ポジショニング – 定義・目的・評価するポイントについて

ポジショニング - 定義・目的・評価するポイントについて 用語

ポジショニングとは、患者や高齢者の体位を安定させ、快適で安全な姿勢を保つケアです。
褥瘡予防や呼吸機能改善など、身体機能の維持・回復を目的とし、クッションなどを用いて行います。

本記事ではこのポジショニングについて解説します。


ポジショニングとは?

医療・介護におけるポジショニングとは、患者や高齢者の体位を適切に調整し、快適で安全な姿勢を保つケアを指します。
ポジショニングの定義としてですが…

運動機能障害を有する対象者に、クッション等を活用し身体各部の相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保持すること

…となります。

ポジショニングは、長時間同じ姿勢を続けることで生じる褥瘡(床ずれ)や筋肉の緊張、関節の硬直などのリスクを軽減するために重要です。

具体的には、適切なクッションの使用や姿勢の調整を通じて、身体にかかる圧力を分散し、血流や呼吸をスムーズにすることが目的です。
また、ポジショニングは患者の自立支援にも寄与し、食事や排泄などの日常生活動作をサポートする役割もあります。

個々の患者の状態やニーズに応じて、継続的に適切な姿勢の見直しを行うことが求められるんだ!
このような継続的なポジショニングの調整は、患者の快適さを保つだけでなく、合併症の予防や回復の促進にも大きく寄与するんですね!

ポジショニングの目的

ポジショニングの目的としては主に…

  • 褥瘡(じょくそう)の予防
  • 拘縮(こうしゅく)の予防
  • 呼吸機能の改善
  • 浮腫(むくみ)の改善
  • 快適性の向上

…があげられます。
それぞれ解説します。

褥瘡(じょくそう)の予防

褥瘡とは、長時間同じ姿勢でいることで皮膚や皮下組織が圧迫され、血流が阻害されて組織が壊死する現象です。
ポジショニングでは、体重を適切に分散させることで、皮膚の圧迫を軽減し、褥瘡の発生を防ぐことが重要です。
特に寝たきりの患者では、定期的な体位変換が不可欠であり、最適な姿勢を保つためにクッションやマットレスの使用が効果的です。
また、皮膚の観察や清潔保持も褥瘡予防には欠かせない要素です。

これらのケアを組み合わせることで、褥瘡のリスクを大幅に減少させ、患者の健康を守ることができます。

拘縮(こうしゅく)の予防

拘縮とは、関節や筋肉が硬直して動かなくなる状態を指し、長期間動かさないことで進行します。
ポジショニングは、関節の正しい動きを保つために重要な役割を果たします。
適切な姿勢を保つことで、関節が自然な位置に保たれ、筋肉や腱の収縮が防がれます。
また、ポジショニングと併用して、軽い関節運動やストレッチを行うことで、拘縮のリスクをさらに減らすことができます。

患者の状態に応じた個別のポジショニング計画を作成することで、拘縮を予防し、日常生活の自立をサポートすることが可能です。

呼吸機能の改善

正しいポジショニングは、呼吸機能の改善にも寄与します。
不適切な姿勢は、胸部や腹部を圧迫し、呼吸が浅くなる原因となります。
ポジショニングによって姿勢を調整し、胸郭の拡張を促すことで、呼吸がスムーズになり、酸素の取り込みが向上します。
特に肺炎や呼吸不全を予防するためには、上半身を適切に起こした体位が効果的です。
また、呼吸器疾患のリスクが高い高齢者や寝たきりの患者において、定期的なポジショニングが呼吸機能の維持に大きな役割を果たします。

このような工夫により、呼吸器合併症のリスクを低減し、患者の健康を守ることが可能です。

浮腫(むくみ)の改善

長時間の寝たきりや座位の維持は、血流が滞り、浮腫(むくみ)の原因となることがあります。
ポジショニングでは、血流を促進し、リンパの流れをスムーズにするための体位調整を行います。
例えば、足を少し高くするポジションにすることで、重力を利用して血液やリンパ液の循環を促し、浮腫を軽減する効果があります。
また、適切な体位を維持することで、浮腫が引き起こす不快感や痛みを減らすことができ、患者の快適さを保つことが可能です。

ポジショニングの工夫によって、浮腫の改善とともに血行促進が期待でき、患者の健康状態の維持に役立ちます。

快適性の向上

ポジショニングは、単に医療的なリスクを軽減するだけでなく、患者や高齢者が快適に過ごせる環境を作るためにも重要です。
長時間同じ姿勢でいることは、筋肉や関節に負担をかけ、不快感や痛みを引き起こす原因となります。
適切な体位を保つことで、圧力が均等に分散され、身体の負担が軽減されるため、より快適な状態が維持されます。
快適な姿勢が保たれることで、患者の精神的な安定やリラックス効果も得られ、生活の質(QOL)向上に繋がります。

これにより、医療や介護の現場において、患者の健康管理とともに心地よい環境づくりをサポートすることが可能です。

これらの目的を達成することで、患者や高齢者の健康と快適さを維持することができるんだ!
そのため、ポジショニングは医療・介護において欠かせない重要なケアの一環であり、個々の状態に合わせた適切な対応が求められるんだね!

