作業分析を大きく分けた一つに“限定的作業分析”があげられます。
この分析方法は作業療法の独自のものですから、経験と知識が必要なんだと思います。
今回はこの限定的作業分析の特徴と、その分析法を行う際の注意点について解説します。
限定的作業分析の特徴について
この限定的作業分析の特徴ですが、ここでは…
- 臨床の中で発展した
- 特別な目標・患者を想定している
- 理論によって様々
- 作業の特別な側面を強調している
- 様式や方法は合意されていない
…の5つの特徴にフォーカスをあてて解説します。
臨床の中で発展した
限定的作業分析法は、作業療法の臨床の中で発展してきた分析法と言われています。
そのため特定の作業療法士としての知識や治療介入技術が必要になってきます。
ですので、より作業療法独自の専門的な分析手法とも言えます。
特別な目標・患者を想定している
限定的作業分析法は、一般に特別な治療目標や特別な患者さんを想定した分析法です。
包括的作業分析がその作業自体を一般的な視点から分析するのに対して、限定的作業分析は作業療法士が関わる臨床や現場目線での分析…という解釈ができます。
理論によって様々
限定的作業分析法はどの理論的立場、理論モデルをとるかによって、分析法が異なっていきます。
ある特別な治療パラダイム(枠組み)を治療に用いろうとするなら、同じパラダイムの作業分析法を用いないと評価と治療的介入が結びつかないようです。
例で言えば感覚統合モデルを治療に用いたのなら、感覚統合的なアプローチの作業分析法…といった具合です。
ちなみにそのモデルの種類としては…
- 理論・モデルにおける作業分析
- 精神療法モデルにおける作業分析
- 集団療法モデルにおける作業分析
- 認知療法モデルにおける作業分析
- 神経心理学モデルにおける作業分析
- 生体力学モデルにおける作業分析
- 運動コントロールモデルにおける作業分析
- 感覚統合モデルにおける作業分析
…等があげられます。
作業の特別な側面を強調している
限定的作業分析法は作業のある特別な側面を強調するといわれています。
まあ、これはどの治療パラダイムを基礎にするかによって変わってくる理屈と一緒と言えますね。
様式や方法は合意されていない
この分析法の様式や方法について、合意されたものはないようです。
つまり…まだ体系化されていないってことでしょうね。
たしかにいくら“限定的”とは言っても世の中の多種多様な作業を拾い上げることは難しいのでしょうね。
限定的作業分析法を行う際の注意点
では、この限定的作業分析を行う際、どのような点に注意をする必要があるでしょうか?
ここでは…
- 理論を熟知していないといけない
- 分析する作業を知っていること
- その作業の裁量、道具、プロセスと環境を知っていること
- 対象作業の経験があること、熟知していること
- 特定の環境を設定して行うこと
…の5つについて解説します。
理論を熟知していないといけない
限定的作業分析を行う際には、分析する理論的治療パラダイムを熟知し、治療技術を持っていることが前提となります。
分析する作業を知っていること
また、その理論的治療パラダイムだけでなく分析対象であるその作業そのものを知っていることも大前提となります。
その作業の裁量、道具、プロセスと環境を知っていること
限定的作業分析を行うにはその作業を行う際に…
- 必要な“材料”
- 使用する“道具”
- できあがるまでの“プロセス”
- 人との関わりの“範囲と程度”
…といった環境面についても知っていることが必要になってきます。
対象作業の経験があること、熟知していること
分析する作業に従事した経験があることが望ましいとされています。
仮に実際にやったことがなくても、その作業についてかなり細かい部分まで熟知していることでも補完できるようです。
ビギナーを上回るほどの知識が必要ってことですかね?
特定の環境を設定して行うこと
限定的作業分析を行う場合、その作業を行う環境を設定して行うことが必要になってきます。
まとめ
今回は限定的作業分析の特徴とその注意点について解説しました。
限定的作業分析は作業療法独自の理論、治療パラダイムを基礎に展開していく分析法です。
だからこそ作業療法士の強みでもあり、“作業療法士にしかできない作業分析”と言えると思います。