動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)- 目的・原則・方法などについて

動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)- 目的・原則・方法などについて 用語

動機づけ面接(MI)はクライエントの内発的な変化を促進する心理療法です。
本記事ではこの目的や方法などについて解説します。


動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)とは?

動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)とは?
動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)は、クライエントの自発的な変化を促すためのカウンセリングや心理療法のアプローチです。
この手法は、特に行動の変化を促す必要がある健康関連の問題(例えば、依存症、食生活の改善、運動不足、医療指示の遵守など)に対して効果的です。

動機づけ面接の核心は、クライエントが自分自身の言葉で変化の理由を話すことを促し、変化に対する内発的なモチベーションを高めることにあります。
このプロセスでは、セラピストは共感的な聞き手となり、クライエントの話を受け止め、理解を深めることで、クライエントが自身の考えや感情をより深く探究する手助けをします。

動機づけ面接は、クライエントの内発的な変化を引き出すために、共感的な聞き手としてのセラピストの役割が重要になるんだ!
その過程で、クライエントが自らの言葉で変化への動機付けを高めることが促進されるんですね!

目的

動機づけ面接(MI)の目的は、クライエントが自らの問題行動や状況に対する自発的な変化を促す内発的なモチベーションを高めることにあります。
以下に、その主要な目的として…

  • アンビバレンス(両面性の感情)の解消
  • 内発的モチベーションの強化
  • 自己効力感の向上

…について解説します。

アンビバレンス(両面性の感情)の解消

アンビバレンスとは、個人が変化に対して抱く矛盾した感情や考えのことで、MIの重要な焦点の一つです。
多くのクライエントは、自分の行動を変えたいと思いながらも、同時に変えることへの抵抗や恐れを感じています。
このような矛盾する感情は、変化への道を進む上で大きな障害となり得ます。
MIの目的は、セラピストが共感的な聞き手となり、クライエントが自身のアンビバレンスについて話し、それを理解し受け入れることを支援することにより、このアンビバレンスを解消し、変化への準備を促進することにあります。

内発的モチベーションの強化

MIでは、クライエント自身からの変化に向けた動機づけが最も強力だと考えられています。
内発的モチベーションとは、個人が自分自身の価値観、欲求、または目標に基づいて行動を起こす動機のことです。
MIのプロセスを通じて、セラピストはクライエントが自分自身の言葉で変化の理由を話す機会を提供し、その過程でクライエントの内発的モチベーションを強化します。

これにより、クライエントは自分にとって重要な変化を自分自身のために、そして自分自身によって行うことの価値を認識し、変化への意欲を高めることができます。

自己効力感の向上

自己効力感とは、個人が特定の行動を実行し、望む結果を達成する自分自身の能力に対する信念です。
動機づけ面接では、セラピストはクライエントが過去に成功した変化の経験を振り返ることを促し、また、小さな成功を重ねることを支援することで、クライエントの自己効力感を高めます。
自己効力感が高まることで、クライエントは変化に向けた行動を取る際に必要な信頼と自信を持つことができるようになり、結果として変化を維持する可能性が高まります。

動機づけ面接はクライエントが自身の問題行動や状況を変えるための動機づけと自信を内から育むための基盤を提供するってことだね!
クライエントが自分自身の内面から湧き上がる動機付けを通じて、実際の行動変化につながる深い理解と意欲を発達させることを目指しているんですね!

動機づけ面接の4つの原則

動機づけ面接(MI)は、クライエントが自らの問題に対して自発的な変化を促すためのカウンセリング技術であり、以下の4つの基本原則に基づいています。

  • 共感を表現する
  • 矛盾を拡大する
  • 抵抗を手玉に取る
  • 自己効力感をサポートする

これらの原則は、クライエントとの効果的な関係を築き、変化への動機付けを高めるための指針を提供します。
以下にそれぞれ解説します。

共感を表現する

共感を表現することは、MIの基礎であり、セラピストがクライエントの感情や経験を理解し、それをクライエントに反映させるプロセスです。
このアプローチにより、クライエントは自身が受け入れられ、理解されていると感じることができます。
共感的な関係を築くことで、クライエントは自己防衛の姿勢を低下させ、内面の思いや感情をよりオープンに表現することが可能になります。

この信頼関係の中で、クライエントは自身の問題や変化に向けた思いを安心して探求することができ、変化への動機付けが自然に高まります。

矛盾を拡大する

クライエントが自身の理想と現実の間にある矛盾を認識することで、変化の必要性や意欲が高まります。
セラピストは、クライエントが抱えるこの種の矛盾を探り、その認識を深めることで、クライエントが変化への動機付けを自ら見出すよう促します。

