作業療法の定義と改定について【社会の変化に合わせて変化していくんです】

講座

作業療法って幅が広いんです。
そうなるとたまに、自分の作業療法って正しいのか?って迷うことがあります。

そんなとき、特に作業療法の定義ってなんなのかなと考えます。
今回はこの定義について解説します。

作業療法の定義

最初の作業療法の定義は、1965年6月29日に「理学療法及び作業療法士法」で制定された…

「作業療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその応用的動作又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作、その他の作業を行わせることをいう(法第2条)

…とされています。

1985年の改定

1965年に制定された作業療法の定義に対して、日本作業療法士協会は様々な点で疑問や異議を抱きました。
そこで、世界作業療法士連盟や先進的な作業療法の国であるアメリカ作業療法協会の定義を参考にしながら、検討を重ねました。

そして、協会創立20周年である1985年に、「日本作業療法士協会による作業療法の定義」として新たな定義が提案されました。
その定義は以下の通りです。

身体または精神に障害のある者、またはそれが予測される者に対してその主体的な生活の獲得を図るため、諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・訓練、指導および援助をいう

2018年の改定

そしてさらに2018年5月、日本作業療法士協会総会で新たな改定案が可決されました。
この経緯としては、“作業療法”の職能が非常に多様化していること、現行の定義ではその多様化を十分に表現できなかったこと…ということで改定に至ったようです。

この改定後の定義では…

作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す

…となりました。

この改定後の定義の文脈をそれぞれ感が手見ます。

「医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる」について

改定後の定義内のこの部分は“作業療法の対象”について触れていることになります。
以前までは、作業療法の対象について“身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者”という表現でした。
となると今回の改定後のこの文言から、作業療法の対象が身体・精神障害といった医療、福祉的な範疇には納まらなくなった…と解釈できます(もちろん診療報酬等の対象うんぬんとは別にの意味です)。

医療、保健、福祉…という従来の対象範囲以外にも教育、職業とより具体的に示すようになったことからもその意味が読み取れるのかな?なんて思います。

「作業に焦点を当てた治療,指導,援助である」について

様々な作業療法士の方とお話しても、「OTのPT化」が問題視されています。
作業療法士のアイデンティティでもある“作業”という部分を重要視せず、機能面での評価、徒手的な治療介入のみで終結してしまうリハビリテーション…。
これでは提供できることが限られてしまいます。

もっとクライアントの“(大枠での)作業”に注目し、介入手段としても作業を用いるようにすることが、今回の定義改定でも強く謳われているのでしょうね!

「作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す」について

作業療法における“作業”の定義にもなるこの部分ですが、あくまでクライアントが望むもの、必要とするもの、価値が高いものを作業療法における“作業”と捉えていることがわかります。
その”作業”が一般的なのものではなく、非常にパーソナル化していることを示唆していると考えられます。

これは、よりクライアント中心の作業療法の必要性が求められてきていると解釈できます。

2018年の改定後の定義の注釈について

また、この改定後の定義には以下の注釈が設けられています。

  • 1.作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる
  • 2.作業療法の対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指す
  • 3.作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる
  • 4.作業には、人々ができるようになりたいこと、できる必要があること、できることが期待されていることなど、個別的な目的や価値が含まれる
  • 5.作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる

では、この注釈についても考えてみます。

1.「“人は作業を通して健康や幸福になる”という基本理念と学術的根拠に基づく」について

これは従来の作業療法の定義であり、根幹でもある部分ですね!
ここの部分は大きく変わらないのでそのままでよいのかと。

2.「対象となる人々とは~またはそれが予測される人や集団を指す」について

“環境への不適応”と“日々の作業に困難が生じている”という部分が非常に特徴的かと。
これって言いかえれば「○○しにくい状態」と捉えられます。

仕事がしにくい…、学校に行きにくい…といった特に医療的な“障害”を持たなくても感じるような“日常生活上の心のしこり”のようなものも作業療法による解決対象とすることができるかもしれません。

3.「作業には~人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる」について

作業を生活行為という視点で捉え、それを構成するのが心身の“活動”という点が非常に理解しやすいかなと。
あくまで“機能”ではないってところもポイントかと!!

4.「作業には~個別的な目的や価値が含まれる」について

“個別的な”という点からも非常に多様性があるということを前提としています。
上述した定義の解釈での”作業のパーソナル化”に当てはまる部分かなと思います。

クライアント中心の作業療法を考えるにあたっても、提供する作業はそのクライアントそれぞれに合わせた”個別の作業”である必要性を謳っているのでしょうね。

5.「作業に焦点を当てた実践には~手段としての作業の利用と、~目的としての作業の利用、~環境への働きかけが含まれる」について

この部分では、作業療法士が“作業”をどのように扱うか?について触れています。

  • “手段としての作業”はクライアントの心身の回復、維持、低下予防、そして行動変容を促すため
  • “目的としての作業”はクライアントにとって価値基準が高い生活行為の実現のため
  • “環境への働きかけ”は代償的アプローチの必要性について

…ということになります。

今回の定義改定についての反応をtwitterで調べてみた

改定直後の2018年のTwitterでの反応を調べてみました。
一部をご紹介します。

まとめ

今回の作業療法の定義を少し自分なりに解釈をしてみました。
多少希望的観測も含んでいますが(笑)、この改定で作業療法士が活躍できる領域が広がり、もっと社会全体が“作業療法”を必要とし、身近に感じられるようになればいいですね!

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