ポジショニングの種類

ポジショニングの種類としては…

  • 仰臥位(ぎょうがい)
  • 側臥位(そくがい)
  • 半側臥位(はんそくがい)
  • 座位(ざい)
  • 端座位(たんざい)

…があげられます。
それぞれ解説します。

仰臥位(ぎょうがい)

仰臥位とは、患者が仰向けに寝る姿勢のことを指し、最も基本的なポジショニングの一つです。
この姿勢は、頭部を少し上げ、首や腰にかかる負担を軽減するために枕やクッションを使って調整します。
また、足首や膝を適度に曲げることで、脚の血流を促進し、浮腫や拘縮を予防することができます。
仰臥位は呼吸機能をサポートする効果もあり、特に胸郭の拡張を促して酸素の取り込みを助けることができます。

この姿勢は、手術後や休息時に広く用いられ、患者の快適さと健康を維持するために重要な役割を果たします。

側臥位(そくがい)

側臥位は、患者が横向きに寝る姿勢で、仰臥位に比べて特定の部位への圧力を分散させる効果があります。
下側の腕と足を少し曲げ、上側の腕と足を前方に伸ばすことで、体のバランスをとりやすくし、安定感を増すことができます。
この姿勢は、特に背中や臀部への圧力を軽減するため、褥瘡予防に有効です。
また、消化器系の負担を減らすために、側臥位は食事後や吐き気がある場合にも推奨されます。

クッションや枕を利用して、姿勢を適切にサポートすることで、患者の快適さと安全を確保できます。

半側臥位(はんそくがい)

半側臥位は、仰向けと横向きの中間にあたる体位で、体を約45度傾ける姿勢です。
この姿勢は、仰臥位や側臥位の欠点を補い、身体の圧力を均等に分散させるために利用されます。
特に褥瘡のリスクがある患者にとって、圧力の集中を防ぎ、皮膚や筋肉の負担を軽減する効果があります。
また、半側臥位は呼吸機能を促進し、胸郭の拡張をサポートするため、呼吸不全の予防にも役立ちます。

適切な体位変換を行うことで、患者の健康と快適さを長期間にわたって維持することができます。

座位(ざい)

座位とは、椅子や車椅子に座る姿勢で、背中をしっかりと支えることが重要です。
この姿勢は、食事や会話、リハビリテーション時など、日常生活の多くの場面で使用されます。
座位では、背中や腰への負担を軽減するためにクッションを使用し、脚を適切に支えることで血流を促進することが大切です。
また、座位は呼吸機能の改善にも効果的で、胸部が圧迫されにくいため、呼吸がしやすくなります。

患者の体力や姿勢に応じて、定期的に姿勢を調整しながら座位を維持することが、快適さと安全性の確保に繋がります。

端座位(たんざい)

端座位は、ベッドの端に座り、足を床に下ろす姿勢です。
ベッドから移乗する際や、リハビリテーションの初期段階で利用されることが多く、背中を支えることで安定した姿勢を保つことができます。
この姿勢は、立ち上がる準備運動としても活用され、下半身の筋力を強化する効果があります。
また、端座位は循環機能を高めるため、長時間寝たきりの患者にとって血流を改善し、浮腫を予防することに役立ちます。

適切な支えを用いて端座位を維持することで、患者の自立度を向上させ、リハビリテーションの成功に貢献します。

これらのポジショニングを適切に行うことで、患者や高齢者の健康と快適さを維持することができるんだ!
さらに、適切なポジショニングは、合併症の予防やリハビリテーションの効果を最大化し、生活の質(QOL)の向上にも繋がりますね!

ポジショニングにおける評価のポイント

では、クライアントに対してポジショニングを行う場合、どのような点を評価していく必要があるのでしょうか?
その評価の対象は大きく分けると次の3つになります。

  • 対象者
  • 環境・福祉用具
  • 介助法

以下に詳しく解説します。

対象者

ポジショニングを行う対象者そのものに対して行います。
ポイントとしては…

項目  
全身状態 疾患名・既往症、床ずれ、身長・体重、BMI、血圧、脈拍、呼吸(SpO2)、浮腫、疼痛
障害状況と姿勢の特長 麻痩、関節可動域、知覚・認知能力、筋緊張、姿勢の並び(アライメン卜)と体圧評価
動作能力 体動能力、座位能力、移乗能力、高齢者日常生活自立度
意思疎通 意識レベル、言語能力、表情(快・不快)、しぐさ、目線、痛みの訴え、認知高齢者自立度
ADL 食事方法(摂食・栄養注入)、排泄方法(おむつ・カテーテル)、入浴・保清方法、移動方法
生活習慣と姿勢の好み 生活や治療上必要な体位、得手体位、痛みを避ける体位、好みの体位

