作業療法で手工芸をリハビリ訓練として使用する場合、どのような理論に基づくのでしょうか?
本記事では手工芸の治療的使用に関連する理論について解説します。
手工芸の治療的使用に関連する理論について
作業療法における手工芸の治療的使用に関連する理論としては…
- 生体力学モデル
- 神経生理学的モデル
- 認知能力障害モデル
- 発達モデル
- 役割獲得モデル
- リハビリテーションモデル
- ライフスタイル実践モデル
- 作業行動モデル
- 人間作業モデル
…などがあげられます。
それぞれ以下に解説します。
生体力学モデル
このモデルでは、身体の障害が個々の行動に影響を与えると理解されています。
作業療法は、その障害に直接アプローチし、身体的な制限や機能障害を克服するための活動や作業を介して行動の改善を目指します。
例えば、手工芸を通じて筋力や可動域の向上を図り、日常生活での動作や活動をよりスムーズに行えるように支援します。
これにより、障害を抱える個人がより独立した生活を送るためのスキルを身につける手助けをします。
神経生理学的モデル
神経生理学的モデルでは、脳や感覚系の障害が異常行動を引き起こすと考えられています。
ここで作業療法は、適切な刺激や運動を通じて、感覚処理や運動機能の改善に焦点を当てます。
手工芸は、脳の再学習や神経経路の活性化を促す手段として利用されます。
たとえば、精密な手の動きを必要とする手工芸は、神経の再接続や神経機能の改善をサポートする一助となります。
認知能力障害モデル
認知能力障害モデルでは、手工芸が適切な認知能力を必要とする課題に役立つとされています。
作業療法は、個々の認知レベルに合わせた作業を通じて、日常生活での課題遂行能力を向上させます。
手工芸は、物体認識や注意力、問題解決能力などの認知機能を刺激し、向上させる助けを提供します。
発達モデル
発達モデルでは、手工芸が発達を促進する要素として理解されます。
作業療法は、個々の発達段階に合わせた作業や活動を通じて、発達の促進を支援します。
手工芸は、幅広い年齢層における発達を支え、身体的・認知的・社会的スキルの向上に貢献します。
これらの理論は、手工芸が作業療法の治療手段として選択される理由やその効果を説明するための枠組みを提供しています。
ただし、手工芸の治療的使用に関する研究はまだ限られており、より詳細な理論的な根拠が必要とされています。
役割獲得モデル
役割獲得モデルは、個人が社会的役割を果たすことの重要性を強調します。
病気や障害によって役割が制限されると、心理的・社会的な問題が生じるとされます。
作業療法は、新たな役割を学ぶ支援や、過去の役割パターンの変化を促すことで、個人の役割遂行能力を向上させます。
例えば、手工芸を通じて新しい技能や社会的な関わり方を学び、新たな役割を獲得する支援が行われます。
リハビリテーションモデル
リハビリテーションモデルは、個人が未使用の能力や資源を持っており、それらを利用することで身体、精神、社会的、職業的に改善できると考えます。
作業療法は、手工芸などの作業を通じて個々の能力を最大限に引き出し、身体的、精神的、社会的、職業的な能力を向上させるサポートを提供します。
ライフスタイル実践モデル
ライフスタイル実践モデルでは、個人が自己の身の回りのことを行い、他者に貢献し、良好な人間関係を維持するニーズを持つと考えられます。
作業療法は、文化や価値観に基づいた個人のニーズに対応し、手工芸やその他の作業を通じて実践的な課題遂行スキルを高め、文化的に受け入れられる方法を学ぶ支援を提供します。
作業行動モデル
作業行動モデルでは、バランスの取れた生活を送るためには、遊びを通して作業行動を学習し発達させることが重要視されます。
作業療法は、遊びや課題を通じて身体の動きや対象物の取り扱い、対人関係などの規則性を学び、バランスのとれた生活を設計する支援を提供します。
人間作業モデル
人間作業モデルは、人間を環境との相互作用する開放システムとして捉えます。
作業療法は、個々のサブシステム(意志、習慣化、遂行)を活性化し、全体的な働きが最大限に発揮されるよう支援します。
手工芸は、各サブシステムの活性化を促し、個人の意味ある作業や目的を理解し、取り戻すための手段として活用されます。