作業療法士にとってADLの評価は、より効果的、効率的な治療的介入を行うためにも非常に重要な項目と言えます。
より効果の高い治療介入を行うためにはADL能力の評価をしっかりと行う必要があります。
そこで今回はこのADL能力の評価の目的と判定基準、そしていくつかの検査方法について解説します。
ADLとは?
ADL(Activiy of Daily Living)は日本語では「日常生活活動」と呼ばれており、その定義について日本リハビリテーション医学会によると…
1人の人間が独立して生活するために行う基本的なしかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の動作群
…とされています。
つまりここでのADLの範囲は“家庭内における身の回りの動作(セルフケア)”を意味することになります。
主なものとしては…
- 食事
- 整容
- 更衣
- 排泄
- 入浴
…が項目としてあげられます。
また、この各セルフケア動作をより“実践的”なものにするための…
- 起居
- 移動
…といった動作も必要になります。
ADL能力の評価の目的について
対象とするクライアントのADL能力を評価する目的については、以下の項目があげられます。
- ADL能力を評価することで、クライアントの現在の能力を正しく把握するため
- OTの支援計画や今後の方針を決定する手がかりにするため
- ADL評価を行うことで、クライアント自身が正しい自己認識を得て、修正を行うきっかけにするため
- 治療介入の効果判定を行うため
- 関連施設や医療機関、家族との情報交換を行うため
ADL能力の6つの判定基準について
ADL能力の判定基準については以下の要素で構成されています。
- 動作遂行度
- 遂行速度(所要時間)
- 完成度
- 指示理解度
- 代償手段の有無
- 環境整備の有無
これらの6つの判定基準の視点から、クライアントのADL能力の程度を判定します。
ADL能力の評価方法について
ADL能力を評価する検査方法についてですがいくつかの検査方法があります。
今回は…
- Barthal Index
- FIM
- ADL-T
- ESCROW Profile
- Klein-BellのADLスケール
…について簡潔に解説します。
Barthal Index
神経筋疾患や骨関節疾患のクライアントの身辺処理能力の程度を得点に数値化して簡潔に表す検査。
10の検査項目を、自立・部分介助・全介助の3段階で判定し得点化するのが特徴です(自立の場合100点)。
簡単、短時間で検査が行えることからも広く使われている検査方法と言えます。
FIM
FIM(functional indepedence measure)は、クライアントが実際に行っている生活動作の状況を評価する検査方法です!
評価項目はセルフケア関連が6項目、排泄管理関連が2項目、移乗関連が3項目、移動関連が2項目、コミュニケーション関連が2項目、社会的認知関連が3項目の合計18項目で成り立っています。
判定基準は自立~全介助の7段階で構成されます。
リハビリテーション医学や医療において国際基準が選定されていることからも、広く普及している検査方法と言えます。
ADL-T
ADL-Tは労働省・脳脊髄損傷者の総合機能研究においてのADL評価法に関しての研究で作成された検査方法です!
検査対象項目としては、食事、整容、更衣、排泄、入浴の5つで、それぞれにその下位項目を設定して動作遂行能力を評価していきます!
ADL能力を動作動作の遂行度から検査することで、どの動作が可能で、どの動作が困難なのか、またどのように行っているのかを具体的に把握することができるのが特徴です!
ESCROW Profile
“ESCROW Profile”では、在宅生活を行う上での社会的不利となる事項に関しての評価を行い、その問題となる要素を把握する検査方法です。
検査対象項目は環境(E)、社会交流(S)、家族構成(C)、経済状況(R)、総合判断(O)、就労(W)であり、各項目の得点をもとにレーダーグラムによる能力や問題表示ができ、どのような経過を辿っているのかや効果判定がしやすいのも特徴といえます。
Klein-BellのADLスケール
作業療法士や看護師といったクライアントに対して支援する側の指導の具体的内容を決める目的で行う評価法になります。
ある動作を分解し、順序にしたがって複数のステップに細分化されているのが特徴です。
その個々のステップが自力で達成されるかどうかを評定します。
全体として、更衣、移動、排泄、入浴・衛生、食事、緊急時の電話発信の6領域にわたっていて、検査項目数は170あります。
まとめ
今回はADLとその評価方法について解説しました。
「生活を支援する」のが目的でもある作業療法士にとって、クライアントの日常生活での能力を正確に把握することは非常に必要なことです。
ただ、その評価も主観が入りやすく本当に正確な数値化にしにくい…というのも事実といえます。
そのためには上記のような基準を頭に入れることで、より正確なADL検査を行うことができるのだと思います。