環境・福祉用具

ポジショニングを行うクライアントの環境や使用する福祉用具に対しても評価を行います。

項目  
ベッド 構造と機能(電動・手動、背上げ・膝上げ・ハイロー機能)
マットレス 素材と硬さ(ウレタン・ポリエステル綿・ゲル素材) 、構造(1層~3層) 、厚さ
体圧分散寝具 静止型マットレス、圧切換型マットレス(上敷きタイプ・高機能タイプ)
シーツ類や衣服 シーツ(綿・伸縮性素材)、防水シーツ、パスタオルのしわやずれ、衣服のしわ
ポジショニング用具・福祉用具 形状固定型(主にウレタン)、自由成形型(主にビーズ)、スライデイングシート、圧抜き用手袋
利用している福祉用具 車椅子、車椅子クッション、移乗用具(介護用リフ卜・トランスファーボード)

介助法

そのクライアントに対して誰が、どのように介助を行っているか?を評価します。

項目  
ポジショニングの方法 体位変換の種類、一日の体位変換スケジュール、圧抜きの習慣
主な介助者 家族(一人・複数)、看護師(入院・入所・訪問)、介護職(入院・入所・訪問)
ポジショニングへの取り組み方 介護力(体力・人数・精神面・時間的なゆとり)、ポジショ二ング技術や理解・連携の仕方
介助によって生じるずれ、摩擦への配慮 寝位置修正の方法や頻度、移乗方法(介助者の人数、用具の使用)、車椅子姿勢の修正

体位変換とポジショニングの違いについて

体位変換とポジショニング、どちらも患者の状態を良くするための重要なケアですが、それぞれ異なる意味合いを持っています。
ここでは…

  • 定義
  • 目的
  • 方法
  • 注意点

…における違いについてそれぞれ解説します。

定義

体位変換とは、患者や高齢者の体の向きを変える行為を指し、例えば仰向けから横向き、うつ伏せから座位など、定期的に異なる体位に移動させることを意味します。
一方、ポジショニングとは、体位変換を行った後、その体位が崩れないようにクッションや枕を使って体を安定させる行為です。

体位変換はあくまで体の向きを変えることが目的であり、ポジショニングはその姿勢を維持し、身体が快適で安全な状態を保てるように調整することに重点があります。
体位変換が「動かす」ことに焦点を当てているのに対して、ポジショニングは「安定させる」ことに重きを置いています。

これらの違いは、どちらも患者の健康維持に重要ですが、それぞれの役割が異なる点にあります。

目的

体位変換の主な目的は、同じ姿勢を長時間保つことで起こるリスク、特に褥瘡(床ずれ)の予防です。
また、血流を促進し、呼吸機能を改善することや、関節の拘縮を防ぐことも体位変換の重要な役割です。

一方、ポジショニングの目的は、体位変換後の体を安定させ、患者が快適に過ごせるようにすることです。
ポジショニングは、姿勢を保つために体重を均等に分散し、圧力を適切に管理することで、褥瘡や拘縮のリスクをさらに軽減します。

これにより、体位変換が患者の体を動かすための手段であるのに対し、ポジショニングはその動きを最適化して維持するための手法であるといえます。

方法

体位変換の方法としては、ベッド上で患者を仰臥位から側臥位、うつ伏せ、座位などに変えることで、定期的に異なる姿勢を取らせます。
これは看護師や介護者が手で支えながら行われ、必要に応じて滑りシートなどを使用します。

一方、ポジショニングでは、クッション、枕、専用のポジショニング具などを使って、患者の身体の各部を支えることで、正しい姿勢を保つことが求められます。
ポジショニングは、例えば膝の下にクッションを入れて脚の圧力を分散させたり、背中に支えを入れて横向き姿勢を維持したりすることで行います。

このように、体位変換は動作を伴う調整ですが、ポジショニングはその後の姿勢維持を目的とする細やかなサポートが求められます。

注意点

体位変換の注意点としては、無理に患者を動かさないことや、急な体位変換による転倒や怪我のリスクを避けることが挙げられます。
また、体位変換は患者の体力や症状に応じて適切な頻度で行うことが重要です。

一方、ポジショニングでは、クッションの位置や使い方に注意し、体圧が偏らないようにすることが大切です。
適切に支えを入れることで、褥瘡や関節の負担を軽減しますが、誤ったポジショニングは逆に体の一部に過度な圧力をかけてしまうこともあります。

どちらも患者の状態に合わせた慎重な対応が求められ、定期的な見直しや調整が必要です。

体位変換はポジショニングを行うための前提条件であり、姿勢を変えることで身体への圧力を分散するんだ!
ポジショニングはその後に行うケアで、体位変換後の姿勢を安定させ、目的をより効果的に達成するためのサポートといえるね!

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

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