釣りってセラピーになるんじゃないですか?【作業療法としての治療的効果について】

釣りって非常に魅力的な趣味です。
あんなに人をワクワクさせ、夢中にさせる活動もなかなかないなと。
釣りの魅力を知ることで、心身ともに健康になったと言っても過言ではありません.

そこで今回は、“釣り”という趣味をセラピーとして扱えるかどうかを検討してみます。

釣りとメンタルヘルスの関係

“釣り”を単なる趣味としてだけではなく、セラピーとしての側面に注目するとどんな期待できる効果があるのでしょうか?
考えられるに、以下のような項目があげられます。

  • 問題解決スキルを養える
  • 達成感を味わうことができる
  • 自信を高めることができる
  • 外出する機会をつくることができる
  • 行動予定を立てる機会を設けることができる
  • 適度な運動になる
  • ストレスの緩和の一助になる
  • 食事療法として
  • 社会貢献の機会をつくることができる
  • 他の人との交流機会を創出することができる

これらの項目について、少し考えてみます。

問題解決スキルを養える

魚1匹を釣るためには、実はいろいろな準備と思考、戦略を組み合わせないといけません。

  • ロッド、リール、ライン、餌(ルアー)の選択
  • 狙うポイントの選択
  • 目に見えるポイントの確認
  • 目に見えない水中のポイントの予測
  • 今現在の天気とこれからの天候の変化
  • 水温や風の向き
  • 時間帯

…これらの項目だってほんの一部。
その多くの選択肢を組みわせ、上手くいくまで試行錯誤の繰り返しです。
“釣る”という目の前の問題(課題)を解決するために、多くの選択肢を導きだしてそれらを組み合わせ試行錯誤をする。

このプロセスは“問題解決スキル”を養うことに繋がります。

達成感を味わうことができる

魚を釣り上げたときの感動は、経験した人でないとわかりません。
あの達成感は恐らく他に代わるものがないとも言われます。
この達成感は脳内物質であるドーパミンが分泌した影響によるものです。
ドーパミンが分泌することで得られる効果としては…

  • 幸福感
  • 前向きな気持ちへの切り替え
  • 集中力の向上
  • 意欲の向上
  • 記憶力(ワーキングメモリー)の向上

…など人間が社会生活を営む上で欠かせないものがあげられます。

自信を高めることができる

苦労して釣り上げた1匹の魚は非常に価値が高い1匹です。
釣り上げた達成感はもちろん、自信を高めることにもなります。

幸い、釣りといっても簡単に釣れる魚から非常に難しい魚までバリエーションは豊富です。
どんなレベルの人でも対象魚によって対応できる趣味と言えます。

自分の現段階のレベルよりもほんの少し上の魚を釣る経験をする。
そしてほんの少しでも「あれ?案外いけるんじゃね?」って自分のことをプラスに捉えることが重要なんです。

この1匹が“自分に自信がない”という負のスパイラルから抜け出すきっかけになるはずです。

外出する機会をつくることができる

高齢になればなるほど、なかなか外出をする機会が減ってしまいます。
心がくたびれればくたびれるほど、外にでかける機会をつくることもしなくなります。
家のなかに閉じこもりな人は、やはり心身ともに健康とは言えなくなってしまいます。

釣りはどういう方法を取っても家(自宅)の中ではできません。
やり方によってはもしかして方法もあるでしょうけど、やっぱり限界があります。
閉じこもりな人に対して、釣りというきっかけを与える。
それだけで外出する機会になり、釣りの楽しさや魅力に気づけばもうほとんど解決したようなものです。
「週末に釣りにいく」といった習慣になれば、さらに多くのメリットを受け取ることができるはずです。

行動予定を立てる機会を設けることができる

経験則で申し訳ありませんが、生活の中での認知症の予防って「予定を立てる事」な印象を受けます。
もちろん、“楽しみな予定”であることが前提です。

釣りの楽しさを理解し…
「今度の週末はどこに行こうか?」
「暖かくなったらみんなで旅行がてら離島に行こうか?」
…といったあれこれ考えながら、未来の予定を計画する。

これは脳の前頭葉という部分を活性化する立派な“脳トレ”と言えます。

適度な運動になる

釣りをすること自体ずっと立っている(場合によっては座るけど)ことがほとんどです。
一日中釣りをしに外出し、帰ってきたら結構な疲労感です。

しかも釣りができる場所って様々です。
足場が良くアクセスしやすい簡単な場所としては釣り堀などがあげられます。
逆に足場が悪く、釣り場までたどり着くのが大変な場所としては…山奥の源流や磯などがあげられますかね。
釣り場に着くまでも、場合によってはかなり足腰にキマス!

釣りって結構運動になるんです。

ストレスの緩和の一助になる

日の出が水面に写る景色。
波の音と目の前に広がる地平線。
木が揺れて擦れる音。
季節毎で変わる虫や鳥の声。
釣りって自然の中で行うので、普通の生活をしていると気付かない自然の様子に気づかされます。

ストレスって大抵“人間関係”です。
あとは何かに“追われること”も当てはまるかな。

そんなときは一人で釣りをしてみてください。
自然の中に身も心も預けて
人間というよりは動物に戻って
追われることなく“追う”行為である釣りをする

結構“瞑想”なんかに近いものを感じますけどね。

食事療法として

釣りをして魚に触れる機会が増えると、自然とその料理にも興味がわきます。
やっぱり肉中心よりは魚中心の食生活の方が体にとっては健康的です。
食事のスタイルを変えるのって、誰かに言われたり無理やりではやっぱり続かないものです。
釣りを通して魚に興味を持ち、その料理にも興味を持つ。
案外、食生活を変えるきっかけって、こんなものなのかなと。

単純に自分で釣った魚は美味しいですからね!

社会貢献の機会をつくることができる

釣りをすると必ずその釣り場にゴミが散乱している場面に遭遇します。
拾う拾わないは別として、やっぱり「いやだな」と思うはずです(普通はね)。
そうすると「ゴミはきちんと持ち替えるようにしよう」という基本的なルールを守ろうとします。
どうせならきれいな場所で釣りをしたいですからね。

結局のところ、社会貢献って自分の生活や活動範囲の近いことが問題にならないと本気にならないんだと思うんです。
釣りをしたことがない人に、川や湖、海の水質汚染の問題を説いても「ピン」とはこないはずです。
魚に興味を持たなければ、外来魚による生態系の破壊も在来種の絶滅問題も「関係ない」の一言ですから。

他の人との交流機会を創出することができる

やっぱり人間って社会的な動物ですからね。
他者との関係のなかで自分を顧みることができますし、価値を見出すものだと思うんです。

釣りは一人でもできます。
でも気の合う誰かと行う釣りも楽しいものです。
新しい釣り場で出会う人や、親切にしてくれる釣り具屋の店主。
馴染みの釣り船の船長や、いつも行く防波堤であいさつだけの交流の人

釣りという活動をきかっけに、なにかしらの交流が生まれます。

まとめ

今回は釣りという活動がセラピーになり得るんじゃないか?というテーマを掘り下げてみました。

作業療法というリハビリテーションのセラピストをしていると、趣味や活動の重要性を感じさせられます。
これは多くの体や心の不調に陥ってしまった方と関わっていると、非常に痛感させられる事実です。

何かに夢中になっている人は健康である」ということ。
一見、単純だけど生活していくうえで非常に重要なことなんだなと思います。

もちろん釣りだってただの“趣味”です。
でも違う側面を見て、ちょっと目的をずらすだけで、誰かを救えるセラピーになるのではないでしょうか?

ま、作業療法士って仕事をしているからこその見解なんですけどね。

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