この過程では、セラピストはクライエントが現在の行動や態度が自身の目標や価値観とどのように合致していないかを理解するのを支援し、変化を促進するための内発的な動機を強化します。

抵抗を手玉に取る

MIでは、抵抗は変化への自然な反応とみなされ、病的なものではないと捉えられます。
セラピストは、クライエントの抵抗を否定や対立の原因とするのではなく、それを理解し受け入れることによって、クライエントが安心感を持って自身の感情や矛盾に向き合えるようサポートします。

このように抵抗を扱うことで、セラピストはクライエントとの関係を強化し、変化への抵抗を減少させることができます。

自己効力感をサポートする

自己効力感は、個人が自身の行動変化を成功させる能力を信じることを意味します。
セラピストは、クライエントの自己決定を尊重し、小さな成功を称賛することで、クライエントの自己効力感を高めます。
このサポートにより、クライエントは自分自身の力で変化を達成できるという信念を強化し、目標に向かって積極的なステップを踏み出すことが促されます。

自己効力感の向上は、持続可能な変化への重要な鍵となります。

これらの原則は相互に関連し合い、クライエントの自発的な変化を促すための強固な基盤を形成することにつながるんだ!
これらの原則を適用することで、クライエントが自己の内面から動機付けられ、実質的な行動変化を達成する手助けをすることができるんですね!

方法

ではこの動機づけ面接はどのような方法で行われるのでしょうか?
ここでは…

  1. 開かれた質問(Open Ended Questions)
  2. 是認(Affirmation)
  3. 聞き返し(Reflective Listening)
  4. 要約する(Summarization)

…という4つのプロセスについて解説します。

開かれた質問(Open Ended Questions)

開かれた質問は、クライエントに対して広範囲にわたる回答を促す質問スタイルです。
この種の質問は、クライエントが自分の思いや感情、経験をより深く、詳細に語ることを可能にします。

例えば、「今、どんな気持ちですか?」という質問は、クライエントが自分自身の内面を探究し、その時点で感じている複雑な感情や考えを表現する機会を提供します。
これに対して、「今、不安ですか?」と尋ねると、単純な「はい」または「いいえ」で答えることができ、クライエントの内面を深く理解する機会が失われます。

開かれた質問は、対話を促進し、クライエントが自己の問題や課題についてより豊富な情報を提供することを奨励します。

是認(Affirmation)

是認は、クライエントの経験や感情、努力を認め、肯定するカウンセリングの技術です。
クライエントが変化に向けた肯定的な行動や考えを表現したとき、セラピストがこれを是認することで、クライエントの自尊心を高め、変化を促進する意欲を支援します。
是認は、クライエントが直面している挑戦に対して自分自身をより肯定的に見る手助けとなり、変化に向けた一歩を踏み出す勇気を与えます。

例えば、クライエントが小さな成功を報告した際に、その努力を認識し称賛することで、さらなる自己改善の動機づけにつながります。

聞き返し(Reflective Listening)

聞き返しは、クライエントの言葉や感情を反映し、理解を深めることを目的としたコミュニケーション技術です。
このアプローチでは、セラピストはクライエントの言葉をただ繰り返すのではなく、その背後にある感情や意味を捉えて反映します。
これにより、クライエントは自分の感情や考えが正確に理解されていると感じ、より深い自己探求と問題解決への意欲が促されます。

聞き返しは、クライエントとの信頼関係を強化し、否定的な感情や抵抗感を緩和する効果もあります。

要約する(Summarization)

要約する技術は、カウンセリングの過程でクライエントが話した内容を総括し、重要なポイントやテーマを明確にする方法です。
このプロセスを通じて、セラピストはクライエントの変化に向けた動機や目標、挑戦を整理し、クライエントがこれらをより明確に認識するのを支援します。
要約は、セッションの終わりに特に有効であり、クライエントに次のステップや行動計画について考える機会を提供します。

また、セラピストとクライエントの間で共有された理解を確認し、クライエントが自己決定を尊重されていると感じさせることができます。

頭文字をとって”OARS”と呼ばれているね!
実際の臨床ではこのOARSの順番を行ったり戻ったりしますが、前の段階を終えられていないと次に進んでも上手くいかないってのは注意点でしょうね!

