パーキンソン病は脳の黒質という部分の病変によって生じる進行性の難病で、その主な症状としては…
- 安静時振戦
- 固縮
- 無動、寡黙
- 姿勢反射障害
…など特徴的です。
しかし、これらの症状は決して初期段階から起こるわけではありません。
そこで今回は、パーキンソン病の13の初期症状について解説します。
パーキンソン病の13の初期症状
結論から言えば、パーキンソン病の初期症状としては…
- 手や足などの振るえが起こる
- 歩くのが難くなる
- 字が変化する
- においに鈍感になる
- 睡眠障害が起こる
- バランスが悪くなる
- 運動が緩慢になる
- 表情が硬くなる
- 声が変化する
- 前かがみの姿勢になる
- 便秘になる
- 心理的症状が現れる
- 体重が減少する
…になります。
以下にそれぞれ解説します。
手や足などの振るえが起こる
パーキンソン病の初期症状で多いものに“手や足などの振るえ”があげられます。
この振戦は「安静時振戦」と呼ばれるもので、パーキンソン病の方自身がその部位を使用しようとすると震えが止まるという特徴があります。
振戦の部位ですが、手、足、あごなどで起こり、持続的な痙攣または震えが伴います。
パーキンソン病の安静時振戦は、最初に現れるときは非常に小さく微妙な震えの場合が多いようです。
この段階では、通常は振戦を経験している人だけが振戦に気づきます。
また、安静時振戦は、パーキンソン病が進行するにつれて徐々に悪化します。
通常は身体の片側に現れますが、その後身体の他の部分に広がっていきます。
歩くのが難くなる
パーキンソン病の歩き方には、“ゆっくりとした歩き方”、もしくは“小刻みな歩き方”…という特徴があります。
また不規則なペースで歩いたり、突然速くまたは遅く歩いたり、歩幅を変えたりする場合もあります。
字が変化する
パーキンソン病の方からは、発症する前に比べて上手く字が書けないという訴えが多く聞かれます。
振戦の影響も大きいのですが、特徴としては字を書いているうちにだんだん小さくなる「小字症」があげられます。
パーキンソン病のうち小字症が10~15 %にみられる…という報告もあります(McLennanら 1972)。
においに鈍感になる
パーキンソン病では、匂いに対して鈍感になるという嗅覚障害も起こる場合があります。
この匂いに喪失は比較的一般的な症状であり、パーキンソン病患者の70〜90%が訴えているとの報告もあります。
睡眠障害が起こる
パーキンソン病の初期段階の人は、様々な睡眠障害を経験する可能性があります。
睡眠障害の種類としては…
- 不眠症
- 日中の過度の疲労
- ナルコレプシー
- 睡眠時無呼吸
- 悪夢
…などがあげられます。
バランスが悪くなる
パーキンソン病の方は、姿勢反射障害という症状から、非常にバランスが悪くなる傾向にあります。
バランス不良になる理由ですが、パーキンソン病は、脳の深部にある大脳基底核と呼ばれる神経細胞を特異的に標的としています。
この大脳基底核神経はバランスと柔軟性を制御する役割を担います。
パーキンソン病によってこれらの神経が損傷することで、バランス能力を損なってしまう可能性が高くなる…ということになります。
ちなみにパーキンソン病の方に対するバランス能力の検査方法としては、“プルテスト”があげられます。
これは被験者の肩を、バランスが崩れるまで優しく後ろに引っ張るというテストになります。
1歩あるいは2歩のステップで立ち直れる場合は正常です。
しかし、それ以上のステップやバランスを崩してしまう場合は、姿勢になにかしらの障害ある可能性が高い…とみられます。
運動が緩慢になる
パーキンソン病の方は、手足のこわばりやゆっくりとした動きが特徴としてみられます。
また、歩くのが遅くなったり、運動を開始するのが難しい場合もあります。
こういった症状がある人の中には、「筋力が低下したから…」と誤解する人もいるようです。
この症状は単純な筋力低下によるものではないということを、理解する必要があります。
表情が硬くなる
パーキンソン病の方の表情は変化に乏しく、硬くなるような印象を受けます。
表情をつくるには、微妙で複雑な筋肉の動きが必要になります。
パーキンソン病の方の“無動、寡黙”という症状は、運動緩慢に関連すると言えます。
ただし、表情の変化が乏しくなったからといって、感情を感じる能力は損なわれているわけではありません。
このことからも、他の人とのコミュニケーションが困難になる場合があるので注意が必要です。
声が変化する
パーキンソン病の方は、声の音量、質の変化を起こす場合があります。
声の変化についてですが、より柔らかい音で話すようになるか、通常の音量で話し始めてから、声が柔らかくなる、もしくは消えていく…という特徴があります。
また、人によっては声の音量とトーンの通常の変化を失い、声が単調に見える場合があります。
前かがみの姿勢になる
初期段階のパーキンソン病の方は、筋肉の硬直といった症状をからの姿勢の変化をきっかけに気付く場合があります。
立位に関してですが、自然に立つようにすると体重は両側の足に均等に配分されます。
ただし、パーキンソン病にかかっている人は前屈みになり、かがんだり身をかがめているように見えることがあります。
便秘になる
パーキンソン病の方は自律神経症状を呈することもあるため、便秘に悩まされるケースも多くあります。
また、便秘は一般的な問題であり、さまざまな原因が考えられます。
便秘は、パーキンソン病に関連する最も一般的な非運動症状の1つです。
運動症状を発症する前に、その状態の人々のほぼ25パーセントが便秘を経験するようです。
心理的症状が現れる
パーキンソン病は心理的健康にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
体内のドーパミンを低下させ、気分や行動の変化を引き起こす可能性があります。
パーキンソン病に関連する心理的症状には次のようなものがあります。
- うつ病
- 不安
- 混乱
- 計画を立てたり、組織を維持するのが困難
- 問題解決能力の低下
最近気分が落ち込む、なんだか不安になりやすい…と、うつ病かと思ったら運動障害も起こってきてパーキンソン病だった…というケースもあります。
体重が減少する
パーキンソン病の方は、軽度から中程度の体重減少を経験することが多いようです。
理由としては、振戦やその他の運動症状によって身体の基礎代謝の増加によるものがあげられます。
加えて、においの喪失、うつ病、消化器系の問題などの非運動症状により、食事量が減り、体重が減少する…ということもあります。
初期症状を知っておくことは身を守り、生活を守ること
パーキンソン病のように進行性の病気はいかに早く対処するかが重要になります。
もちろん進行の程度は人によって様々です。
しかし、早くに薬物療法などの対応をしておくことで、少しでも進行を遅らせることができます。
その間にパーキンソン病についての知識を深め、準備を整えておくことも重要と言えます。
まとめ
今回は、パーキンソン病の初期にみられる特徴的な症状について解説しました。
パーキンソン病は進行性の病気ですから、完全に治すということは難しいと言えます。
しかしこれらの症状を知っておくことで、発見を早めて早く対応することができ、症状の進行をゆっくりにすることはできます。
予防という観点からも、必要なことなのでしょうね。