作業療法において手工芸を扱うことはどのような目的があるのでしょうか?
本記事ではこの手工芸の目的、歴史的背景について解説します。
手工芸とは?
手工芸とは、実用性と美的価値を兼ね備えた工作物を作ることや、その作品のことを指します。
手工芸は、手を使い、頭を使いながら、より良いものを作り出そうとする活動です。
この手工芸は、作業療法においても治療手段として利用されることがあります。
手工芸を作業療法で使う目的について
アクティビティの項目でも触れましたが、少し手工芸に視点を変えその目的について解説します。
手工芸を作業療法で使う目的は、患者の身体的、認知的、精神的な健康を促進することになります。
手工芸は、患者が手を使い、頭を使いながら創造的な活動に取り組むことを可能にします。
これにより、以下のような効果が期待されます。
身体的な効果
手工芸は、手や筋肉の動きを促し、手の巧緻性や協調性を向上させることができます。
また、手工芸の作業中には、患者の身体的な痛みや不快感が軽減されることもあります。
認知的な効果
手工芸は、集中力や注意力を高める効果があります。
患者は、作業に没頭することで日常のストレスや不安を忘れることができ、心のリフレッシュが図れます。
また、手工芸は問題解決能力や創造性を刺激することもあります。
精神的な効果
手工芸は、自己表現や自己肯定感を高める効果があります。
患者は、自分自身が何かを作り上げることで達成感や満足感を得ることができます。
また、手工芸はリラクゼーション効果もあり、ストレスの軽減や心の安定にも寄与します。
手工芸は、作業療法の中で患者の能力や興味に合わせて選ばれ、治療計画に組み込まれます。
手工芸は患者にとって楽しく意義のある活動であり、自己成長や回復のプロセスを支援する重要な手段となります。
作業療法における手工芸使用の歴史的背景
手工芸を治療として扱う職種は作業療法のみかもしれません。
その歴史的背景を知ることも重要と考えます。
そもそも始まりは18世紀
作業療法における手工芸の使用の歴史は、18世紀以降にさかのぼります。
当時、西欧では産業の発展により機械化が進み、人間性が失われるという考えが生じました。
この背景から、芸術や手工芸に携わることが人間性の回復につながるという「芸術と手工芸運動」が起こりました。
精神病院での導入
また、精神病院では人道主義的治療が謳われ、軽作業や手工芸が用いられるようになりました。
これらの流れを受けて、手工芸やその他の作業を専門的な知識と視点で用いることを目指したのが作業療法です。
作業療法の確立に貢献した人物として、作業療法促進協会の設立メンバーであったホールが挙げられます。
彼は手工芸の身体的、認知的、精神的な有用性を記し、手工芸を作業療法の治療手段として紹介しました。
手工芸使用の衰退
しかし、手工芸はアメリカでは次第に治療的手段として前面に押し出されなくなりました。
自然科学の隆盛の中で、作業療法はより明確に測定可能な治療方法を求める傾向がありました。
そのため、手工芸は専門的ではないとみなされ、他の代替手段が登場するようになりました。
ただし、手工芸は作業療法にとって伝統的であり、今もなお有用な治療手段として認識されています。
その治療効果や理論背景については、まだ十分に解明されていない部分もあります。
しかし、臨床家が対象者について手工芸の治療効果をよく見つめることや、研究が進められることにより、手工芸は作業療法の専門性を支えるための治療手段としてより確固たる地位を築くことが期待されています。