作業療法のアクティビティでよく使用されるもののひとつに“紙細工”があります。
身近な紙を使うことで導入しやすいことも多用される理由としてあげられますが、改めてこの紙細工を考えると非常に治療的効果を含む活動と言えます。
そこで今回は『紙細工と作業療法』について簡潔に解説します。
紙細工とは?
紙細工とは、一般的に
紙を折ったり、切ったり、貼ったりして、いろいろなものを作ること。または作ったもの
…と言います。
紙細工の用材について
紙細工で使用される紙は主に、
- 和紙
- 洋紙
…の2種類にわけられます。
その中でも特に次のようなものが多用されます。
和紙
- 美濃紙(みのがみ)
- 内山紙
- 杉原紙
- 板目紙
- 千代紙
洋紙
- 模造紙
- 画用紙
- 羅紗紙
- ボール紙
紙細工の技法
紙細工でも様々な技法があります。
- 折り紙
- 切り紙
- 組紙
- 紙張子
- 紙モザイク
- 紙ビーズ
- 紙染色
- 紙綴
- 紙紐結び
- 紙造花
- 紙人形
- >紙飛行機
- 紙構築
- 紙彫塑
紙細工の特性について
様々な種類の紙細工ですが、作業療法における特性としてはどのようなものがあげられるでしょうか?
一般的な紙細工の特性としては次のようにまとめられます。
- 手指の巧緻性や協調動作などの運動機能や触覚などの感覚機能への働きかけ
- 紙の柔軟な性質を活かし、平面から立体へと作品を構成することでの活動の幅の拡大
- 紙の吸液性のある性質を活かした、対象者への作業工程の適応
- 定規や筆、カッターなどの簡単な道具を用いることでの的確さと多様性を図る
- 染色や紙を丸めるなどの加工をすることにより、新しい作品つくりの材料とすることでの作業範囲の拡大
- 軽量で柔軟性があるため、材料としての保存や収納といった管理が比較的容易
- 紙の素材そのものに対する精神的な安心感
- 国内の生活文化に根差した材料であることから、親和性をもたらす
紙細工を構成する動作について
紙細工を構成する動作の要素ですが、大きく分けると次のようにわけられます。
- 描く・写し取る
- ちぎる
- 切る
- 折る
- まげる
- 丸める
- 接着する
- 仕上げる
以下にそれぞれ解説します。
描く・写し取る
どんな作品を制作するか考え、制作に取り掛かる前の設計図を描くこと、材料へ印や模様をつけるといった動作が必要になります。
ちぎる
材料の紙を小さくするために必要な“ちぎる”という動作ですが、基本的に両手による協調的な動作が求められます。
切る
材料を切ることは、単に小さくするという目的だけでなく、材料を直線的な仕上がりにするためでもあります。
加えて、材料の硬さや厚みなどによって“ちぎる”ことが困難な場合の代替手段としても選択される動作といえます。
その際は主にカッターナイフやハサミといった道具を使用して行うことが前提になります。
折る
材料の紙を折ることは、材料自体に“厚みをもたす”、“立体に形作る”といった目的のためだと考えられます。
設計図を基にその指示通り正確に折ること、または完成図をイメージして必要な折り方を選択し行動化する能力が必要になります。
まげる
紙細工において“まげる”という動作は、筒状や棒状にした紙に対して行う動作が主と考えられます。
丸める
材料の紙をまるめることで球状の材料に加工することができます。
それぞれの材料を適切な大きさ、形に丸めるには丸める前の紙の大きさの把握や丸める際の力の加減などの調整能力が必要になります。
接着する
紙の材料通しをボンドや糊などで接着する動作は、物品操作はもちろん、接着部分の把握、接着と乾燥時間の検討、失敗した際の臨機応変な対処能力などが関連します。
仕上げる
組み立てた紙細工に対してニスやラッカーを塗布することで、より頑丈にする工程になります。
仕上げ剤としては扱うのに注意が必要な物品が多いため、危険認識能力なども関与してくるかと思います。
紙細工の治療的効果
作業療法において、紙細工を行うことで期待できる治療的効果とはどのようなものがあげられるでしょうか?
主なものとしては次のような効果が期待できるとされています。
- 肩関節の安定性の促通
- 前腕の回内外運動
- 肘関節、手関節の可動性への働きかけ
- 手指の巧緻能力の向上
- 物品の操作性の向上
- 目と手の協調の向上
- 座位耐久性の向上
- 集中力の向上
- 触覚(特に手指)への働きかけ
- コントラストのもたらす視覚機能への働きかけ
- 計画性の保持
- 臨機応変な対応能力の向上
- 対人能力の向上
- 自尊心の回復
- 達成感の経験
- 余暇活動の創出
- 社会参加機会の創出
まとめ
今回は簡潔にですが、紙細工と作業療法について解説しました。
比較的安価で手に入りやすく、かつ加工しやすい紙細工は、非常に作業療法のアクティビティとしては優秀なものといえます。
紙細工がもつ治療効果に再度着目し、そのメリットを十分に知ることで、クライアントに提供する作業療法のバリエーションが広がっていくのかもしれません!