就労支援に関わる作業療法士は、職業リハビリテーション(以下、職業リハ)に関する施設や機関との連携を強化していく必要があります。
でも、いざクライアントの就労支援を行うことになっても…
- どこと連携していけばよいのか。
- そもそもどんな施設があるのか、いまいちよくわからない。
…なんてこと、多いようです。
たしかに病院内で医療寄りのリハビリを行っていると、この辺の支援に関する知識に抜けがでてきてしまうことも頷けます。
そこで今回は職業リハに関わる代表的な関連施設についてまとめてみました。
この記事が、就労支援を行っているけどどういたらいいかわからない…という作業療法士や職業リハ関連の方の一助になれれば幸いです。
就労支援とは?
そもそも就労支援とは、一言で言うと、“国が定める雇用政策”の一つになります。
対象としては、何かしらの疾患や傷病によって身体、精神に障害を有している人(発達障害や知的障害も含む)、貧困や高年齢といった理由により“働く”ということが困難な状況に置かれた人になります。
就労支援に関わる施設、事業所について
就労支援には様々な方法や手段がありますが、関わる施設、事業所としては主に次のようなものがあげられます。
- ハローワーク
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業、生活センター
- 障害者職業能力開発校
- 地域活動支援センター
- 就労移行支援事業所
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
以下に詳しく解説します。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、国(厚生労働省)が所管する公的機関で、正式名称は公共職業安定所といいます。
この公共職業安定所(ハローワーク)についてですが、
職業安定組織の構成に関する条約(第88号)(昭和29年条約第19号)に基づき加盟国に設置される公的職業安定組織(Public employment service)が運営する職業紹介所である。日本においては、厚生労働省設置法第23条に基づき設置される公共職業安定所(ハローワーク、英語: Public Employment Security Office)が該当する。
引用:wikipedia
と定義されています。
このハローワークの主な業務としては、
- 求人開拓
- 求職登録
- 職業指導
- 職業紹介
- 就職後の障害者に対する助言及び指導
- 事業主に対する助言及び指導
- 職場適応訓練
…があげられます。
これらは相談者の障害の有無に関わらず行われている業務ですね。
ハローワークでは一般の窓口だけでなく、障害を持つ人の就職や採用のための“障害者相談窓口”を設けているため、そこで求職登録、就職相談や職業紹介等を行っています。
ハローワークにおける障害者の就労支援の内容としては次のとおりになります。
- 職業相談・職業紹介
- 雇用達成指導
- 関係機関との連携
- 障害者向け求人の確保
- 障害者雇用率達成指導と結びつけた職業紹介
ちなみにハローワークは公的機関のためサービスはすべて無料で受けることができます。
しかしこのハローワークを利用する際には…
- 障害を明らかにして就職活動を行うこと
- ハローワークの障害者相談窓口の職員は決して専門家ではない場合があること
…ということを念頭においた上で利用しないといけません。
そうでないと、あまり良い情報を得られずがっかりして帰ってきた…なんてことになってしまいます(実際ありました)。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは…
- 障害を持つ人に対する専門的な“職業リハビリテーションサービス”の実施
- 事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助
…を実施しています。
各種の職業リハビリテーションを実施する“独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)”が設置している施設で、各都道府県に最低1か所設置されていて、全国に52箇所あります。
この障害者職業センターは前述したハローワークと連携を取り、利用者に対しての職業リハサービスの提供を行っています。
その職業リハサービスの内容は主に次の8つがあげられます。
- 職業評価
- 職業指導
- 職業準備訓練(基本的な労働習慣を体得するための訓練)
- 職域開発援助事業(労働習慣を含む職業能力の全般を向上させるための指導援助)
- 職業講習(OA講習及び職業準備講習)
- 職場適応指導
- 事業主に対する障害者の雇用管理に関する援助
- 地域障害者及び重度知的障害者の判定(雇用対策に関わるもの)
ちなみに、障害者職業センターとは、
- 障害者職業総合センター
- 広域障害者職業センター
- 地域障害者職業センター
…の総称になります。
病院内でクライアントの就労支援を行っている作業療法士は、この障害者職業センターとのパイプを持っていると非常にスムーズだと考えています。
障害者就業、生活センター
“障害者就業、生活センター”とは、地域における雇用・保健福祉・教育等の関係機関の連携拠点として、就業面及び生活面における一体的な相談支援を実施する機関になります。
通称“なかぽつ”なんて呼ばれる場合もあります。
業務内容としては主に次のようなものがあげられます。
- 日常生活の自己管理に関する支援
- 生活設計に関する助言
- 就職に向けた準備支援
- 就職活動の支援
- 職場定着に向けた支援
きちんと仕事に行けるようにするためには、日常生活もしっかり規則正しいものにしないといけない…ということで、生活設計に関するアドバイスまで行う点が特徴と言えます。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校は、身体障害者や知的障害者等に対して、その能力に適応した普通職業訓練又は高度職業訓練を行うための公共職業能力開発施設になります。
国や都道府県が設置する公的な機関になり、全国で20施設設置されています。
地域活動支援センター
地域活動支援センターとは、障害者が通所により、創作的活動または、生産活動の機会を提供することにより、社会との交流の促進等の便宜を供与し、もって障害者等地域生活支援と社会参加の促進を図るという定義のもと設置されている通所施設になります。
障害者自立支援法に基づいた市町村・都道府県が行う事業の一つです。
障害によって働く事が困難な障害者の日中の活動をサポートする福祉施設であり、その目的によってⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型に分かれます。
就労移行支援事業所
“就労移行支援事業所”とは、障害を有する人が一般企業からの雇用につながるように支援する“障害者総合支援法”という法律に基づく通所型の就労支援サービスになります。
就労継続支援A型
“就労継続支援A型”は、障害を有する人が、一般企業からの雇用が困難であるが、雇用契約に基づく就労が可能な人に対して行う就労支援サービスのひとつです。
事業所と利用者の間に雇用契約が交わされているため、社会保険への加入も義務付けているのが特徴とも言えます。
就労継続支援B型
“就労継続支援B型”とは、一般企業に雇用されるのが難しく、かつ雇用契約による就労が困難な障害を有する人に就労機会を提供し、生産活動を通じて知識や能力の向上に必要な訓練といった障害福祉サービスを提供することを目的としている施設になり、一昔前までは「福祉工場」とよばれていた施設が該当します。
まとめ
本記事では、就労支援、職業リハに関わる施設や事業所、サービスについて解説しました。
案外、「こんなの知らなかった!」なんて施設、あったのではないでしょうか?
就労支援を行うにも、作業療法士など支援する側には圧倒的な知識が求められます。
協力を仰げる施設や利用できそうなサービスはどんなものがあるのかを知り、さらにどう連携をしていくのか検討していくことが、スムーズな切れ目のない支援につながる…と言えます。