作業療法士が中途障がい者の職場復帰、復職に関してできる6つの事【重要なのは”気づく”ってことかな…と】

リハビリで職場復帰や復職を目標にする場合、その職業生活を長く維持していくための工夫や配慮が必要です。
とはいっても、その工夫や配慮をするためには何から判断すればよいの?となる作業療法士も多いようです。

  • 障害特有の症状?
  • できることできないこと?
  • 生活上の注意点?

作業療法士は、扱う範囲が広い分どこから何に手をつけていいのかわからなくなりがちです。

そこで今回はクライアントの職場復帰や復職のために、作業療法士ができることはどのようなものがあるのか考えてみました。

本記事が少しでも、就労支援や職場復帰支援のリハビリを行っているが、どのようにすればよいかわからない…という作業療法士の方の一助になれれば幸いです。
ちなみに今回の対象は脳卒中といった身体障害領域の中途障害を有したクライアント…とイメージしていますが、俯瞰的な視点からみれば汎用的に扱える項目になるかと思います。

作業療法士が職場復帰、復職に関してできること

では結論から、職場復帰や復職、就労に関して作業療法士ができることをいくつか列挙してみます。
ここでは…

  • 障害特性からの現状と課題の把握
  • 残存能力の開発
  • 予後予測
  • 作業分析
  • 精神、心理面への支援
  • 環境調整

…に焦点を当ててみます。

障害特性からの現状と課題の把握

なによりもまずはクライアントの「現状」について、医学的な視点から客観的に把握することが必要です。

  • 脳卒中だったら痙性の特徴
  • 高次脳機能障害特有の症状
  • うつ病の認知のゆがみや思考の傾向

…などなど、その現状については様々かと思います。
クライアントの現状把握のための評価は様々ですのでここで詳細については言及しませんが、復職や就労に向けて必要な要素を評価し、数値かできるものは数値化する。
その上で定性的な特徴を把握することで、“仕事を行うための課題”として抽出することができます。

もちろんこの場合は一方的なものではなくクライアントを中心としたものでないといけませんし、共通理解が取れるように配慮する必要もあります。

残存能力の開発

医学的リハビリテーション、医学的モデルの視点からすれば、障害の改善、治療的介入を優先させるのかもしれません。
でも、職業リハビリテーションを軸にした視点ではむしろ「どのように就労生活へ適応させるか?」という「治療<適応」のような発想が重要視されます。

これは作業療法士の代償的アプローチを基礎とするものだと思います。
どのような能力が残存しているのか、本人に負担なく、かつ意欲的にその能力を“活かす”ことができないのか?という視点からのアプローチが必要です。

予後予測

長く就労生活を維持していくためには、やはり障害特性を踏まえたうえでの「予後予測」も必要になってきます。
クライアント自身はもちろん、雇用する事業主(企業)とともに、この障害特性を踏まえたうえでの予後予測への理解を促すことで、リスクヘッジにもつながっていくと考えられます。
この部分を考えると、定期的かつ長期的なフォロー、関わりが必要になってきます。

そのためには制度的な課題解決をしないといけないかもしれませんね。

作業分析

作業分析って聞くと、作業療法士にとってはAMPSに代表するようにADLやAPDLに限定的なイメージがあります。
でもそれって非常にもったいないと思うんです。

  • どうすれば無駄な工程を省くことができるのか?
  • どうすればミスが少なくなるのか?
  • どうすれば負担なく作業を行えるのか?

この視点も働くことには必要です。

産業界での作業分析について調べると、サーブリッグ分析やMODAPTSといった「いかに効率よくその作業を行うか?」という分析学が非常に多くありますし、一般化しています。
この手法をもっと作業療法士が実用的に利用することで、復職や就労支援の一つとして役立たせることができるんだと思うんです。

精神、心理面への支援

フィジカル面、動作、活動面への支援のみならず、精神、心理面へも介入できる点は作業療法士の強みです。

  • わからないことを質問するための心構え
  • ミスをしてしまった時の考え方
  • そもそもなんのために働くのか?

こういった働きやすくするための気持ちの切り替え方法について支援も必要です。

作業療法士は「働くこと」「働き続ける事」に対してのモチベーションの維持と向上や、ストレスへの対処の方法。
さらには、仕事に対しての自分の心構え(マインドセット)といったものにまで拡大して支援することができます。

環境調整

就労生活を過ごすための環境も、人的環境、物的環境があります。

人的環境は主に上司、同僚、取引先、顧客や家族との“人間関係”。
物的環境はその仕事(作業)を行う“現場”になります。

復職、職場復帰、そして長い就労生活の維持を行うためには、本人の努力だけでは難しい部分があります。
これらの環境の整備をコンサルテーション的に行うことは作業療法士にとって得意分野ともいえます。

まとめ

本記事では、作業療法士が中途障がい者の職場復帰、復職に関してできる事について解説しました。

こうしてまとめてみると、復職や職場復帰、就労に関して作業療法士が支援できる項目って非常に多くあるんだと思うんです。
でもこれらの項目って別に職業リハビリとは別の領域でも同じことなんですよね。
ただその視点のベクトルが「働く」という部分に向いているというだけなんです。

そう考えると、どんな領域で活躍している作業療法士にもこれらの項目は持ち合わせているので、少しそのベクトルを変えるだけですぐに就労支援につなげることができるはずなんです。
「知識や経験がないからできない」ではなく、すでに自分のなかに持ち合わせているということに“気づく”ことが作業療法士としてできることを増やすことにつながるんだと思うんです。

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