FIM(Functional Independence Measure)の「記憶」評価は、日常生活に必要な情報をどの程度記憶し再生できるかを測定し、対象者の自立度を評価するための重要な指標です。
本記事ではFIM(記憶)評価のポイント、項目、具体例などについて解説します。
FIMにおける記憶の評価について
FIM(Functional Independence Measure)の「記憶」は、日常生活において必要な情報をどの程度記憶し、再生できるかを評価する重要な項目です。
具体的には、頻繁に出会う人を認識し、毎日の日課を覚え、他人からの依頼を覚えられるかどうかを評価します。
評価は、完全自立から全介助までの7段階で行われ、3つの課題を自分一人で記憶・再生できる場合は7点、担当スタッフの顔を認識し、日課を覚えるが依頼内容を覚えていない場合は3点、担当リハビリスタッフ以外の関係者や日課を覚えられない場合は1点とされます。
この評価は、患者の自立度や支援の必要性を判断するために非常に有用です。
FIM(記憶)の評価対象の項目
FIMで記憶を評価す対象は、日常的活動で情報を記憶し再生することができるかどうか?…になります。
具体的には次の3つの内容を覚えていられるかどうかで判断します。
- 日常でかかわりの深い人
- 毎日の日課
- 他人からの依頼
以下に詳しく解説します。
日常でかかわりの深い人
FIMの記憶評価では、対象者が日常生活において頻繁に関わる人物をどれだけ認識できるかが重要です。
これは家族や介護スタッフ、同室の患者など、日々接触する人々を覚えているかどうかで判断されます。
この認識力は、対象者が社会的な繋がりを維持するために重要であり、精神的な安定にも寄与します。
認識の基準として、名前を覚えている必要はありませんが、相手を識別できるかがポイントです。
例えば、リハビリスタッフの顔を見て「あの人がリハビリを担当してくれている」と理解しているかどうかが評価されます。
毎日の日課
FIMの記憶評価のもう一つの重要な項目は、対象者が毎日のルーチンをどれだけ覚えているかです。
これは起床や就寝の時間、食事の時間や場所、リハビリや訓練の時間と場所など、日常的なスケジュールを覚えているかどうかで評価されます。
日課を覚えていることは、対象者が自己管理能力を持っているかどうかを示し、日常生活をスムーズに送るために不可欠です。
メモリーノートや予定表の使用も確認され、これらを見て行動できるか、またその使用頻度や助けが必要かも評価に含まれます。
例えば、予定表を見て行動できるが、見直すことを促される必要がある場合は、スコアが下がります。
他人からの依頼
FIMの記憶評価には、他人からの依頼を覚えて行動できるかどうかも含まれます。
これは、単純な一段階の命令から、複雑な三段階の命令までの依頼内容をどれだけ覚えられるかで評価されます。
例えば、「手を洗ってください」という単純な命令から、「手を洗ってナースステーションに行ってカギを受け取ってください」という複雑な命令まで、どの程度覚えて実行できるかが見られます。
これらの依頼を覚え、適切に対応できることは、対象者の認知機能や実行能力を測る重要な指標です。
命令を理解し、正しく実行する能力は、自立した生活を送るために重要であり、そのレベルに応じて評価されます。
FIM(記憶)の採点基準
FIM(記憶)の採点基準は次の通りになります。
7点(完全自立)
採点基準:対象者は、日常で関わりの深い人、毎日の日課、他人からの依頼という3つの課題を自分一人で完全に記憶し、再生することができる。
例:患者が家族や担当スタッフの顔をすぐに認識し、毎日のスケジュール(食事、リハビリ、薬の時間など)を正確に覚えており、他人からの依頼(例えば「手を洗ってナースステーションに行ってください」など)を一度言われただけで正確に実行できる場合。
6点(修正自立)
採点基準:対象者は3つの課題を記憶し再生するのにわずかに困難を伴うが、基本的には自分一人で対応できる。
例:患者が家族やスタッフをほとんど問題なく認識し、毎日のスケジュールを覚えているが、たまに予定を確認するためにメモリーノートを見直すことがある。また、他人からの依頼もほぼ正確に実行できるが、時折確認が必要な場合。
5点(監視)
採点基準:対象者は3つの課題を記憶し再生するのに手帳やスケジュール帳、他者の補助が必要である。
