作業療法の場面でも音楽をアクティビティとして利用することは多いと思いますが、音楽を専門に治療的介入に利用しているセラピストといったら「音楽療法士」でしょうね!
現在は国家資格ではない資格ですが、非常に作業療法の手法と近いものを感じています!
今回は音楽療法士について解説します。
音楽療法とは
音楽療法(おんがくりょうほう、英語: Music therapy)は、音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる事を目的とする、健康法ないし代替医療 Alternative Medicine あるいは補完医療 Complementary Medicine(いずれも「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義され、現代的な意味での医療とは区別される)。歌唱や演奏を行う能動的音楽療法と音楽を聴くなどの受動的音楽療法の2つに分かれる。
引用:wikipedia
日本では専門職としての音楽療法士はあまり普及しておらず、他に職をもちながらの兼業や、看護師や介護士、作業療法士などその職の中で音楽療法を行うのが一般的だそうです。
ちなみに音楽療法士の人数(学会認定)ですが、2010年度末で2,000余名いらっしゃるようです。
資格取得の方法
“音楽療法士”は国家資格ではなく民間の認定資格です。
その資格形態と取得方法ですが大きく2つにわけられます。
音楽療法士1種・2種
全国音楽療法士養成協議会による認定資格。
協議会によって認定された音楽療法士養成講座を持つ大学、短大で、指定された科目を学び、大学・短大を卒業した者に与えられます。
認定音楽療法士
日本音楽療法学会による認定。
独自の認定基準による書類審査と面接試験に合格した人に資格が与えられます(5年ごとに更新の審査あり)。通信教育もあるようですが、かなり厳しいようです。
地方では、県の認定音楽療法士の制度を設けているところもあるようです。
仕事の内容
音楽療法士の仕事は福祉の場面や医療の場面がほとんどです。
対象としては認知症の高齢者、精神障害者、交通事故などによる脳障害後遺症を持つ患者、脳性まひや小児まひ、自閉症児・者があげられます。
音楽療法士の仕事内容についてですが、
- 対象者の状況に合わせた音楽的プログラムを組む
- 音楽を聞かせる
- 一緒に歌を歌う
- 音楽に合わせて体を動かしてもらう
- 楽器を演奏してもらう
…といったものがあげられます。
対象者の状況に合わせた音楽療法プログラムを組む
これは理学療法や作業療法などのリハビリ場面でも同じですが個々のクライアントに合わせてプログラムを組みます。
よく一般の方からは「リハビリは決まった手順を流れ作業のように行う」と思われがちなんですが、一人一人に合わせて治療プログラムを立案していきます!
音楽を聞かせる
昔の馴染みの歌や曲を聴かせることは、認知症の高齢者には非常に有効な治療になることが分かっています。
参考論文:アルツハイマー型認知症の音楽療法
一緒に歌を歌う
これも認知症の治療プログラムとしては有益でありますが、その他には脳卒中による失語症への治療としても非常に有効といえます。
また歌を歌うことで肺活量を鍛え、体力や持久力の向上につなげるという働きもあります。
音楽に合わせて体を動かしてもらう
音楽や一定のリズムに合わせた歩行訓練がパーキンソン病の治療に非常に有効という研究結果があるように、音楽に合わせた運動はただやみくもに運動するよりも効果的であることがわかってきています。
楽器を演奏してもらう
楽器の演奏によって、手や指の活動を促すことができますし、目と手の動きを連動させるという治療プログラムとしても有効です。
また、集団でのパーカッション演奏は免疫力アップの効果があることもわかってきています。
就職先は?
日本では音楽療法はあまり普及しておらず、音楽療法士として常勤という形での就職はかなり困難だそうです。
国家資格ではなく民間の認定資格、という点でも医療機関、福祉機関にとっては採算を合わせにくいともいえると思います。
現段階で最も多いのは、他の医療や福祉関係の資格と組み合わせるダブルライセンス的な扱いのほうがメリットがあるのかもしれません。
(中には音楽療法を積極的に行う病院や音楽療法を教えている学校で働くなど、“音楽療法士”としてだけで仕事ができる場合もあるようです)
まとめ
今回は音楽療法士について解説しました。
作業療法士も音楽療法士の資格を取得することで活動の範囲、支援するためのツールが増え、幅が広がることは十分考えられます。
しかし、実際にその資格を取得するとなると…なかなかハードルが高いのでしょうね。
ただ、音楽療法士の視点や理論などを学ぶことで作業療法に応用することは可能だと思います。
「音楽療法士」という枠組みにこだわらず、「作業療法×音楽」という介入の方法でも非常に重宝されると思いますけどね!