織物と作業療法【特性とリハビリとして期待できる効果】

作業療法の養成校でのカリキュラムのひとつに“織物”があるのですが、実際に作業療法の臨床や現場で行うことって少ないのかもしれません。
たしかに古典的なアクティビティのひとつかもしれませんが、改めて織物を捉えなおしてみると非常に治療的な作業活動としては有能なことがわかります。

今回はこの織物を作業療法で行う目的と治療的効果について解説します。

織物とは?

織物とは、糸を縦横に組み合わせて作った布地…を指し、その歴史は非常に古く、新石器時代に入るころから行われていたとされています。
織物は世界各地で衣料や道具、装飾品やインテリアといった様々な用途に用いられてきていることから非常に日常生活に密接なものであることがわかります。

現代社会では織機の機械化もあり手織りの需要は激減し、伝統工芸や民芸、または趣味活動として用いられる程度かもしれません。
でも、高齢者の中には生活の生業として織物を行っていたという方も多数ではないにしろいらっしゃるかと思いますよ。

織物を作業療法で行うには?

織物でも、特に手織りを作業療法の臨床や現場で行う場合の場所や道具などについて解説します。

場所について

織物は細い糸を扱うこと、緻密な作業であることから照明が明るい場所で行うことが望ましいとされています。
また、織る糸の素材によっては毛糸のような埃が付着しやすい糸を使用する場合もあるため、できる限り埃がたまらない喚起がよい場所で行うとよいともされています。

材料

主な手織りの材料については以下のとおりになります。

  • 経糸、緯糸用の糸
  • 綾用の糸
  • 太い毛糸

何を織るかによって糸の種類や素材、色を変えたりすることもできるため、織り始める前からどんな材料が必要かクライアントと相談することも非常に作業療法的な介入とも言えます。
作業療法の臨床や現場では、比較的手に入りやすい中細毛糸を使用することが多いようなので参考にするとよいかもしれません。

道具

手織りに必要な道具としては主に次のようなものがあげられます。

  • 織り機
  • 整径台
  • 筬(おさ)
  • 綜絖通し(そうこうとおし)
  • 綾竹
  • 厚紙
  • 杼(ひ)
  • 鋏(はさみ)
  • 毛糸針

織物活動の特性について

織物という作業活動は、端的に言えば経糸と緯糸を直角に交差させることを繰り返して布を織るというものになります。

工程について

織物活動の工程についてですが、大きく以下の3工程に分けることができます。

  1. 準備活動(デザイン・整経・機上げ)
  2. 織り動作
  3. 織布を使用した作品制作

1.準備活動

織物活動における準備活動の工程は、どのようなデザインにするかを考え、そして織るために必要な経糸の本数や長さ、張力などを整えて榺(ちきり)に巻く“整経”の工程、筬通しや綜絖通しを行う“機上げ”などが含まれます。
いわば、織り始め前の準備段階全般を指します。

2.織り動作

実際に織り機で織り始める工程になります。

3.織布を使用した作品制作

自分で織った布を用いて様々なモノを作るという工程も、手作りならではの個性的な作品を生み出す楽しみに富んでいます。

織物の治療的効果について

手織り作業活動によって期待できる治療的効果については以下のとおりになります。

基本的能力

運動
協調性・巧緻性の改善・筋力強化・筋再教育・関節可動域の拡大・姿勢、運動パターンの改善・全身耐久性改善

感覚・知覚
感覚、知覚再教育・感覚、運等の統合向上・代償促進

認知・心理的
認知心理的諸機能の改善・代償促進

応用的能力

上肢機能
上肢機能の改善

知的・精神的能力
知的・精神機能の改善、維持、低下の防止・代償方法の指導、援助

代償手段の適応
車椅子、各種装具適法準備、自助具の適用

社会的適応能力

社会的生活適応
社会的関係機能の改善、維持、低下防止

職業的適応
職業準備状態の強化、維持

余暇活動
余暇活動への動機づけ、指導や援助

まとめ

今回はこの織物を作業療法で行う目的と治療的効果について解説しました。

“手織り”という現代ではあまり馴染みがない作業活動かもしれませんし、古典的な作業活動かもしれませんが、改めて見直してみると非常に治療的要素を含んでいる作業活動と言えます。
改めて作業療法のリハビリテーション場面に取り入れて見る事も検討するとよいかもしれませんね!

タイトルとURLをコピーしました