FIM(Functional Independence Measure)の排便管理評価は、患者の日常生活における自立度を評価する重要な指標であり、「失敗の頻度」と「介助量」を基に自立度を評価します。
本記事ではFIM(排便管理)評価のポイント、項目、具体例などについて解説します。
FIMにおける排便管理の評価について
FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価表)の排便管理は、患者の日常生活動作の自立度を評価する重要な項目です。
評価は「失敗する頻度」と「介助量」の両方を採点し、低い方の得点が最終的な排便管理の得点となります。
具体的には、安全かつ適切なタイミングで括約筋を緩め、失禁を避ける能力が評価されます。
評価基準は7点(完全自立)から4点以下(介助が必要)まであり、完全自立は失禁がなく、自立して排便管理ができる状態を指します。
修正自立(6点)は器具や薬剤の使用を伴いますが自立している場合で、5点は監視や準備が必要な場合を示します。
4点以下は失敗の頻度や介助の程度に応じた評価となります。
FIMの排便管理評価は、患者が排便後に衣服を整える能力や肛門周囲を清潔に保つ動作は「トイレ動作」として別途評価されます。
これらの評価を通じて、患者さんの全体的な自立度を把握し、適切な介護やリハビリテーション計画を立てるための指標となります。
FIM(排便管理)の評価対象の項目
FIM(排便管理)の評価対象の項目としては…
- 排便のコントロール
- 道具の使用
- 失敗の頻度
…になります。
それぞれ解説します。
排便のコントロール
FIMの排便管理の評価対象の一つは、患者さんが安全かつ適切なタイミングで排便を行う能力です。
この評価は、患者が排便をしても良い状況で、適切なタイミングで括約筋を緩めることができるかどうかを中心に行われます。
適切な排便のタイミングを理解し、意識的に括約筋をコントロールする能力は、日常生活の自立において非常に重要です。
この評価は、特に排便のタイミングや頻度を調整するための能力を示し、患者の生活の質を高めるための指標となります。
また、この評価は、患者の生活リズムや習慣を理解し、より適切なリハビリテーションや介護計画を立てるための基盤となります。
道具の使用
排便管理の評価において、もう一つの重要な要素は道具の使用です。
具体的には、差し込み便器、オムツ、パットなどの道具を使用して自立する能力が評価されます。
また、下剤や座薬などの内服薬や投薬を使用して自立する能力も含まれます。
これらの道具や薬剤の準備、装着、使用後の片付けなどを適切に行う能力は、日常生活の自立度を高めるために必要です。
道具の使用に関する評価は、患者がどの程度自立してこれらを管理できるかを示し、介護者の負担を軽減するための重要な情報となります。
この評価は、患者の具体的なニーズに応じた適切な支援や指導を行うための指針として機能します。
失敗の頻度
FIMの排便管理の評価では、失敗の頻度も重要な評価対象です。
ここでいう「失敗」とは、患者が衣服やベッドを汚してしまい、介助者に負担がかかる場合を指します。
失敗の頻度が高い場合、患者は排便のコントロールが不十分であり、適切な介護や支援が必要であることが示されます。
一方、患者自身で失敗の処理ができている場合は、失敗とは見なされません。
この評価は、患者の排便管理の自立度を具体的に示し、介護計画やリハビリテーションの方向性を決定するための重要な指標となります。
また、失敗の頻度を減らすための具体的な介入方法や支援策を検討するための基礎データとしても活用されます。
FIM(排便管理)の採点基準
FIM(排便管理)の採点基準と具体例は次の通りになります。
7点 (完全自立)
安全かつ随意的に排便をコントロールし、決して失禁しない。
例: 患者は、トイレに行きたいと感じたときに適切なタイミングでトイレに行き、排便を行います。失禁することはなく、介助や道具も必要としません。
6点 (修正自立)
器具、道具、薬剤(差し込み便器、簡易便器、オムツ、指による刺激、便軟化剤、緩下剤、座薬、整腸剤)を使用して自立している。
例: 患者は便軟化剤を使用しており、それにより自力で排便をコントロールできます。トイレでの行為はすべて自分で行い、失禁することはありませんが、薬剤の助けを必要とします。
5点 (監視・準備)
監視または準備、指示・促しが必要。トイレに時間を要す。失禁することは月に1回未満です。
