FIM(Functional Independence Measure、機能的自立度評価法)の清拭項目は、首から下の身体を洗い、すすぎ、乾かす動作を評価し、患者の自立度を7段階で測定する重要なリハビリテーション評価のひとつです。
本記事では、FIM(清拭)の評価のポイントや項目、具体例などについて解説します。
FIMにおける清拭の評価について
FIM(Functional Independence Measure、機能的自立度評価法)の清拭の評価項目は、首から下の体を洗い、拭くという一連の動作を対象とし、その動作の介助量に基づいて採点されます。
具体的には、清拭の動作が完全に自立して行える場合は7点、装具や自助具が必要だが自立して行える場合は6点、監視や指示が必要な場合は5点、最小介助(75%以上自分で行う)が必要な場合は4点、中等度介助(50%〜75%未満自分で行う)が必要な場合は3点、最大介助(25%〜50%未満自分で行う)が必要な場合は2点、全介助(25%未満自分で行う)の場合は1点と評価されます。
この評価は、清拭における具体的な介助量を把握し、患者の日常生活動作の自立度を客観的に評価するために重要な方法といえます。
FIM(清拭)の評価対象の項目
FIM(清拭)の評価対象の項目ですが…
- 胸部
- 腹部
- 右上肢
- 左上肢
- 右大腿
- 左大腿
- 右下腿
- 左下腿
- 陰部
- 臀部
…の10箇所に分けて考えます。
これらの各部位を洗う、すすぐ、乾かす(拭く)という一連の動作を対象とします。
それぞれ解説します。
胸部
まず、胸部は上半身の前面を指し、洗浄やすすぎ、乾かしの動作が含まれます。
ここで重要なのは、患者がどの程度自分で手を動かして胸部全体を洗えるか、またすすぎや乾かしの動作をどれだけ自立して行えるかという点です。
介助の量が多いほど評価点は低くなり、完全に自立して行える場合は最高点が与えられます。
右上肢・左上肢
右上肢と左上肢は、肩から手先までの洗浄、すすぎ、乾かしの動作が含まれます。
これらの動作は、日常生活において重要な自己管理能力を反映します。
患者がどの程度自立してこれらの動作を行えるか、またどの程度の介助が必要かを評価します。
右上肢と左上肢をそれぞれ個別に評価することで、特定の部位における自立度を詳細に把握することが可能です。
腹部
腹部の評価は、腹部全体の洗浄、すすぎ、乾かしの動作を対象とします。
腹部は広い範囲をカバーするため、患者がこの部位をどの程度自立してケアできるかを評価することは、全体の自立度を測る上で非常に重要です。
特に、腹部の動作は他の部位と比べて動きの自由度が高いため、患者の体幹の柔軟性や筋力を評価する指標ともなります。
右大腿部・左大腿部・右下腿部・左下腿部
右大腿部、左大腿部、右下腿部、左下腿部の評価は、それぞれの脚の洗浄、すすぎ、乾かしの動作を対象とします。
大腿部と下腿部を個別に評価することで、患者の下肢全体の自立度を詳細に把握できます。
これらの部位の評価は、歩行能力や移動能力に直接関連するため、リハビリテーションの計画や進捗を評価する上で重要です。
陰部・殿部
陰部と殿部の評価は、最もプライベートな部分の洗浄、すすぎ、乾かしの動作を対象とします。
これらの部位は、患者のプライバシーと衛生状態を保つために非常に重要です。
特に、陰部の評価は尿失禁や便失禁の管理にも関わるため、細心の注意が必要です。
殿部の評価も同様に、患者がどの程度自立してこれらの動作を行えるかを評価することで、全体の介助の必要度を把握することができます。
FIM(清拭)の採点基準
FIM(清拭)の採点基準について以下にそれぞれ解説します。
7点 (完全自立)
補助具または介助なしで「自立」して行える。
例:全ての評価対象部位(胸部、右上肢、左上肢、腹部、右大腿部、左大腿部、右下腿部、左下腿部、陰部、殿部)を自分で洗い、すすぎ、乾かすことができる。
