FIM移乗(浴槽、シャワー)は、患者が浴槽やシャワーへの出入りをどの程度自立して行えるかを評価する指標です。
本記事ではFIM移乗(浴槽、シャワー)評価のポイント、項目、具体例などについて解説します。
FIMにおける移乗(浴槽、シャワー)の評価について
FIM(Functional Independence Measure)における移乗(浴槽、シャワー)の評価は、患者が浴槽やシャワーへの移乗をどの程度自立して行えるかを測定するための重要な指標です。
この評価は、浴槽またはシャワー室への出入りや、浴槽のそばから浴槽をまたいで入る、浴槽の中へ沈み込む、立ち上がる、浴槽から出るまでの一連の動作を評価します。
シャワー浴のみの場合は、シャワーチェアへの移乗が評価対象となり、採点は完全自立(7点)から全介助(1点)までの7段階で行われ、患者の自立度や必要な介助の程度に応じて点数が付けられます。
FIM移乗(浴槽、シャワー)の評価対象の項目
FIM移乗(浴槽、シャワー)の評価対象の項目として…
- 浴槽またはシャワー室への出入り
- 浴槽のそばにいる状態からの動作
- シャワー浴のみの場合のシャワーチェアへの移乗
…があげられます。
それぞれ解説します。
浴槽またはシャワー室への出入り
FIM移乗(浴槽、シャワー)の評価では、患者が自力で浴槽やシャワー室に入ることができるかどうかを確認するための重要な指標です。
この評価項目は、入浴前に浴槽またはシャワー室へのアクセスが安全に行えるかどうかを測定します。
具体的には、患者が歩行補助具を使用している場合、それを用いて安全に入室できるか、または手すりなどの補助具を使用して安全に入れるかを評価します。
自力で入室できない場合、どの程度の介助が必要か、または特別な装具が必要かどうかも評価の対象となります。
この評価により、入浴前の準備や必要な介助のレベルを把握し、患者の安全を確保するための対策が立てられます。
浴槽のそばにいる状態からの動作
この項目は、患者が浴槽のそばにいる状態から一連の動作を自力で行えるかどうかを評価します。
まず、①浴槽をまたいで入る動作は、患者が片足ずつ持ち上げて浴槽に入る能力を測ります。
次に、②浴槽の中へ沈み込む動作は、浴槽内での姿勢を安全に変え、座る動作を評価します。
さらに、③立ち上がる動作は、入浴後に自力で立ち上がることができるかどうかを確認します。
最後に、④浴槽から出る動作は、浴槽から安全に出て脱衣所などに移動する能力を測定します。
これらの動作を総合的に評価することで、入浴に関連する一連の動作の自立度を詳細に把握できます。
シャワー浴のみの場合のシャワーチェアへの移乗
シャワー浴のみの場合、患者が自力でシャワーチェアに移乗できるかどうかを評価する項目です。
この評価は、シャワーチェアの使用が必要な患者が、安全に椅子に座ることができるか、または座った状態から立ち上がれるかを確認します。
具体的には、シャワーチェアの位置調整や高さ調整が適切であるか、患者がそれに安全に移乗できるかどうかを評価します。
また、移乗時にどの程度の補助が必要か、例えば手すりを使用するか、介助者がサポートするかなども重要な評価ポイントです。
シャワー浴の場合、この評価によって患者の自立度を測定し、適切な補助具の選定や介助方法の計画を立てることができます。
FIM移乗(浴槽、シャワー)の採点基準
FIM移乗(浴槽、シャワー)の採点基準は次のとおりになります。
7点(完全自立)
患者が補助具や介助なしで、自力で安全かつ迅速に動作を行える場合に7点が与えられます。
具体例: 患者が自力で浴槽に入る、沈み込む、立ち上がる、浴槽から出る一連の動作を一人で全く問題なく行える場合。
6点(修正自立)
患者が補助具(手すり、バスボードなど)を使用するか、時間がかかる場合、または安全性のための配慮が必要な場合に6点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に手すりを使用して安定させながら動作を行うが、自力で全ての動作を完了する場合。
5点(監視または準備)
患者が監視(待機、指示または促し)または準備(バスグボードを置く、フットレストを動かすなど)が必要な場合に5点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に介助者がそばにいて安全を監視し、必要に応じて声をかけるが、実際の動作は患者が自力で行う場合。
4点(最小介助)
患者が75%以上の動作を自分で行うが、手で触れる程度の軽い介助が必要な場合に4点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に介助者が軽く腕を支えてバランスを取るが、ほとんどの動作は患者が自力で行う場合。
3点(中等度介助)
患者が50%~74%の動作を自分で行うが、より重度の介助が必要な場合に3点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に介助者が腰を支えたり持ち上げたりすることで動作を助ける場合。
2点(最大介助)
患者が25%~49%の動作を自分で行うが、大部分の動作を介助者が行う場合に2点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に介助者がほとんどの持ち上げや移動を行い、患者は少しの動作を自力で行う場合。
1点(全介助)
患者が25%未満しか自分で行えない場合、もしくは全ての動作を介助者が行う場合に1点が与えられます。
具体例: 患者が浴槽に入る際に介助者が全ての持ち上げ、移動、座る、立ち上がる動作を行い、患者自身はほとんど動かない場合。
FIM移乗(浴槽、シャワー)評価の注意点
FIM移乗(浴槽、シャワー)評価の注意点としては…
- 補助具の使用
- 評価の範囲
- 介助の割合
…があげられます。
それぞれ解説します。
補助具の使用
FIM移乗(浴槽、シャワー)の評価において、補助具の使用は採点に大きく影響します。
例えば、手すりやスライディングボード、リフトなどの補助具が必要な場合、その使用方法によって評価が異なります。
具体的には、簡易手すり(バスグリップ)を介助者が取り付ける場合は「準備」と見なされ、5点(監視または準備)以下の評価となります。
一方、患者自身がこれらの補助具を設置して使用し、自立して動作を行える場合は6点(修正自立)となります。
したがって、補助具の使用が必要かどうか、またその使用方法を詳細に確認し、適切に評価することが重要です。
評価の範囲
FIM移乗(浴槽、シャワー)の評価では、評価する動作の範囲を正確に理解することが不可欠です。
評価対象となる動作には、浴槽またはシャワー室への出入り、浴槽のそばから浴槽をまたいで入る、浴槽の中へ沈み込む、立ち上がる、浴槽から出るまでの一連の動作が含まれます。
これらの動作を正確に評価することで、患者の自立度や介助の必要性を正確に把握できます。
さらに、シャワー浴のみの場合は、シャワーチェアへの移乗が評価対象となり、この際も同様に動作の一連の流れを評価することが求められます。
評価範囲を明確にすることで、正確な採点と適切なリハビリ計画の立案が可能となります。
介助の割合
FIMの採点基準は、介助の割合に基づいています。患者がどの程度の動作を自分で行い、どの程度の介助が必要かを正確に評価することが重要です。
具体的には、患者が75%以上の動作を自分で行える場合は最小介助(4点)、50%~74%未満の場合は中等度介助(3点)、25%~49%の場合は最大介助(2点)、25%未満しか行えない場合は全介助(1点)となります。
このため、介助の割合を詳細に観察し、患者の自立度を正確に測定することが求められます。
この評価により、患者の現在の状態を正確に把握し、適切なリハビリテーションプランを策定することが可能です。