ライフキャリア・レインボーとは?【意味・歴史・構成する3つの要素について】

働き方改革なんて言葉が一般的になり、今後ますます自分自身の働き方、仕事、キャリア、人生といったものを考え直す機会が増えてくると思います。
でもそうすると…

  • 自分の仕事が合っているのかわからない
  • 今後の人生を考え直すけど少し怖い
  • 本当にやりたいことが分からない

…といった迷いもでてくるのではないでしょうか?

そこで今回は、“ライフキャリアレインボー(ライフキャリアの虹)”という考え方について解説します。
本記事が、少しでも自分自身のキャリアを見つめ直すのに役立つ一助になれれば幸いです。

ライフキャリア・レインボーとは?

ライフキャリアの虹(ライフキャリアレインボー)とは、
キャリア=職業とは考えず、キャリアを人生のある年齢や場面のさまざまな役割(ライフロール)の組み合わせである
…という考え方、概念になります。

歴史について

このライフキャリア・レインボーは、アメリカの教育学者、ドナルド・E・スーパーによって提唱された概念になります。
彼は、1957年に「キャリアの心理学」という著書を書き、このライフキャリア・レインボーの基礎について触れています。
この時代は特に、人々は組織で働いていたこともあり、人々がキャリアプランや将来の個人的な成長に関心を持つことは珍しいこととされていたようです。

その後、1980年に修正も加わり、よりさまざまなキャリア開発の“道しるべ”に役立っていると言われています。

そもそも“キャリア”って?

そもそも“キャリア”とはどのような意味になるのでしょうか?
定義としては…
積み重ねた技術・知識を示す経験
…を指すことが多いようです。

しかし、その他には転職回数や転職履歴といった意味も含んで使用されています。

キャリア=発展し続けるもの

上記のように、キャリアとは特に職業経験や職歴について意味する場合が多いとされていますが、ドナルド・E・スーパーはこの“キャリア”を職業に限定はしていませんでした。

“ライフ・キャリア”という言葉からわかるように、人生における様々な役割…という意味で使用していました。

人生全般にわたり、社会や家庭でさまざまな役割の経験を積み重ねて、初めて自身のキャリアが形成されると…という考えです。
人間は、こういった様々なキャリアを虹のように積み重ね、TPOによってそれぞれのキャリアを使い分けながら暮らしているという考え方が、ライフキャリア・レインボーということです。

ライフキャリア・レインボーは限定的?

このライフキャリア・レインボーの概念は自身の役割を考えるのに役立ちますが…

  • アメリカ限定ではないのか?
  • 古い概念だから今には通用しないのではないか?

…という疑問もあるようです。

たしかに発表されたのが1950年代ですから、キャリア理論の「古典」とも称されているのは事実です。
しかし、古い理論ではあっても、時代や国、地域が違っていたとしても、普遍的に応用できる理論とされています。

ライフキャリア・レインボーを構成する3つの要素

“ライフキャリア・レインボー”は、「キャリアは一生発展し続ける」という理念を基にした考え方です。
このライフキャリア・レインボーですが、大きく分けると次の3つの要素で構成され表現されます。

  • 場面(ライフステージ)
  • 役割(ライフロール)
  • 年齢

以下にそれぞれ詳しく解説します。

場面(ライフステージ)

この場面(ライフステージ)ですが…

  • 成長段階(0-15歳)
  • 探索段階(16-25歳)
  • 確立段階(26-45歳)
  • 維持段階(46-65歳)
  • 下降段階(65歳以上)

…の5つの段階に分けられます。

成長段階(0-15歳)

最初のこの段階では、身体の成長に焦点を当てることになります。
学校生活や家庭における家族との相互関係において、自分自身の価値についての考えを形成し始める時期になります。
興味、才能、能力を発見し、これから迎える「仕事」に対しての関心や積極性を高める時期ともされます。

探索段階(16-25歳)

自分が就くことが可能な仕事の種類と、さまざまなキャリアで成功するために必要なものについて学ぶ段階です。
学校生活・家庭生活・そして仕事において、その経験を元に試行錯誤を繰り返し成長する時期になります。
そして、その試行錯誤を繰り返し、学習していき、生涯の仕事を模索する段階ともいえます。
ただし、人によってはこの時点で将来の方向性が必ずしも明確ではないケースもあります。

確立段階(26-45歳)

このライフステージでは、ある程度自分が選択した仕事に落ち着く段階とされています。
いわば、社会の生産的なメンバーになる…ということです。
自分自身の仕事におけるビジョンが明確になり、より専門性を高める時期ともされています。
多くの場合、責任と個人の満足度の向上が特徴的な段階ですが、同時にアイデンティティ・クライシスを発生しやすい時期ともされています。

維持段階(46-65歳)

この段階では、既存のキャリアを維持し、これまでに得た経験や地位を守る時期とされています。
人によっては保守的になる場合もあります。
しかし、現在の働き方や仕事の種類を考えると、この段階は、Superがモデルを開発したときほど一般的ではないという指摘もあります。

下降段階(65歳以上)

多くの人は、この段階を仕事をはじめとする活動を、精神的・肉体的な衰えから引退する時期と考えます。
また、生活の中心を仕事から家庭や地域活動といった他の役割にシフトするケースも多くみられます。

役割(ライフロール)