例: 患者はトイレに行くために家族の助けを借りてタイミングを見計らう必要があります。家族が近くで監視し、必要に応じて指示や促しを行うことで排便が可能です。
4点 (最小介助)
患者が75%以上の作業を自分で行えるが、25%以下の介助が必要。失禁することが週に1回未満です。
例: 患者はトイレに行く際に少し手助けを必要としますが、排便行為自体は自分で行えます。家族が手を貸してトイレに移動させ、必要なサポートを提供します。
3点 (中等度介助)
患者が50%以上の作業を自分で行えるが、50%以下の介助が必要。失禁することが1日に1回未満です。
例: 患者は排便時にベッドからトイレまで移動する際にかなりの手助けが必要です。家族が患者をトイレに移動させ、座らせるための介助を行います。
2点 (最大介助)
患者が25%以上の作業を自分で行えるが、75%以上の介助が必要。毎日失禁しているけど介助者に伝えることができます。
例: 患者はトイレに行くことがほとんどできず、家族がほぼすべてのサポートを提供します。家族が患者をトイレに連れて行き、排便行為を助けます。
1点 (全介助)
患者が自分で排便を行うことができず、100%介助が必要。毎日失禁しており、介助者に伝えることができません。
例: 患者は完全にベッド上で介助を受け、排便管理全体を介助者が行います。患者は意識的に排便をコントロールすることができません。
FIM(排便管理)評価の注意点
FIM(排便管理)評価の注意点ですが、ここでは…
- 失敗の定義
- 評価の二面性
- 排便がない場合の評価
- 排便の前後の動作
- 座薬の使用
…について解説します。
失敗の定義
FIMの排便管理における「失敗」とは、衣服やベッドを汚してしまい、介助者に負担がかかる場合を指します。
これは、患者が排便のコントロールが不十分であり、適切に排便を行うことができないことを示します。
しかし、患者自身で汚れた衣服やベッドを処理できている場合は「失敗」とは見なされません。
自分で後片付けを行える能力は、患者の自立度を評価する際に重要な要素となります。
失敗の頻度を正確に記録し、評価に反映させることは、適切な介護計画を立てるために必要です。
評価の二面性
FIMの排便管理の評価では、「失敗する頻度」と「介助量」の両方を採点し、二つの得点の低い方を最終的な排便管理の得点とします。
この二面性の評価により、患者の排便管理の自立度をより正確に把握することが可能です。
例えば、頻繁に失敗するが介助はほとんど必要ない患者と、失敗は少ないが多くの介助が必要な患者を区別することができます。
このように、両面から評価することで、患者の具体的なニーズに応じた介護やリハビリテーションの計画を立てるための有効な情報を得ることができます。
評価の一貫性と客観性を保つために、このアプローチは不可欠です。
排便がない場合の評価
72時間以内に排便がない場合、FIMの排便管理評価は未評価扱いとなり、その後の排便時の介助量で評価されます。
この規定は、便秘などで排便が長期間ない場合に、評価の公正性と一貫性を保つために設けられています。
評価が未確定の期間は、患者の通常の排便管理状況を観察し、次の排便時に適切な評価を行う準備をすることが求められます。
この期間中に行われるケアや支援も記録し、評価時に反映させることが重要です。
これにより、評価が適切であり、患者の実際の状況に基づいた介護計画を策定することが可能となります。
排便の前後の動作
排便の前後における「衣服の上げ下げ」や「排便後に肛門周囲を清潔にする」などの動作は、FIMの「トイレ動作」の項目で採点されます。これらの動作は排便そのものとは異なるため、別の評価項目として扱われます。この区分により、患者の自立度をより詳細に評価することが可能です。トイレ動作の評価は、患者がトイレを使用するための一連の動作をどの程度自立して行えるかを示します。排便管理とトイレ動作を別々に評価することで、患者の全体的な自立度をより正確に把握し、適切な支援を提供するための基礎となります。
座薬の使用
座薬を使用していても、月に2回以下の頻度で使用している場合、FIMの排便管理評価では7点(完全自立)となります。
これは、頻繁な使用でなければ、患者の排便管理能力に大きな影響を与えないと見なされるためです。
この評価基準は、座薬の使用が一時的な支援として機能し、患者が自立して排便管理を行う能力を示す場合に適用されます。
評価者は、座薬の使用頻度を正確に記録し、評価に反映させることが求められます。
この基準により、評価の公正性と一貫性が保たれ、患者の自立度を適切に評価することができます。