リハビリの臨床や現場で何の疑いもなく“APDL”や“IADL”という言葉を使用して言いますが…この違いについてきちんと理解している人は少ないようです。
そこで今回は、このAPDLとIADLの言葉と持つ意味の違いについて解説します。
ADL=標準的ADL
まず、セルフケアと移動を含めた“日常生活動作”が「ADL(Activities of Daily Living)」と呼ばれています。
日常生活を送る上で、最も基本的な動作のカテゴリーになるため、APDLやIADLと区別するためにも…基本的日常生活動作(BADL)…と枠組みされ表現される場合もあるようです。
APDLは“生活関連動作”
一方、APDLとは“Activities Parallel to Daily Living”の略になります。
日本語では“生活関連動作”と訳されます。
家庭生活を維持するのに必要な、家事動作を中心とした“生活動作能力”と意味されています。
APDLの項目
標準的ADLに対して、APDL(生活関連動作)は…
- 調理
- 掃除
- 買い物
- 交通公共機関の利用
…が項目としてあげられます。
IADLは“手段的日常生活動作”
IADLは“Instrumental Activities of Daily Living”の略です。
日本語では“手段的日常生活動作”と訳されます。
IADLの項目
IADLの項目としては…
- 電話の使い方
- 買い物
- 食事の支度
- 家事
- 洗濯
- 移動、外出
- 服薬の管理
- 金銭の管理
…の8項目で構成されている…とあります。
APDL、IADLの違いについて
ではAPDLとIADLの違いとはなにがあるのでしょうか?
結論から言えば、APDLもIADLもほとんど同じ意味として扱われる、と考えていいようです。
細川 徹氏による論文『ADL尺度の再検討-IADLとの統合』ではAPDLとIADLを合わせて「拡大ADL」と表現しています。その違いを厳密に区分けせずに使用していることからも、ほぼ同義として扱われる用語と考えられます。
語源から違いを考える
ちなみにAPDL,IADLのそれぞれを語源から考えてみると…
APDLの場合
APDLは「Activities Parallel to Daily Living」の略であり、この「Parallel to~」は「○○に沿って~」と訳されます。
つまり「平行」の意味になります。
その人の基本的な最低限の日常生活動作はBADL。
APDLはそのBADLと平行している…言い換えれば「寄り添った位置にある活動」…というイメージかなと。
ADLとは違う世界線の活動…って解釈かな?
IADLの場合
IADLは「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、この「Instrumental」は「手段となる、助けになる」といった訳になります。
解釈の違いによるでしょうけど、IADLを『手段的日常生活動作』と訳することからも…
“そのADL動作を拡大し、一つ高次の活動にするための手段に成り得る動作”
…と考えるとしっくりきますかね?
APDLもIADLも“+役割”かもしれない
APDL、IADLの違いについて、やや多角的に考え広い視点で解釈すると…ADL+役割…という考え方に私自身は落とし込んでいます。
例えばですが、元々主婦であった脳卒中片麻痺の患者さんがいたとします。
今回の発症によって病前の“役割”であった「家事動作」の遂行が困難になる状況が考えられます。
彼女にとって「家事動作」は“いままでセルフケアであるADL同様、当たり前のように行っていたparallel(平行)な活動”…つまり、APDL動作になります。
同時に自分自身だけでなく家族も対象にした“一つ高次元の活動(IADL)”と言えます。
これが仮に家事動作ではなく“趣味活動”だとしても、そこに付帯する役割や対象の範囲を考えれば、APDL、IADLに枠組みされることも頷けます。
まとめ
今回は、APDLとIADLの違いについて解説しました。
APDLもIADLも、その言葉の違いについては大きな違いはなく、そこに言及すること自体ナンセンスなのかもしれません(笑)。
もっと重要なことは、「その人にとっての本当のAPDL、IADLは何になるのか?」「その人の社会生活を送る上での役割は?」という原理原則を見極めることなんだと、今回まとめながら改めて落とし込むことができました気がします。