例:患者が家族や担当スタッフを認識するために家族写真やスタッフの名札を利用し、毎日のスケジュールをメモリーノートで管理する。依頼に関しても、メモや他者の口頭でのリマインダーを必要とする。
4点(最小介助・促し)
採点基準:対象者は予定表を見て行動しているが、予定表を見ること自体を10-25%の頻度で声掛けしないと忘れてしまう。
例:患者が担当スタッフや家族の顔を認識し、毎日のスケジュールを予定表で確認して行動するが、予定表を見ること自体を他者が促す必要がある。依頼に関しても、たまに声掛けが必要。
3点(中等度介助・促し)
採点基準:対象者は担当スタッフの顔を認識し、朝の検温といった日課は覚えたが、頼まれた依頼内容は覚えていない。
例:患者がリハビリ担当スタッフの顔を認識し、朝の検温や食事時間などの基本的な日課は覚えているが、他人からの依頼(例えば「手を洗ってナースステーションに行ってください」など)は忘れてしまう場合。
2点(最大介助・促し)
採点基準:対象者は担当スタッフを認識しているが、日課は覚えておらず、依頼には答えられない。
例:患者がリハビリ担当スタッフの顔を認識することができるが、毎日のスケジュールや日課は覚えておらず、他人からの依頼に応じることも難しい。
1点(全介助)
採点基準:対象者は担当リハビリスタッフを覚えているが、担当の看護師や同室者は覚えておらず、日課や、他人からの依頼にも応えられない。
例:患者がリハビリ担当スタッフの顔を覚えているが、看護師や他の患者の顔は覚えていない。さらに、毎日のスケジュールや他人からの依頼を全く覚えられず、自立して行動することができない。
FIM(記憶)評価の注意点
FIM(記憶)評価の注意点として…
- 人物の名前について
- 予定表の使用について
- 他人からの依頼について
- 採点基準について
…があげられます。
それぞれ解説します。
人物の名前について
FIMの記憶評価では、対象者が頻繁に出会う人を認識できるかが重要視されますが、その人物の名前を覚えているかどうかは評価対象に含まれません。
つまり、対象者が家族や介護スタッフ、他の患者などを顔で識別し、誰がどのような役割を持っているのか理解しているかが評価のポイントです。
この認識能力は、日常生活における社会的な関わりを維持するために不可欠であり、精神的な安定にも繋がります。
例えば、リハビリ担当者の顔を見て「あの人がリハビリをしてくれる」という認識ができるかどうかが評価されます。
名前を覚えているかどうかではなく、相手を適切に識別できるかが重要です。
予定表の使用について
FIMの記憶評価では、対象者が毎日の日課を覚えているかどうかが評価されますが、この際、メモリーノートや予定表の使用も考慮されます。
対象者がこれらのツールを利用して日課を管理し、スムーズに日常生活を送ることができるかが評価の対象です。
予定表やメモリーノートを使って日課を覚えている場合、それらを適切に使用しているか、その頻度や依存度も評価に含まれます。
例えば、対象者が毎日の食事時間やリハビリのスケジュールを予定表で確認し、それに従って行動している場合、その使用が評価に反映されます。
ツールを使うこと自体が問題ではなく、それをどれだけ効果的に利用できているかが評価のポイントとなります。
他人からの依頼について
FIMの記憶評価には、他人からの依頼を覚えて実行できるかどうかも含まれます。
この評価は、依頼の内容が具体的な行動を伴うものであることが必要です。
例えば、「手を洗ってください」という単純な命令や、「手を洗ってナースステーションに行ってカギを受け取ってください」という複雑な命令など、依頼された内容を記憶し、適切に実行できるかが評価されます。
この能力は、対象者の認知機能や実行能力を測る重要な指標です。
命令を理解し、正しく実行する能力は、自立した生活を送るために不可欠であり、依頼の難易度に応じた評価が行われます。
採点基準について
FIMの記憶評価は、具体的な行動や状況に基づいた詳細な採点基準があります。
評価者はこれらの基準を正確に理解し、適切に評価を行う必要があります。
例えば、完全自立(7点)から全介助(1点)までの7段階の評価は、対象者がどれだけ自分一人で情報を記憶し再生できるか、またはどれだけ他者の助けが必要かに基づいています。
評価者は、対象者が頻繁に出会う人を認識できるか、毎日のスケジュールを覚えているか、他人からの依頼に応じられるかを観察し、各基準に従って適切な点数をつけます。
これにより、対象者の自立度や必要な支援レベルを正確に把握することができます。