作業分析は目的の何に重点を置くかによって方法が決まるとされています。
本記事では、作業行為者の視点からの作業分析方法について解説します。
作業行為者の視点からの作業分析方法
作業や活動の実行者である”作業行為者”の側面で作業分析方法を分類するとなると…
- 観察法
- 体験法
- 想定法
…の3つがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。
観察法
観察法は、作業や行動を直接観察して分析する手法です。
この手法では、作業を行っている人の行動や動作を注意深く観察し、その特性やパターン、技能レベル、そして作業環境との相互作用を評価します。
この観察法は、主に次のような目的で用いられます。
行動や動作の評価するため
作業や特定の活動中に行われる動作や行動を観察し、その特徴やパターンを把握するために行われます。
例えば、特定のタスクを行う際の動作パターンやスキルの使用状況を観察し、評価します。
環境との相互作用の評価
また作業環境や周囲の要因と作業者の行動や反応の相互作用を理解するためにも用いられます。
これによって作業環境が作業者の行動にどのように影響するかを観察し、評価することができます。
能力やスキルの評価
さらに作業者が持つ能力やスキルを観察し、そのレベルや向上の余地を評価をするためにも行われます。
これには身体的な能力、認知的なスキル、コミュニケーション能力などが含まれます。
観察法は客観性が高く、作業や行動を現場で直接観察することで、より正確な評価や分析が可能となります。
しかし、主観的なバイアスを排除するために、適切な観察手法や評価基準の設定が重要です。
体験法
体験法は、作業分析や行動の理解を深めるために、分析者自身が実際に作業や活動を行い、その経験から情報を得る手法です。
分析者が実際に作業を行うことで、作業や活動を直接体験し、その特性や要素をより具体的に理解します。
この手法では、分析者が作業を実際に行うことで得られる経験や洞察が重要な情報源となります。
作業療法士が、特定の作業や活動を自ら体験することで、その作業における技能や課題、障壁を実際の視点から把握します。
ここでは体験法のメリットについて解説します。
リアルな理解
作業や活動を実際に行うことで、その実際の動作や困難さ、技能の必要性などを実感し、よりリアルな理解を得ることができます。
直接的な情報
分析者が自ら作業を行うことで得られる情報は、他の方法では得られない直接的なものであり、貴重な洞察をもたらします。
実践的な洞察
実際の体験を通じて、作業者が直面する困難や障壁、作業の実際の流れなどを理解することができます。
ただし、体験法にはデメリットもあります。
分析者の個人的な経験や能力に基づく偏りがある場合や、特定の作業や活動に対する環境の変化によって得られる情報が制限される場合があります。
そのため、客観性を保つためには、他の手法との組み合わせや検証が必要になります。
想定法
3つ目の方法である想定法は、作業分析において、作業者以外の情報源や過去の経験から作業や活動の特性を推測する手法です。
作業者自身ではなく、他者の説明や情報、文献、または分析者自身の過去の経験などから、作業や活動に関する特性や要素を推定します。
この手法では、作業療法士が直接作業を行うのではなく、他者の経験や説明、文献などを通じて作業の特性を把握しようとします。
たとえば、過去の研究や文献、または他の作業者からの情報や説明を元に、特定の作業や活動の特性や要素を予測・推測します。
想定法のメリットは以下の通りです。
情報源の多様性
他の作業者や研究などの情報を活用することで、幅広い視点から作業や活動の特性を理解できます。
リソースの有効利用
作業者を直接関与させずに、他の情報源を活用することで、時間やリソースを節約できます。
過去の経験の活用
過去の経験や文献から得られる情報をもとに、作業や活動の特性を予測することが可能です。
ただし、一見便利な想定法にももちろん限界もあります。
他者の情報や過去の経験に基づくため、正確性や実際の現場の状況との齟齬が生じる可能性があります。
そのため、客観的な情報や実際の現場での検証が重要になります。
想定法は、他の分析手法と組み合わせて使用されることが一般的です。