「失敗するのも経験」という間違いやすい認識について【試行錯誤も間違えると、弊害があるんです】

誰でも失敗はしたくありません。
それは仕事でも恋愛でもなんでもそうです。
できる限りは失敗はしたくない。

でもこの意見には必ずと言っていいほど…

「失敗も経験だから」
「若いうちはどんどん行動して失敗して覚えていかなきゃ」

…という昭和世代の(笑)意見が付きまといます。

…わかります。
その意見もわかるんです。

でも、この『失敗も経験だ理論』って、相手の状況や状態によってうまく働かないこともあるんです。

今回は、「失敗することは本当に経験になるのか?」という疑問について、セラピストの観点で考えてみます。

失敗するのも経験では?という意見に対して

失敗しないように小さなステップを積み重ねて行動していく方法として、エラーレスラーニングというものがあります。
ただ、このエラーレスラーニングに対してよくある意見として…

  • 「失敗するのも経験ではないか?」
  • 「甘やかすのは間違っていないか?」
  • 「応用が利かなくなるのではないか?」

…といった声がよく聞かれます。
では、ここからはこれらの意見について反論的に解説しますよ(笑)。

「失敗するのも経験ではないか?」に対して

結論から言えば、「自己評価が低い段階では、失敗は毒である」ということになります。

もちろん失敗することも必要です。
では、なぜ「失敗することが必要」なのでしょうか?

結論を言ってしまえば、「改善する材料になるから」です。
「失敗=改善情報」という考え方ですね。

失敗をすると、何がダメだったのかを知ることができます。
それが改善するための貴重な情報になります。

「〇〇したけれど、怒られた。なぜだろう。」
「この部分が悪かったのかもしれない。」
「次はこの部分を修正してみよう」

このように展開できます。
これが「改善(カイゼン)」です。

でも、これって大事な前提条件があります。
それは「自己評価がある程度保っていること」です。

改善を行うための失敗は、自己評価が維持している状態でないと逆効果になります。
高すぎてもちょっと問題になりそうですので、「低すぎず、高すぎず…」の状態。

自己評価が低い段階でミスをすると…
「やっぱり私にはできないんだ。」
「どうせ自分には無理なんだ」
…と改善する行動に移せなくなります。

それでは意味がありませんよね。
経験として失敗をするためには、まずは自己評価をある程度維持しておく状態にしていないといけません。

「甘やかすのは間違っていないか?」という意見に対して

これも結論から言えば、「”甘やかす”と”認める”を間違えるな!」ということです。

厳しくして育てる。
ガミガミ怒って、一挙手一投足に細かい指示をして教育する。

…これは相手の気が滅入ってしまいますし、なにより成長しません。

でも逆に…

なんでも怒らずにそのまま。
相手がミスをしても、「いいよいいよ」と注意もしない。

…それもなんだか違います。

やっぱりポイントは「改善」を促せるかどうかです。

甘やかすというのは、相手の悪いところをそのまま放置することです。
これでは改善しないんです。

改善のためのきっかけや情報、材料すら与えない状態ですからね、
相手は何が悪かったのかわからないままずっと繰り返していくだけです。

思うに一番残酷な方法かもしれません。

じゃあやっぱり厳しく怒ったほうがよいのか?
…違います。

「認める」ことです。

相手の良いところも悪いところもそのまま認めることです。
そして、何か悪いところは「怒る」のではなく、「促す」こと。
「怒る=矯正」だけど、「促す=修正」
この違いですね。

「●●というミスがあったから修正が必要だね」
「次に繰り返さないようにするためにはどういう方法があるかな?」

こういった質問形式で投げかけることがポイントになります。
もちろん威圧的にでは逆効果ですから、あくまで本人が自分から改善案を出し、行動できるようにすることが必要ですよ。

甘やかすと認めるの違い、しっかりと覚えておく必要があります。

「応用が利かなくなるのではないか?」という意見に対して

応用って基本が身についていないとできないんです。
これはなんでもそうです。
学生時代、数学の応用問題をいきなり解こうと思っても無理ですよね?
まずは基本問題。
その次に応用問題。

では、失敗をしないと応用が利かなくなるのか?

もちろん失敗を繰り返せば応用が利くようになります。
でもそれは、前述したような自己評価が維持している状態でないといけません。

応用が利くようになるためには、一度や二度失敗を繰り返すだけでは身に付きません。
自己評価が低い段階で、これは心へのダメージが大きすぎます。

「失敗をしないと応用が利かなくなるのでは?」という意見に対しては…

  1. 応用を利かせるようにするためにまず自己評価がどんな状態かを知る
  2. そして自己評価をある程度維持できる段階まで持っていく
  3. その上での経験として失敗をする
  4. そしてその失敗を繰り返すことで応用できるようになる

…というステップが重要です。
順番を間違えてはいけませんってことですね。

“試行錯誤”という学習方法

上記で少し触れたエラレーレスラーニングの基本は「失敗をなるべくさせない」という学習方法になります。
この反対の方法としては“試行錯誤(Try&Error:トライアンドエラー)”になります。

もちろんその課題を達成するための手段や方法を学ぶためには“試行錯誤”も一つの学習方法と言えます。

しかし、前提として対象者の能力や状態、その課題の特徴が試行錯誤の学習方法にマッチしているかどうか?ということがあげられます。
ここでの状態ってのは、ミスを受け入れられるメンタルの状態かどうか。
課題の特徴ってのは、改善を繰り返すことで達成できるものなのかどうか。

そして試行錯誤で学ぶためには…

  • 別の手段が選択できる
  • その課題に対しての高い動機づけ(きっかけや目的)
  • 成功体験の経験や自己肯定感

…といった前提条件が必要になります。

ただし試行錯誤という方法は…

  • フラストレーションを感じやすい
  • 達成までのプロセスに時間がかかる

…といったネガティブな副次的効果を生み出すというリスクを伴います。
つまり、試行錯誤で学ぶための前提条件をクリアした対象者や課題でないと、「トライ&エラー」どころか、「エラー&エラー」の状態を生み出すことになってしまいます。

まとめ

今回は「失敗するのも経験」という考え方が、相手の状態にとっては当てはまらないんだぞってことを解説しました。

重要なのは「自己評価」です。
この自己評価の状態を見極めていないと、いくら失敗しても学んでいかないし、病んでいってしまうんです。

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