FIM(機能的自立度評価表)【目的・特徴・評価方法・採点基準・具体例について】

検査

ADLの評価方法でも、国際的に使用基準が選定されていることから広く使われているのがFIM(機能的自立度評価表)です。

今回はこのFIMの目的や特徴や評価方法といった総論と、各項目別の点数の付け方、採点基準、ポイントや具体例について解説します。


FIMとは?

FIM(機能的自立度評価表)は、その対象を限定せず様々な疾患に対して使用することができるスケールです。
FIMはリハビリテーション全体の経過記録の統一を意図したシステム(united date system:UDS)の一部になっていて、FIMでは対象者が実際に行っている生活動作の状況(しているADL)の状況を評価します。

ちなみにFIMの正式名称は“Functional Independence Measure”になります。
日本語では“機能的自立度評価法”と表記されます。

FIM開発の歴史

1983年、当時既存のADL評価法にアメリカのリハビリテーション医は不満を持っていたようです。
そこで、バッファロー州立大学を中心に…

  • ACRM(American Congress of Rehabilitation Medicine)
  • AAPM&R(American Academy of Physical Medicine and Rehabilitation)

…が後援して、Task Force(特別検討委員会)が設立されました。
結果、クライアントの能力低下の重症度および医学的リハビリテーションの治療効果を判定することができる評価方法を開発した…という経緯があります。

FIMは国際的な評価ツール?

FIMはすでに数か国語に翻訳され、欧米、豪州などで広く使用されています。
日本では、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室が発行しています。

FIMのエビデンスグレード

FIMは脳卒中治療ガイドラインのリハ評価尺度グレードBにあげられます。

目的について

FIMによってクライアントを評価する目的ですが…

  • 対象者のADL能力の状態を定量的に判断することができる
  • 定期的にFIMで評価することで、ADL能力の状態を比較検討することができる
  • 対象者と関わる他職種間、他の医療、介護関連施設間での情報共有のための共通言語として利用することができる

…になります。

FIMで評価をするメリットについて

では、実際の医療や介護現場でFIMによる評価を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主に次のようなメリットが考えられます。

  • 対象者のADLの自立度と介護量を定量的に表し、把握することができる
  • 他職種間での共通言語として扱うことで情報共有がしやすくなる
  • 対象者のADL能力について、評価の見落としが少なくなる
  • 対象者本人、家族や介護者に、ADLの能力について具体的に分かりやすく説明することができる
  • FIMで評価することで、現段階での生活課題を明確にし、リハビリテーションや看護、介護計画の指標とすることができる
  • 定期的にFIMで評価することで、ADLの能力の変化について比較検討することができ、効果判定の指標として扱うことができる
  • 定量化することで、研究や論文執筆、学会発表のデータとして扱いやすくなる

FIMの評価対象について

FIMの評価対象は7歳以上になっています(被験者が6か月~7歳の場合はweeFIMによる評価が推奨されています。)

また疾患や障害による区別はなく、あらゆる病態に対応しています。

FIMは1人の評価者で行わないといけないの?

FIMによる評価は各スタッフが得意な項目ごとに分担して行っても問題はないとされています。

FIM採点のポイント

FIMの採点のポイントとしては、食事や更衣といった各評価項目において、何を評価するのかという“定義”を明確にし、正しく理解することが必要です。
また、その定義とともに、7段階評価スケールの採点基準を理解することも必要(7,6点と5点と1点の採点基準の違いを押さえておくことがコツ)です。

注意点

FIMによって採点する場合、次の3つの注意点に気を付ける必要があります。

  • 対象者の「しているADL」を採点する
  • 一日内でそのADL能力に変動がある場合は、最低点を採用する
  • いくつかの項目は平均点で評価する

以下にそれぞれ解説します。

対象者の「しているADL」を採点

BIは対象者の「できるADL」を採点するのに対して、FIMでは実際に「しているADL」を採点します。
つまり、院内のOTであったらOT室で模擬的に行われる動作や活動ではなく、実際に病棟生活で行われているADLを採点対象とすることになります。

一日内でそのADL能力に変動がある場合は、最低点を採用

採点対象であるクライアントの年齢や疾患の特徴、使用している内服薬の副作用などによってはそのADL能力に変動が起こる場合があります。
その場合、どちらの「しているADL」を採点対象にするかというと、基本的には低い方の点数をつけることになります。

いくつかの項目は平均点を記載

採点するときの注意点として「低い方の点数をつける」以外には、「平均点をつける」という項目もあります。

  • 整容
  • 清拭
  • 更衣(上衣)
  • 更衣(下衣)
  • トイレ動作
  • 記憶

これらの項目に関しては「平均点」をつけることになります。

FIMの評価項目について

FIMの評価項目ですが、大きく分けると「運動」と「認知」の2つに分けることができます。

さらに運動項目は、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動の4種類。
認知項目は、コミュニケーション能力と社会的認知の2種類に分けることができます。

それぞれさらに細分化されるので、以下にまとめてみますね。

運動(13項目)

セルフケア(6項目)

  • 食事
  • 整容
  • 清拭
  • 更衣(上半身)
  • 更衣(下半身)
  • トイレ動作

排泄コントロール(2項目)

  • 排尿管理
  • 排便管理

移乗(3項目)

  • ベッド・椅子・車椅子移乗
  • トイレ移乗
  • 浴槽・シャワー移乗

移動(2項目)

  • 歩行・車椅子
  • 階段

認知(5項目)

コミュニケーション(2項目)

  • 理解
  • 表出

社会的認知(3項目)

  • 社会的交流
  • 問題解決
  • 記憶

FIMの採点のポイントと基準について

FIMの各項目を採点する際のポイントですが…

  • 各評価項目の評価対象の定義を理解する
  • その項目を遂行するのに介助者が必要かどうかを評価する
  • 介助が必要な場合は、どの程度必要なのかを評価する

…を基本にしFIMによる評価を進めていきます。
また、採点基準については以下のとおりになります。

運動項目の採点基準

7点(完全自立)
全ての課題を通常通りに、適切な時間内に、完全に遂行できる。

6点(修正自立)
課題を遂行するのに補助用具の使用、通常以上の時間、安全性の考慮のどれかが必要である。

5点(監視・準備)
介助者による指示や準備が必要である。
体には触らない。

4点(最小介助)
手で触れる程度の介助が必要であるが、課題の“75%以上”を自分で遂行できる。

3点(中等度介助)
手で触れる以上の介助が必要であるが、課題の“50%以上”を自分で遂行できる。

2点(最大介助)
課題の“25%以上50%未満”は自分で行う。

1点(全介助)
課題の“25%未満”しか自分で行わない。

認知項目の採点基準

7点(完全自立)
複雑な課題を“自立”して一人で行うことができる。

6点(修正自立)
通常以上の時間がかかる。投薬している。安全性の配慮が必要な場合。

5点(監視・補助)
監視、準備、指示、促しが必要。簡単な事項に介助が“10%未満”必要。

4点(最小介助)
“75%以上90%未満”は自分で行う。

3点(中等度介助)
“50%〜75%未満”は自分で行う。

2点(最大介助)
“25%〜50%未満”は自分で行う

1点(全介助)
“25%未満”しか自分で行わない。

まとめ

今回はFIMの総論として解説しました。
FIMは回復期のリハビリテーション病院ではアウトカムとしても使用しています。
そのためリハビリセラピストによる介入結果が数値としてはっきりと表されることにもなります。

そのことを意識して、しっかりと目の前のクライアントへのリハビリテーションを行っていく必要がありますね。

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