高齢者のADL、APDLの評価はもちろん必要です。
でも、ICFの観点では「参加」といった項目にまで広げてそのクライアントの支援を行う必要があります。
そのための評価ツールの一つとして、老研式活動能力指標が広く使用されています。
今回はこの老研式活動能力指標についてその目的や方法、カットオフ値について解説します。
老研式活動能力指標
老研式活動能力指標は、LawtonとBrodyによってつくられた“IADL Scale(手段的ADL尺度)を基に古谷野らが発表した指標です。
現在も広く使われており、スタンダードな指標とされています。
目的
セルフケア(+移動)であるADL能力の測定ではとらえきれない、「社会生活」を範囲に含めた生活能力を評価することを目的としています。
特徴
老研式活動能力指標は、それぞれ3つの尺度に分類される活動能力についての設問で成り立っています。
- 手段的自立
- 知的能動性
- 社会的役割
以下にそれぞれ解説します。
手段的自立
- バスや電車を使用し一人で外出できるかどうか?
- 日用品の買い物ができるかどうか?
- 自分で食事の用意ができるかどうか?
- 請求書の支払いができるかどうか?
- 銀行預金、郵便貯金の出し入れができるかどうか?
知的能動性
- 年金などの書類がかけるかどうか?
- 新聞などを読んでいるかどうか?
- 本屋雑誌を読んでいるかどうか?
- 健康についての記事や番組に関心があるかどうか?
社会的役割
- 友達の家を訪ねることがあるかどうか?
- 家族や友人の相談にのることがあるかどうか?
- 病人を見舞うことができるかどうか?
- 若い人に自分から話しかけることがあるかどうか?
使用方法と注意点
使用方法としては、各項目の設問に本人or本人の生活状況を良く知る家族などに回答してもらうようになります。
注意点としては、質問者の主観が入らないようにすることや、説明を自己判断で加えたり、誘導しないようにすることがあげられます。
また、「○○できますか?」という設問の場合、現在本人がしているかどうかは関係なく、あくまで“可能”か“不可能”かを判断する必要があります。
判定方法とカットオフ値
それぞれの設問項目に対して「はい」なら1点、「いいえ」なら0点と配点し、合計点を算出する判定方法になります。
ちなみにあくまでその対象の生活状況の評価目的のため、カットオフ値というものは定められてはいません。
老研式活動能力指標は古い?
初めて発表したのが1986年と30年以上も前なことからも、設問項目の一部は現代の高齢者のライフスタイルには適さない、網羅しきれていない…という意見もあるようです。
そこで様々な研究機関が現代の高齢者のライフスタイルに合わせた指標(例:JST版 活動能力指標etc)を独自に作成し、調査に活用している事例もみられます。
しかしまだまだ改定する余地もあるようなので、それ自体が完全な老研式活動能力指標の代替手段として使用できる…というよりは併用して使用するという方法がお勧めのようです。