組まれていない2つの理由』について解説します。
排泄ケアが十分に取り組めていない理由
排泄へのケアが不十分な理由としては…
- 統一された排泄ケアの方法が確立しておらず、教育・研修の機会が少ない
- 排泄ケアに対しての制度が整っていない
…の2点があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
統一された排泄ケアの方法が確立しておらず、教育・研修の機会が少ない
“排泄ケア”と言われて、どのような支援を思い浮かべるでしょうか?
作業療法士として臨床や現場で“排泄”について関わってきた経験からすると、“排泄ケア”の項目としては…
- 排泄パターンの把握(排尿・排便)
- 排泄動作の獲得(移動・移乗・下衣の上げ下げ・ふき取りetc)
- 排泄方法の選定(おむつ・トイレ・ポータブルトイレ・尿器)
- 排泄環境の設定(手すりの位置や福祉用具etc)
- 保清のための清拭ケア(おむつ交換や陰部洗浄)
…といったところが代表的かと。
排泄ケアには基準やガイドラインが必要では?
でも目の前のクライアントにとって、現段階で適切な排泄ケアはどのようなものか?
- クライアント自身の排泄機能の能力
- クライアントや介護者の身体機能
- トイレや排泄動作に対して抱く価値観や生活スタイル
- そして家屋状況などの環境面
それら多様な条件を考慮したうえで、上述した項目を組み合わせて手順を整えなければなりません。
対応する状況が“多種多様”なため、どうしても現場判断であり、担当する医療、福祉スタッフに一存する形になってしまいます。
属人的であり、悪い意味での現場任せの排泄ケアを打破するためにも、エビデンスに基づく判断基準や対応に関してのマニュアル、ガイドラインといったものが必要なんだと思うんです。
排泄ケアに対しての制度が整っていない
排泄ケアが十分に取り組めていないもう一つの理由として、制度上の問題があげられます。
ここでの制度上の問題とは、オムツ費用といった排泄ケアに関する“コスト負担”と“診療報酬”に関するものです。
おむつ費用は経済的な負担になる?
現在は紙おむつやサラシ・ガーゼなどの衛生用品、集尿器やストーマといったものは“排泄管理支援用具”として市町村からの助成金の対象となっています。
また医師による「おむつ使用証明書」を発行してもらうことで、確定申告の際に控除の対象となります。
それでもあくまで必要コストの一部を補助する形であるため、クライアントの排泄状況によっては介護者へのおむつ費用としての経済的な負担は大きくなってくる場合がほとんどです。
排泄ケアを徹底しても、診療報酬上反映されない?
平成28年度の診療報酬改定で話題になった「排尿自立指導料」が、排泄ケアに対しての診療報酬上の加算項目として代表的なものになりました。
この加算の条件が“尿道カテーテル”の抜去における排尿障害に限定すること、泌尿器科の医師を含む排尿ケアチームの設置が必要といった条件があります。
またこの加算には、“排便”は含まれてはいません。
いままで臨床や現場で多くの介護者の方からの意見を聞くと、尿失禁と便失禁では、肉体的にも精神的にも負担の大きいのは便失禁のようです(個人的な見解になりますが…)。
もっと広い範囲での排泄ケアに対しての取り組みが診療報酬上加算の対象となれば、臨床や現場での医師も看護師もリハビリセラピストも必死で排泄ケアに取り組むのかもしれません。
まとめ
今回は排泄ケアが十分に取り組まれていない2つの理由について解説しました。
作業療法士としてクライアントのADLの向上に関わり、支援することは職務として必須であると思います。
そのなかでもクライアント自身、そして介護者にとっても負担の大きい排泄に対しての介入は非常に早急に行うべきかもしれません。
もちろん作業療法士だけでは対処しきれない部分もありますので、そのクライアントに関わるチームとして取り組むことが必要です。
今回まとめたようにより適切な排泄ケアを提供するためには…
…が必要になってくると言えます。