動機づけ面接のおすすめ本

ここでは動機づけ面接を学びたい方に向けて、おすすめの書籍をいくつかご紹介します。
これらの書籍は、初心者から経験者まで、それぞれのレベルに合わせて学習できるよう、様々な角度から動機づけ面接について解説しています。

今回は…

  • 「動機づけ面接を身につける〈改訂第2版〉上 一人でもできるエクササイズ集」
  • 「医療スタッフのための 動機づけ面接法 逆引きMI学習帳」
  • 「福祉現場で役立つ動機づけ面接入門」
  • 「動機づけ面接〈第3版〉上」
  • 「方法としての動機づけ面接―面接によって人と関わるすべての人のために」
  • 「リーダーのための動機づけ面接 実践編」

…についてご紹介します。

「動機づけ面接を身につける〈改訂第2版〉上 一人でもできるエクササイズ集」

動機づけ面接を身につける〈改訂第2版〉上 一人でもできるエクササイズ集』は、動機づけ面接の基礎知識から実践スキルまでをわかりやすく解説した一冊です。
この本には、一人でも実践できる演習問題が豊富に収録されており、実際に手を動かしながらスキルを身につけることができます。
具体的なケースやシナリオが掲載されているため、理論と実践のバランスが取れており、初心者でもスムーズに学習を進められます。
また、具体的なエクササイズを通じて、動機づけ面接のコツやポイントを実感できる点が特徴です。

基礎をしっかりと学びたい方におすすめの一冊です。

「医療スタッフのための 動機づけ面接法 逆引きMI学習帳」

医療スタッフのための 動機づけ面接法 逆引きMI学習帳』は、医療現場で動機づけ面接を活用したい医療従事者に特化した内容が特徴です。
逆引き形式で構成されており、必要な情報に素早くアクセスできるため、現場での即時対応や参考に便利です。
特に、具体的なケーススタディが豊富に含まれており、実際の医療現場での応用方法をイメージしやすくなっています。
また、医療従事者が患者との信頼関係を築きながら、効果的に行動変容を促す手法がわかりやすく説明されています。

医療現場での動機づけ面接の実践を目指す方に最適な本です。

「福祉現場で役立つ動機づけ面接入門」

福祉現場で役立つ動機づけ面接入門』は、福祉分野で働く方に向けて、動機づけ面接の基礎と応用が解説された一冊です。
具体的な事例を交えながら説明されているため、福祉現場でのクライアントとの関わり方やサポート方法が理解しやすくなっています。
また、福祉分野ならではの課題や、クライアントの支援に役立つ実践的なスキルも豊富に掲載されています。
動機づけ面接を通じて、クライアントの意欲を引き出し、より良い支援を提供する方法が学べます。

福祉の現場で役立つ内容を学びたい方におすすめです。

「動機づけ面接〈第3版〉上」

動機づけ面接〈第3版〉上』は、動機づけ面接の開発者によって書かれた、最も権威のあるテキストブックとされています。
動機づけ面接の理論的な背景から最新の研究成果まで網羅的に解説されており、深く学びたい中級者や上級者向けの内容です。
動機づけ面接の実践をさらに深めたい方に向けて、詳細なケーススタディや技法の分析が含まれています。
また、最新の心理学的な視点からのアプローチや、具体的な場面での適用例も豊富です。

動機づけ面接について体系的に学び、スキルを磨きたい方に最適な一冊です。

「方法としての動機づけ面接―面接によって人と関わるすべての人のために」

方法としての動機づけ面接―面接によって人と関わるすべての人のために』は、動機づけ面接の哲学や倫理的な側面に焦点を当てた一冊です。
動機づけ面接の理論的背景だけでなく、様々な分野での応用についても触れられており、専門家による寄稿も豊富に収録されています。
また、動機づけ面接を用いることで、どのようにクライアントと関わり、信頼関係を築いていくかを深く理解できます。
動機づけ面接の応用範囲を広げ、幅広い場面での利用を考えている方におすすめです。

カウンセリングの哲学的理解を深めたい方にも適しています。

「リーダーのための動機づけ面接 実践編」

リーダーのための動機づけ面接 実践編』は、組織でのリーダーシップと動機づけ面接の関係について実践的に解説しています。
動機づけ面接の技法を組織に取り入れることで、メンバーのやる気を引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させる方法が詳しく紹介されています。
リーダーとして、個々のメンバーの意欲や目標に寄り添うことができるため、チームの一体感やモチベーションを高める効果があります。
また、動機づけ面接をリーダーシップに活用することで、メンバーが自発的に行動する環境づくりにも役立ちます。

組織での動機づけを強化したいリーダーにおすすめの一冊です。

動機づけ面接のおすすめ書籍は、基礎から応用、医療や福祉、リーダーシップといった様々な分野に対応しており、目的に応じた選択が可能です。
これらの本を通じて、動機づけ面接の理論や実践的なスキルを学び、効果的な行動変容支援の方法を深く理解できます。

もしこの記事に修正点やご意見がございましたら、お手数ですがお問い合わせまでご連絡ください。 皆様の貴重なフィードバックをお待ちしております。
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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

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