6点 (修正自立)
時間が掛かる。装具や自助具、服薬が必要。安全性の配慮が必要。
例:自助具を使用して全ての評価対象部位を洗い、すすぎ、乾かすことができるが、時間がかかる。
5点 (監視・準備)
監視、準備、指示、促しが必要。
例:介護者が準備や指示を行うことで全ての評価対象部位を洗い、すすぎ、乾かすことができる。
4点 (最小介助)
手で触れる以上の介助は必要ない。「75%以上」は自分で行う。
例:介護者が手で触れる程度の介助で全ての評価対象部位を洗い、すすぎ、乾かすことができる。
3点 (中等度介助)
手で触れる以上の介助が必要。「50%〜75%未満」は自分で行う。
例:介護者が手で触れる以上の介助で全ての評価対象部位を洗い、すすぎ、乾かすことができる。
2点 (最大介助)
「25%〜50%未満」は自分で行う。
例:介護者の大きな介助があって初めて全ての評価対象部位を洗い、すすぎ、乾かすことができる。
1点 (全介助)
「25%未満」しか自分で行わない。
例:ほとんど全ての動作を介護者が行い、自分で行うことがほとんどない。
FIM(清拭)評価の注意点
では、FIM(清拭)評価を行う際の注意点とはなにがあげられるでしょうか?
ここでは…
- 個々の評価対象部位はすべて評価する
- 頭と背中(背部)は採点範囲に含まれない
- 浴槽、シャワー、ベッド上清拭のいずれでもよい(している方法で評価)
- 洗う、すすぐ、乾かす(拭く)では、洗う工程に対しての採点比重が重い
- 足先を洗っていなくても、介助をしていないのであれば減点はされない
…について解説します。
個々の評価対象部位はすべて評価する
まず、個々の評価対象部位はすべて評価するという点です。
これは、評価対象となる部位(胸部、右上肢、左上肢、腹部、右大腿部、左大腿部、右下腿部、左下腿部、陰部、殿部)をすべて個別に評価する必要があることを意味します。
各部位の動作を評価することで、患者がどの程度自立して清拭の動作を行えるかを詳細に把握することができます。
これにより、全体的な自立度の評価が正確に行われ、リハビリテーションの計画や介助の必要度が適切に判断されます。
頭と背中(背部)は採点範囲に含まれない
次に、頭と背中(背部)は採点範囲に含まれないという点です。
FIMの清拭評価では、首から下の部位が対象となります。
頭部や背中は評価の対象外となるため、これらの部位の清拭動作は評価に含めません。
これにより、評価範囲が明確になり、評価者間の一貫性が保たれます。
浴槽、シャワー、ベッド上清拭のいずれでもよい(している方法で評価)
さらに、浴槽、シャワー、ベッド上清拭のいずれでもよいという点です。
評価は、患者が実際に行っている方法に基づいて行われます。
つまり、患者が浴槽で入浴している場合、シャワーを使用している場合、またはベッド上で清拭を行っている場合、その方法に基づいて評価します。
これにより、患者の日常生活環境に即した評価が行われ、実際の自立度を反映した結果が得られます。
洗う、すすぐ、乾かす(拭く)では、洗う工程に対しての採点比重が重い
また、洗う、すすぐ、乾かす(拭く)では、洗う工程に対しての採点比重が重いという点です。
FIMの清拭評価では、洗う動作が最も重要視されます。
洗う動作が患者の自立度を最もよく反映するため、評価の際にはこの動作に対して重点的に採点が行われます。
すすぐ動作や乾かす動作も評価の一部ですが、洗う動作が主な評価対象となります。
足先を洗っていなくても、介助をしていないのであれば減点はされない
最後に、足先を洗っていなくても、介助をしていないのであれば減点はされないという点です。
患者が自分で清拭の動作を行っている場合、足先を洗っていないこと自体は評価の減点対象にはなりません。
重要なのは、患者がどの程度自立して動作を行っているかであり、介助の有無が評価に大きく影響します。
これにより、患者の実際の自立度が適切に評価されます。