介護保険の認定でも利用される”障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)”。
本記事ではこの判定の目的や項目、基準などについて解説します。
障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)とは?
“障害老人の日常生活自立度”とは、1991年に厚生労働省が行った「寝たきりゼロ作戦」の効果的な推進と老人保健福祉計画の作成、実施のために作成したものになります。
これは介護保険での要介護認定に使われているだけでなく、リハビリテーションの臨床現場で用いることも必要とされています。
目的について
“障害老人の日常生活自立度”の判定基準の目的についてですが、これはなんらかの障害を有する高齢者の日常生活自立度を客観的かつ短時間に判定することとされています。
“能力”ではなく“状態”を評価する
“障害老人の日常生活自立度”は“能力”の評価ではなく、“状態”の評価…特に“移動”にかかわる状態像に着目することが特徴です。
対象外
何ら障害を持たない健常高齢者は対象外とされています。
介護保険での調査にも使われている
“障害老人の日常生活自立度”はその特徴から、介護保険サービス調査でも使用されています。
その際は市町村が保険・福祉サービスの供給量を測定するための基礎資料とします。
自立度判定基準と合わせて移動、食事、排泄、入浴、着替え、整容(身だしなみ)、意思疎通といった個人の日常生活活動に関する項目(ADLの状況)についても判定することになっています。
“障害老人の日常生活自立度”のランク分けについて
上記の目的や特徴を踏まえたうえで、日常生活の自立の程度を以下の4段階にランク分けします。
- ランクJ
- ランクA
- ランクB
- ランクC
生活自立(ランクJ)
なんらかの障害などを有するが、日常生活はほぼ自立しており、独力で外出する
- 交通機関などを利用して外出する
- 隣近所へなら外出する
準寝たきり(ランクA)
屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない
- 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
- 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり(ランクB)
屋内での生活はなんらかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
- 車いすに異常し、食事、排泄はベッドから離れて行う
- 介助により車いすに移乗する
寝たきり(ランクC)
日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替えにおいて介助を要する
- 自力で寝返りをうつ
- 自力では寝返りもうたない
*期間についてですが、ランクA,B,Cに該当するものについては、いつからその状態に至ったかも記載しておく必要があります。
ADL(日常生活活動)の状況について
上述したように、“障害老人の日常生活自立度”は自立度判定基準と合わせて日常生活活動に関する項目(ADLの状況)についても判定することになっています。
以下にそれぞれの項目毎の基準についてまとめてみます。
1.移動
- a)時間がかかっても介助なしに1人で歩く
- b)手を貸してもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
2.食事
- a)やや時間がかかっても介助なしに食事する
- b)おかずを刻んでもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
3.排泄
- a)やや時間がかかっても介助なしに一人で行える
- b)おかずを刻んでもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
4.入浴
- a)やや時間がかかっても介助なしに一人で行える
- b)体を洗ってもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
5.着替え
- a)やや時間がかかっても介助なしに一人で行える
- b)袖を通してもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
6.整容(身だしなみ)
- a)やや時間がかかっても介助なしに自由に行える
- b)タオルで顔を拭いてもらうなど一部介助を要する
- c)全面的に介助を要する
7.意思疎通
- a)完全に通じる
- b)ある程度通じる
- c)ほとんど通じない
- 朝昼夜などの時間帯や体調によって能力の程度が異なる場合、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻繁に見られる状況や日頃の状況で判定を行う。
- 判定時には具体的な内容を「特記事項」に記載する。
注意点
判定基準における注意点としては…
…などがあげられます。
また、各ランク別の注意点は以下のとおりになります。
ランクJ: 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
J-1: 何らかの身体的障害を有するが、ほぼ自立し、公共交通機関を利用して積極的に外出する場合が該当。
J-2: 隣近所への買い物や老人会への参加など、町内の距離程度の範囲まで外出する場合が該当。
ランクA: 「準寝たきり」
A-1: 寝たり起きたりしているが、ベッドから離れている時間が長く、介護者がいれば多く外出する場合が該当。
A-2: 寝たり起きたりの状態にあるが、ベッドから離れている時間が少なく、介護者がいてもまれにしか外出しない場合が該当。
ランクB: 「寝たきり」
B-1: 介助なしに車いすに移乗し食事も排泄もベッドから離れて行う場合が該当。
B-2: 介助のもと、車いすに移乗し、食事または排泄に関しても介護者の援助を必要とする場合が該当。
ランクC: 「寝たきり」(重度)
C-1: 常時臥床しているが、自力で寝返りをうち体位を変える場合が該当。
C-2: 自力で寝返りをうつこともなく、ベッド上で常時臥床している場合が該当。
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参考
眞木 吉信, 障害老人の “寝たきり度” の判定をどうするか, 老年歯科医学, 1992-1993, 7 巻, 1 号, p. 72-74, 公開日 2011/12/05, Online ISSN 1884-7323, Print ISSN 0914-3866, https://doi.org/10.11259/jsg1987.7.72, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg1987/7/1/7_1_72/_article/-char/ja