厚生労働省が3年ごとに実施している患者調査によると、精神疾患で医療機関に通院または入院している患者さんの数は1999年には約204万人でしたが、2002年には約258万人に増加しているようです。
さらに17年(最新値)は約419万人となり、15年間で約1.6倍に増加しています。
何かしらの精神疾患に苦しんでいる人が増加している傾向って、コロナ禍に関係なくずっと続いているんです。
こうなると今後はこの精神疾患、メンタルヘルスへの支援も求められてきます。
そこで今回は、精神医学の定義や特徴から人の心を理解するための3つの視点について解説します。
精神医学の定義について
そもそも、精神医学は次のような文言で定義づけされています。
精神医学(せいしんいがく、英語: Psychiatry)は、各種精神障害に関する診断、予防、治療、研究を行う医学の一分野である
…あくまで医学という学問の一分野なんですね。
精神医学の始まりについて
もともと精神医学は1899年の“エミール・クレペリン”の様々な功績によって、精神障害を分類することが試みられたのがはじまりとされています。
その結果、現在でも精神障害の診断に必要な“精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)”の作成につながっています。
精神障害と高次機能
精神機能や精神活動は次の機能・要素とも関連しています。
- 脳の高次機能
- 遺伝的素因
- 発達的、社会環境的要因
以下にそれぞれ解説します。
脳の高次機能
脳の高次機能には、意識、記憶、認知、判断、思考、感情、意志と欲動があります。
一方、知覚や運動といったものは“神経機能”とよばれ、これらの障害は神経(内科)学の範疇になっていますが、脳機能の障害という点では重複している部分が大きいようです。
遺伝的素因
精神活動は、遺伝的な素因としての“性格”を基礎にしている部分も大きいとされています。
発達的、社会環境的要因
上記の遺伝的な素因を基礎に、発達的、社会環境的要も加わった結果、個人の“人格”として表現され独自に展開を行っているとされています。
つまり“人の心”を理解するためにはこれら3つの要素から分析的に評価することができると理解していいかと思います!
精神医学の特徴について
では、精神医学という“人の心”も扱う分野にはどのような特徴があるのでしょうか?
特徴としては、次の3点に集約できます。
- 心理学的方法による診断が必要
- 身体面からの検討も必要
- 心理的、社会的、発達的視点が求められる
以下に少し詳しく解説します。
心理学的方法による診断が必要
精神医学の特徴の一つとして、診断には精神症状を心理学的次元で追及する精神病理学の方法を用いるという点があげられます。
この部分が身体医学との大きな違いでもあるとも言われています。
身体面からの検討も必要
精神症状や現象は、身体的な不調や脳器質自体の異常を原因とするものもあるため、身体面での検索…特に神経学的検索も同時に行う必要があります。
その症状や現象を生じさせている原因を追究するためには、前提としてこの視点を無くしてはいけないということです。
心理的、社会的、発達的視点が求められる
人は発達の過程で家族や学校、友人、職場、その他さまざまな社会環境的影響を受けています。
その結果、各年代の精神心理面に反映しているとされています。
クライアントの精神症状、現象を把握するためには、そのクライアントが受けるであろう社会的影響をも把握するという視点が必要になります。
つまり、この3つの視点を持つことが、精神医学では「人の心を理解すること」につながるってことと言えます。
精神医学の下位分類について
精神医学といってもそれを細分化すると非常に様々な専門的分野に分けることができます。
ライフサイクル別の精神医学
- 乳幼児精神医学
- 思春期、青年期精神医学
- 老年精神医学
専門領域別精神医学
- 生物学的精神医学
- 精神障害リハビリテーション学
- 精神病理学
- 社会精神医学
- 司法精神医学
- 精神保健学
- 精神療法学
- 睡眠精神医学
- 精神薬理学
- 力動精神医学
- 記述精神医学
- 犯罪精神医学
- 文化精神医学
- 精神腫瘍学
- 病跡学
- 産業精神医学
医療現場における精神医学
- リエゾン精神医学
- 病院精神医学
- 地域精神医学
まとめ
今回は、精神医学の定義や特徴から人の心を理解するための3つの視点について解説しました。
精神領域、メンタルヘルスの分野は今後非常に需要が高まっていくと言われています。
しかしこの分野は非常に幅広く、しかも境界線が曖昧であるため支援する側もいまだに手探りの状態と言えます。
定義や特徴、そして歴史などの背景を把握することは、自身の臨床における精神医学の知識を深めていくことにつながるのだと思います。