役割(ライフロール)は…

  • 子ども
  • 学生
  • 職業人
  • 配偶者
  • 家庭人
  • 余暇人
  • 市民

…の8種類で構成されています。

子ども

年齢が小さい時はこの“子供”という役割が大半を占めます。
また幼少期であればあるほど、家庭の中で保護され、親と関わる時間が大半を占めることになります。
この役割は誕生時に始まり、両親の両方が亡くなるまで続くことになります。
超高齢化社会の現代では、高齢の両親の世話をする時間が長くなっていると考えられるため、この役割が昔と比べて長くなっているとされています。

学生

この役割は主に、小学校・中学校・高校・大学で勉強するという“学業”を役割としています。
しかし、最近は社会人になってから再度大学へ入学したり、専門学校へ通う…というケースも増えてきているという特徴があります。

職業人

これは主に有給の“働く”という行動を全て含めての役割になります。
生活を維持していくための収入を得るために仕事をします。
この役割は、特にアルバイト・会社員・自営業といった雇用形態での区別はされず、あくまで全ての“働く人”を対象とした役割とされています。

配偶者

結婚し妻や夫を得ることで、自身が“配偶者”という役割を担います。
最近では、法的な婚姻関係に縛られず事実婚として生活を共にするパートナーに対してもこの役割が適用されます。

家庭人

この役割は主に家族の一員として…ということになります。
各個人それぞれ、家庭生活を保ち続けるためにその役割を担うということです。
家事仕事…が主なものとしてあげられます。

子供を育てるという役割になります。
これは子供に対して養育するという法的な義務も背負うことになります。
多くの場合、子供が社会人(職業人)や、結婚し配偶者という役割を担うことでその負担は軽くなるのが一般的です。

余暇人

この役割は、自分自身が好きなこと…余暇時間に費やすためになります。
この役割を十分に楽しんで担うためには、他人とのコミュニケーション能力や健康の維持などが必要になります。

市民

地域活動やボランティアといった活動を担う役割になります。
これは主に利益を求めず社会貢献を目的として行う活動になります。

年齢

ライフキャリア・レインボーを構成する3つの要素の最後としては、“年齢”があげられます。
例としては、日本の“結婚”の平均年齢は男性が31.1歳、女性が29.4歳(平成27年)となっています。
また、“定年退職”の年齢となると一昔前は60歳…といったものです。
しかし、世の中の変化とともにこの年齢によるライフキャリアも変化していきます。
実際に、定年退職は65歳に引き上げられたり、晩婚化が進んだりもしていますので、一概に年齢のみでは言えなくなっているような気がします。

ライフロールの役割を果たすための14の価値観

前述した“ライフロール(役割)”ですが、これを果たすには“14の価値観”があるとされています。
人は自分自身が重要視する価値観を、職業人として…または他のライフロールにおいて実現しようとするという事も併せて実証されています。
提唱者のスーパー氏によると、人が重要だと感じる“14の価値観”は次のようなものになります。

  • 能力の活用
  • 達成
  • 美的追求
  • 愛他性
  • 自律性
  • 創造性
  • 経済的報酬
  • ライフスタイル
  • 具体的活動
  • 社会的評価
  • 危険性
  • 社会的交流性
  • 多様性
  • 環境

以下に詳しく解説します。

能力の活用

これは、自分自身が培ってきたスキルや知識を十分に発揮できるかどうか?ということになります。

達成

この“達成”という価値観は、掲げた目標に対して良い成績を達成できるかどうか?ということになります。

美的追求

“美的追求”という価値観は、自分自身で美しいものを作り出したり、職務上で美しさを見い出せるかどうか?ということです。

愛他性

“愛他性”という価値観は、自分はどれだけ他人の役に立てるかどうか?ということになります。

自律性

“自律性”という価値観についてですが、これは自分自身の職務の進行をどの程度自身で決められるかどうか?ということです。

創造性

“創造性”という価値観ですが、これはいかに新しいアイデアや商品を開発できるか?ということになります。

経済的報酬

“経済的報酬”についてですが、いかに自分自身が満足できる十分な報酬を受け取ることができるか?という価値観になります。

ライフスタイル

“ライフスタイル”という価値観ですが、これは自分自身の信条やモットー、ポリシーといったものに合うワークライフバランスが保てているか?ということになります。

具体的活動

“具体的活動”という価値観ですが、これは頭を使う知識労働だけでなく、身体を動かす仕事も取り入れられているかどうか?ということになります。

社会的評価

“社会的評価”という価値観ですが、これは自分自身の仕事が社会的にきちんと評価されているかどうか?ということになります。

危険性

“危険性”という価値観ですが、これは適度な緊張感を持つことができるリスクがあるかどうか?ということになります。

社会的交流性

“社会的交流性”ですが、これは職務上で孤独を感じることなく、適切なチームワークを保つ事ができているかどうか?という価値観になります。

多様性

“多様性”という価値観ですが、これは単純な職務ではなく、様々な仕事を受け持つ事ができるかどうか?ということになります。

環境

“環境”という価値観ですが、これはその職場は心地の良い環境となっているかどうか?ということになります。

ライフロールを果たすためには、ただ楽しいだけ、自分のやりがいだけではなく、様々な困難や壁といったものを乗り越えることが必要です。
だからこそ、自分がこの14の価値観のうちどれを重要視しているのか?を明確にしておく必要があると思うんですよね!

まとめ

本記事では、ライフキャリア・レインボー(ライフキャリアの虹)について解説しました。

これからの働き方を考える際に、このライフキャリア・レインボーやライフロールの14の価値観は役立つのではないでしょうか?
なによりも重要なのは、様々な場面や年齢によって変化していくことって部分でしょうけどね。

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