大人の塗り絵って数年前からブームのようです。
たしかに、リハビリでも作業療法の臨床や、介護現場でも使われているのを目にするようになりましたね。
でも、実際この大人の塗り絵が…
- どんな効果があるの?
- 脳のどの部分を活性化するの?
…ということはあまり考えずに利用していることも多いかと思います。
そこで今回はこの「大人の塗り絵」の効果について、脳科学と心理学の分野から解説します。
大人の塗り絵とは?
『大人の塗り絵』と言われるものは、一般的な塗り絵とは違いセラピー効果を目的としています。
塗り絵でも特に『コロリアージュ』というもののようです。
このコロリアージュはどうやらフランスで流行したものらしく、特にフランスの女性を中心にブームになったとされています。
大人の塗り絵が持つ脳への効果
では、この大人の塗り絵がもたらすとされる脳への効果はどのようなものなのでしょうか?
今回は…
- 後頭葉
- 側頭葉
- 頭頂葉
- 前頭葉
…の部位別に解説します。
後頭葉
後頭葉とは頭(脳)の後ろ…後頭部に位置する部位です。
この後頭葉には一次視覚野、視覚前野(視覚連合野)があります。
この部位では色や形といった情報を司るため、主に視覚とその認識に関与します。
大人の塗り絵などの活動は、一次視覚野を含む後頭葉と頭頂葉の視覚野を刺激することが研究で示されています。
この刺激は、視覚刺激や色知覚に対する脳の反応の一部であるようです1)。
また別の研究では、後頭葉、特にV1からV4の領域が、自然な色と不自然な色の両方の物体からの色情報を処理するのに重要な役割を果たしていることが示されています2)。
側頭葉
側頭葉は耳の周辺…つまり頭の(脳)の左右両側に位置する部位になります。
この側頭葉は大脳辺縁系…特に海馬と扁桃体とも繋がっているため、言語理解、記憶、物事の判断、感情の制御、聴覚に関与します。
ちなみに側頭葉は、色やコントラストの知覚を含め、見たものの認識に関与しています。
この視覚認知の過程は、色付けなどの活動に影響される可能性があるようです3)。
また、別の研究によると側頭葉の領域は、身近な物体の色やその他の側面に関する知識を検索する際に活性化されることが示唆されています4)。
頭頂葉
頭頂葉は頭(脳)のてっぺんに位置する部位になります。
この頭頂葉は、”身体の各部位の知覚機能・接触・圧力・温度・痛みなどの体性感覚”、“他の感覚との統合、認知”を司っている部位です。
空間認識と調整を伴う大人の塗り絵は、頭頂葉における視覚-空間分析を伴う認知活動に関係します5)。
また、頭頂葉は注意のプロセスにも関与しており、ぬり絵の集中的な活動に関与している可能性が高いようです6)。
前頭葉
前頭前野は思考や創造性を司る部位です。
いわば「脳の最高中枢」とされていて、意欲や実行機能を司っています。
そして運動野と運動前野はどちらも、運動の遂行、運動の準備を司る部位になります。
その前頭葉は、時間的に順序付けられた情報の制御を必要とするタスクに関与しており、これは塗り絵活動の計画と実行に関連している可能性があります5)。
さらに、前頭部の活性化は視覚的短期記憶に関連する領域で認められ、これは塗り絵課題における色の選択と適用過程に関与している可能性があります1)。
大人の塗り絵がもたらす心理効果とは?
このように大人の塗り絵は脳の様々な部分を活性化する効果があります。
では、その結果どのような効果がもたらされるのでしょうか?
心理的な側面での効果は次の通りになります。
- ストレス発散効果
- 自律神経の調整効果
…以下に解説します。
ストレス発散効果
ストレス発散効果につながるのですが、大人の塗り絵は乱れた自律神経を調整する効果も期待できるようです。
無心に熱中することで、自然と呼吸も整い、リラックスすることができます。
その結果、高ぶった交感神経を落ち着かせ、鈍った副交感神経を活性化させると言われています。
自律神経の調整効果
ストレス発散効果につながるのですが、大人の塗り絵は乱れた自律神経を調整する効果も期待できるようです。
無心に熱中することで、自然と呼吸も整い、リラックスすることができます。
その結果、高ぶった交感神経を落ち着かせ、鈍った副交感神経を活性化させると言われています。
参考
1)Bundesen, C., Larsen, A., Kyllingsbæk, S., Paulson, O., & Law, I. (2002). Attentional effects in the visual pathways: a whole-brain PET study. Experimental Brain Research, 147, 394-406. https://doi.org/10.1007/s00221-002-1243-1.
2)Zeki, S., & Marini, L. (1998). Three cortical stages of colour processing in the human brain.. Brain : a journal of neurology, 121 ( Pt 9), 1669-85 . https://doi.org/10.1093/BRAIN/121.9.1669.
3)Dutton, G. (2002). Visual problems in children with damage to the brain. Visual Impairment Research, 4, 113-121. https://doi.org/10.1076/VIMR.4.2.113.15640.
4)Kellenbach, M., Hovius, M., & Patterson, K. (2005). A Pet Study of Visual and Semantic Knowledge About Objects. Cortex, 41, 121-132. https://doi.org/10.1016/S0010-9452(08)70887-6.
5)Villa, G., Gainotti, G., Bonis, C., & Marra, C. (1990). Double Dissociation Between Temporal and Spatial Pattern Processing in Patients with Frontal and Parietal Damage. Cortex, 26, 399-407. https://doi.org/10.1016/S0010-9452(13)80089-5.
6)Shulman, G., d’Avossa, G., Tansy, A., & Corbetta, M. (2002). Two attentional processes in the parietal lobe.. Cerebral cortex, 12 11, 1124-31 . https://doi.org/10.1093/CERCOR/12.11.1124.